講師:原宿カウンセリングセンター 公認心理師・臨床心理士 高橋郁絵先生
テーマ「家族が楽になるってどんなこと?」PART3
〜傷つきからの回復と、よりよい当事者との関わり〜
今回は、原宿カウンセリングセンターの公認心理士・臨床心理士である高橋郁絵氏をお招きしての研修会です。
テーマは「家族が楽になるってどんなこと?」の3回目、〜傷つきからの回復と、よりよい当事者との関わり〜についての研修となります。
研修会の始まりには、「リアル人間ビンゴ」をしました。家族会のメンバーに話しかけることにより、気持ちを和らげたりつながりを持ちやすくすることができました。
近年は若年層の依存症患者が増えており、家族もこれまでにない支援を必要とされています。依存症本人が未成年であることも多く、「手放して本人は仲間の中で回復する」というモデルだけでは対応しきれなくなっています。ASDやADHDなどの発達障害を抱えているなど、仲間とのつながりを持ちにくいことや、子ども時代の逆境体験などがあり、生き延びるために依存物質に頼ってきたなど、それまでの生き方がどんな風だったのかを知る必要があります。また「もっとひどくならないで済んだ要因」に目を向けることも大切であるようです。生きづらさを和らげる要因や生きる喜びにつながる要因を探すことに目を向けていくと、違った世界が見えてきます。
依存症の対象に目を向け止めることにだけ注目するのではなく、自分の存在がよいものとして周囲に受け止められているのか、実感を作りだすことが大切になります。家族として、よりコミュニケーション力が求められてきます。周囲との関わりの中で回復していくのは依存症本人も家族も同じです。
ほどほど良い支援とは、どうすることでしょうか。
まずは、アディクションの最中はそっとしておいて、緊急性のある時だけ関わる。シラフのときに本人のうれしい活動をする。ましな人生にしたい・幸せになりたいという希望を引き出す。どうしたら本人が困るのかを考え実行する。シラフの時に事実を淡々と伝える。ピンチはチャンス。説得・説教・アドバイス・泣き落としは約に立たないと肝に銘じる。などです。
家族関係をどう見るのか。その理解と家族相互のサポートも重要です。
世代間境界…親の世代と子供の世代などのことを言います。これは健全な家庭だと、夫婦と子供世代の間に境界があり、情報や感情・空間などを夫婦で共有していますが、歪んでいると母と子供が強く結びついていたり、問題を起こす子どもだけが孤立してしまったりということが起こりがちです。両親の対応を一致させることが大事ですが、難しい場合も多いのではないでしょうか。では、どうするのか。自分の気持ちを伝えるときにはIメッセージを活用する。アドバイスの仕方もうまく活用する。やっていることはおかしくても、その背後にある気持ちは肯定する。どうしようもないことはほっておき、できることをする。相手の行動の責任は相手が引き受けられるように現実を見えやすくするなどです。
家族は一種のシステムでパターンがあります。そのパターンを崩す、どこからでもいいので悪循環を断ち切ることで新しい関係が生まれます。違う行動をしてみることがひとつの関係を生む第一歩になるようです。
家族のケアは、本来は一番力の強い人が行うべきものですが、逆転している場合が多いです。ケアの提供者が女性=母親というステレオタイプから離れてみてはいかがでしょうか。
依存症の問題は、ひとりや家族だけで抱えていくのは大変です。家族会への参加が行動を変える一歩になりますが、行きたくない気持ちを持つ場合もあります。そんな時には無理強いせず、自分の気持ちと行動に目を向けて気づきがあると変化の動機付けになります。依存症の世界は「非・常識」です。「常識」によって苦しい子育てを経験していませんか。そこから楽になりましょう。家族会に来ている人が楽しそうに見えたら、来る価値があると思ってもよいのではないですか? そんなメッセージが伝わる研修会でした。