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2022年8月28日(日)第6回「薬物依存症者と家族フォーラム」

薬物依存症は病気です。~家族が笑顔を取り戻すために~
「罰より前に寄り添う支援を」

 去る8月28日(日)に南公会堂で「横浜ひまわり家族会」の第6回フォーラムを開催いたしました。
国立精神神経医療研究センタ―・薬物依存研究部部長・薬物依存症センター長の松本 俊彦先生を講師にお招きしました。
 家族体験談は、ふたりの娘さんの依存症を正直に語ってくださいました。なんでも話せる家族会は自分にとってオアシスだと話されたのが印象的でした。
 当事者の体験談はユーキさんでした。興味本位で始めた薬物に怒りを忘れることができたと話されていました。今は人との関係が楽しいと感じられるようになり、仲間とともに正直に生きていきたいと思っているそうです。

 松本先生の基調講演は「なぜ いま我が国にも ハームリダクション・アプローチが必要なのか?」というテーマでした。いま我が国の薬物問題を解決するために本当に必要な対策は何なのかについて、「ハームリダクション・アプローチ」を軸にした講演となりました。
そもそも「ハームリダクション」とは、いかなるものか。「ハームリダクション」は公衆衛生政策の理念で、「感染症予防」「社会的機能維持」「過量摂取防止」「治療・支援からの阻害防止」の考えが基本になっています。海外ほどの薬物汚染が深刻で取り締まり困難になった国がやむなく採用している政策で日本には必要ない・治療目的ではなく減らすとする依存症治療・あるいは患者の意向に迎合した甘やかし治療などの誤解もあり、浸透していないのが現状です。
 法と刑罰によって本格的に薬物流通量や使用量の規制をしたのは60年ほど前ですが、それによって薬物の生産量は激増し健康被害は深刻化・密売組織が肥大化している現状があります。「ハームリダクション」を採用してHIV患者の減少・治療アクセス者が増加した国もあります。国民の違法薬物障害経験率が減少し、犯罪・社会的損失の減少も見られ、「ハームリダクション」が成功しているそうです。
 薬物事犯の再犯率は高く、刑罰に効果がないことはこれまでも言われてきていることです。
我が国の薬物依存症の中心は覚せい剤です。刑務所で長く収監されたり何度も収監されたりすると不当な差別を受け、社会生活が安定して送れない現実と向き合うことになります。
 近年では、捕まらない薬物が台頭しています。生きづらさを抱えつつ過剰適応するための市販薬乱用が10代女性に増えています。市販薬のインターネット販売の規制緩和など背景がありますが、トラウマやストレスを抱えていたり、自閉症スペクトラムに該当するなど生きづらさが関係したりしているということです。
 薬物依存者に対する精神保健・精神科医療体制にもこの20年ほどでかなりの変化があります。以前は病棟に鍵をかけたり、大量の向精神薬を処方したり、また薬物依存は病気だといいながら、再使用が発覚したら司法に投げるなどの対応をしていたとのことです。近年「薬物依存症は安心して人に依存することができない病気」であるという考えに変化してきています。そんな変化の中で「ハームリダクション」を念頭に置いた実践が始まりつつあるそうです。「個人の嗜好を否定せず、強みを信じる」
「動機付けの程度に合わせた関わり」「薬物使用を裁かず、適応的な面と不適応的な面があるとみなす」
「正しい方向へのスモールステップを評価する一方で、『変化しない』ことを責めない」など、個別の支援に応用していくことが大切で、患者が変わらないことも含めて向き合うことが必要であるとのことです。
 「アディクション」とは、長期的にみると「自殺の危険因子」ですが、短期的には「クスリ」があったことで生き延びることができた「自殺の保護因子」です。
 国の政策としての「ハームリダクション」には時間がかかりますが、今すぐに実現できる「ハームリダクション」があります。強制的身柄保護の中止・支援者の秘密義務・メディア報道の規制など「治療・相談の場面での守秘義務の保障」、また「ダメ、絶対」や「覚せい剤止めますか?人間やめますか?」といった「予防啓発のコンセプトを変える」というものです。
「アディクションはリカバリーの一部、リカバリーの始まり」。依存症患者のサバイバルをどう支援し、人とのコネクションをつくり回復を目指していきたいと締めくくられました。
 
 「Q&A」コーナーでは、松本先生や横浜ダルク・湘南ダルクの施設長、スタッフ、体験談の方、ファシリテーターとして国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の片山氏が登壇しました。


会場やオンラインからの質問にそれぞれの立場から考えを伝えていただき、有意義なものとなりました。
当事者にかかわるスタンスとして、「つらかったね」という共感を基本に据え、できることを優先していく、気持ちを聴くことを大事にすることと話されていたことが印象的でした。家族としてのつらさももちろんありますが、落ち着きを取り戻して当事者の気持ちに耳を傾けられるようになると、事態は動いていくのだと思います。

 「30年前からダルクでは一度も排除されなかった。ハームリダクションを実現してほしい」
これが、今回の大きなメッセージではないでしょうか。

今回もコロナが終息しない中での開催となりましたが、300名(会場148名・ZOOM159名)を超える参加がありました。北海道から沖縄まで、横浜から全国の皆さんと問題の共有ができたのは大変よかったと思います。

2022年7月23日(土)家族研修会

講師:横浜保護観察所 統括保護観察 石川 美緒 氏

「保護観察における薬物事犯者への処遇について」と題した研修会を行いました。

まず更生保護の役割として、「社会において適切な処遇を行うことにより社会内で再犯を防いで支えていくというものがあります。刑事司法における再犯防止の要であり、収監中から出所後の生活の環境を整えること、生活環境の調整などが柱となります。社会復帰を促し、再犯防止につなげることが大きな目的となります。保護観察は、犯罪や非行を犯した人が更生するよう、実社会の中で指導監督や歩道援護等を行う仕組みです。定期的な面接等を通して生活状況の把握を行います。

 薬物事犯の状況としては、全体は減少傾向にはあるものの40歳代の覚醒剤取締法違反は増加傾向にあります。大麻においては10代の逮捕者もおり、平成26年を境に若い世代への広がりが見られます。
保護観察官及び保護司による指導として
①   面接による接触確保と行状の把握 
②   保護観察を行っていくうえでの約束事(遵守事項)を守るようにと働きかけること 
③   専門的処遇プログラムの実施
があります。専門的処遇プログラムは令和4年4月の少年法改正により、18歳以上の保護観察対象者にも実施可能になりました。

 保護観察を通じて得てほしいものは、悩みや課題を話し合うことのできる関係作りです。薬物事犯の人は一人で解決しようとする人が多く、友達や家族にうまく相談ができない傾向が強いです。新庄茶往査をするとネグレクトなどの虐待やいじめの経験があることが多いです。心に大きな傷を抱えています。困ったことを相談して解決するという体験の蓄積が今後の生活に必要なスキルになります。そして、大切に思われる経験。自尊感情が持てるようになること。感情が揺れ動いたときに踏みとどまる力の体得、つまり逃げずに解決する力をつけることです。問題の解決方法に関する知恵の習得も大切になります。必要な支援(治療や自助グループ等)に繋がり生きづらさがやわらぐことも大いにあります。

 薬物再乱用防止プログラムを収監中から受講し、社会に出てからも保護観察中に実施し、その後も何かの形で治療プログラムにつながることを目的に実施しています。プログラムは、自分の内面に気づき薬物使用の引き金になることや、孤独な状況を避けるなどを考えていきます。実現可能で自分に合った対処法を学んでいきます。
 地域の関係機関や団体と連携し、切れ目のない息の長い処遇ができることが理想です。薬物依存から脱するための体制を作っていくことが重要課題となっています。家族等への相談支援にも目を向けているところです。
 研修後は家族の質問にも真摯に答えてくださいました。

2022年4月23日(土)研修会

講師:群馬ダルク 施設長 福島 ショーン 氏・代表 平山 晶一 氏

「家族のプログラム」

 今回は会の初めに、日本ダルク代表の近藤恒夫氏の逝去に対し黙とうをしました。近藤さんが存在してくださったからこそ、ダルクがあり回復があったのだと心から感謝しています。ご冥福をお祈りいたします。

 今回は、群馬ダルクの福島ショーン氏と平山晶一氏をお招きして、「家族のプログラム」の研修会でした。お二人は、アメリカ・ハワイでの勉強会に参加し、日本全国を飛び回って家族の回復プログラムの紹介をしています。アメリカは日本に比べて薬物依存症になってしまう人がはるかに多いです。そして、薬物依存に関する知識もはるかに多いといいます。
 近藤氏との出会いは30年以上前で、その出会いがなければ今の自分はいないと話されます。今、生きていることが奇跡なのだと。近藤氏がいたからこそ、回復できることや回復の場があったと。
 ショーン氏はダルクに入寮してからも問題をよく起こし、刑務所にも入ったとのことです。ショーン氏の母は姿を消したといいます。そんな母と今は仲がよくなったといいます。
 平山氏は、16歳からクスリにはまったとのこと。特別でなければいけないという考えに支配され、居場所がなかったといいます。居場所を求めていたはずの場所で、クスリから抜けられず居場所を失っていったとのことでした。

家族が薬物依存症当事者のために何ができるのか?
今日はそんな内容の研修会でした。

①本人が大きな病気になったときと同じように接してください。

依存症はWHOが認めたれっきとした病気です。治療・ケアを続ける必要があります。しかし周りの人がなかなか病気と認められないのはどうしてでしょうか?それは検査しても数値で現れるものではないからです。家族も否認して「うちの子に限って」と心にふたをしてしまいます。

②常に本人と自分の依存症・病気・回復の勉強をしてください。

家族会にたどり着いたときは、本人のことで頭がいっぱいです。自分のことを知り、自分の回復を考えることが大切です。困ったときだけ家族会に来て、困らなくなると家族会に足を運ばなくなります。家族会で常に勉強して、病気と闘う練習が大切です。

③本人に昔話・説教をしないでください。他者と比較しないでください。

「昔はかわいかった。」悪気なく言う言葉が、劣等感を持っている本人には、今の自分を認めてもらえないと感じます。
説教をしても仕方ない、昔には戻りません。説教は思い通りにしたいというコントロールになります。世間やふつうはなどと比較することは、片方のいいところともう片方の悪いところを比べています。傷つける言動が、クスリを使う理由になります。期待と理想を持った家族の思いには届かないと思っています。本人の「今」を認めることで、自尊心や自信があがり、そうなるとクスリは必要でなくなります。

④きっかけを与えないでください。

クスリを使うことは、本人がやることですが、何かのせいにしたいと思っています。説教や、本人の前で飲酒することは避けてください。常にリスクがあります。口論するくらいなら黙って離れたほうが良いです。
家族の一番の責任は、本人を自立させることです。大人に育てることです。

⑤本人が同居しているなら、自分の時間を作ってあげてください。

問題があるにしろ、コントロールしないようにしましょう。ルールがあってもよいですが、監視をすると息が詰まります。親が弱っていると巻き込みやすくなります。親が元気なら巻き込めません。共依存の治療が大切です。

⑥昔のことがあったから今があります。過去に戻るのではなく、今からの人生を作りましょう。

「昔に戻ったみたいでうれしい。」などと喜ばないようにしてください。本人にとってはクスリを使い前でも昔は苦しかったのです。家族は手のひらにのった子どもに戻ってほしいだけです。戻ったらもっと状況は悪くなります。
共依存は代々学んでいく病気です。依存症の問題が起こらなければ普通の家族です。

⑦本人の遊ぶ時間、自分の遊ぶ時間を持つ。

共依存とは、自分を犠牲にして相手をコントロールしたいという悪循環に入り込みます。親が元気になること、親が自分を大切にすることで本人の回復につながっていきます。笑っているほうが本人も絡みにくいと感じます。家族会は自分たちの勉強の場です。家族会に出ることで本人への影響もあります。

⑧イネイブリングしないでください。

「イネイブリング」とは、本人のクスリを使う手伝いをすることです。やめてほしいと思っているのに、本人のためによかれと思ってしたことが、クスリを使う環境を作っています。家族が困っていることを伝えてください。黙っていると本人には都合がよくなります。親がいなくなっても生きていけるように、責任を持たせることが大切です。親は罪悪感を抱えてしまいますが、小さいことから始めてください。

⑨本人に責任を持たせることが本人の変わるチャンスになります。

家族も過去に生きず、前を向いてください。本人を苦しませたくないと家族は思ってしまいますが、本来、責任を取ることは苦しいことです。

⑩クリーンがあってもきちんと境界線を作りましょう。

しかし、罰としての境界線は作らないでください。問題が遠のくと境界線はぼやけます。大変な時は境界線が引けますが、家族はアッという間にもとに戻ります。自分だけで判断しないようにしましょう。お互い納得できない境界線は罰と感じます。

⑪経済的なサポートをしない。

治療に当たるもの以外は、お金のやり取りはしないでいましょう。

⑫本人の病気の恐ろしさを忘れないでください。

最悪だった時のことを記憶に残しておきましょう。おびえる必要はありませんが、あそこに戻らないように家族会に継続して参加してください。

家族が直接できることはありませんが、間接的に回復に向かうようにはできます。

いつものように軽快なお話で、大切な12項目を聴かせていただきました。あの時点には戻りたくないと、苦しんできた家族なら誰しも思うことですね。仲間とともに、語り合いながら回復の道を進んでいきたいと切に願った研修会でした。

2022年2月27日(日)第7回「薬物依存症者と家族 オープンセミナー」

 

基調講演:神奈川県立精神医療センター副院長小林桜児先生

第7回となった横浜ひまわり家族会のオープンセミナーです。コロナウイルスまん延防止重点処置期間中でしたが、会場には100名ほどの参加がありました。Zoomでの参加は120名もあり、会場とオンライン参加者・講師の先生と繋ぎ、多くの方にメッセージを届けられたと思います。

 まずは家族からの体験談でした。Mさんは50代の息子さんの薬物問題に悩んで家族会に参加されました。刑務所から出所するときに、ダルクへの入寮か、病院に行くかの選択を息子さんに求めましたが、息子さんは「働きたい。」と…自分の考えにはなかった選択肢を息子さんが選んだことに困惑されましたが、母が敷いたレールではない人生を歩み始めた息子さんを応援するまでの過程を、心を込めて語られました。
 本人体験談は、ロンさんでした。何度かロンさんの体験談を聴いてきましたが、表情がとても穏やかになっている印象を持ちました。「不安」という言葉を知らない、そんな気持ちを誰かに言ってはいけないと思いながら生きてきたと話されていました。今、スタッフとしてダルクで生活しているが、スタッフでいることで自分が助けられているということに感謝したいとのことでした。
 もうお一方の本人体験談はK-GAPの近藤氏でした。発達障害を持っていて、学校での生活がとてもつらかったとのことでした。自分でも動いてしまう原因がわからなかったし、ぜんそくがあって夜も安心して眠れない生活、母からは生まなければよかったと言われ、居場所がなかったと話されていました。お話の最後に、「インナーチャイルドワーク」をしてくださいました。

 今回は、久しぶりに神奈川県精神医療センターの小林桜児先生の基調講演でした。
「依存症患者をどう理解し、治療につなげるか?―家族の対応について―」
従来は依存症の説明として、遺伝的要因と環境的要因が絡み合って依存症になると言われてきました。発達障害を持っていたり好奇心・興味本位ではじめたり、害に対する知識の欠如などによるものと認識されてきた部分が多かったのですが、果たしてそうなのか?社会的に地位のある議員や教員、果ては医師などおそらく知識が欠如しているなどとは縁遠い人たちにも依存症になる人はいます。社会的地位や名声をなげうっても止められない「依存症」とは、一体何なのかということを丁寧に説明されました。
小児期の逆境体験が心理的孤立を生み、依存症との接点を作りだす可能性に触れていました。薬物に頼ることで心理的孤立が改善され、それが習慣化していく、つまり報酬的効果が本人にとって大きくなります。
 依存症は本人にとって溺れかかったときの浮き輪のようなものであり、依存症の症状は自己調節機能障害=「感情の海」を上手に泳げないことだと言います。無理に浮き輪(薬物やアルコール)を取り上げても、別のもの(他の薬物やギャンブル)にしがみつくだけで解決にはならない、解決していくためには泳ぎ方を覚えていくしかないのだと。
 小林先生は、依存症を信頼障害という仮説に立って、分析を進めています。その立場から治療を考えると、まず依存症の重症度を下げる視点に立ち、人を頼れるようになって不信感を減らすなどの取り組みをしていくことが大切だとのことです。すぐにやめられなくても害を減らして行くことを目指し、受容や共感の体験を積んでいければよいと考え治療にあたっています。
 まずは家族間のコミュニケーションを改善していくこと、行動変容を強化していくこと、距離をとるなどを経て、家族自身の生活も守る必要があります。
 本人を治療につなげるには相当な労力が必要です。家族が先に相談に繋がり行動を変化させることで、突破口が見つかることもあります。本人の回復に振り回されずに家族自身が楽に生きる方法を模索していくことが重要ですと締めくくられました。

 小林 桜児先生の依存症に関するYouTube動画もアップされています。何かの折に観て心を軽くするのもよいのではないでしょうか。

Q&Aセッションでは、まだダルクにつながっていないご家族や保護司、ZOOM参加者からも質問を受けて活発な質疑応答ができ、時間が短いとのアンケート回答も頂きました。
ZOOM講演も4回目となり定着した感があります。神奈川県外から北海道・沖縄までで大変盛況となりました。
今後もニューノーマルのイベントとして、ZOOMオンラインを併用したオープンセミナーで、依存症家族以外の援助者・一般参加者へも啓発を図っていきたいと思います。

2021年 秋の市民公開講座10月24日(日)

講演:筑波大学大学院 人間総合科学研究科 准教授 森田展彰先生 

 今回の秋の市民公開講座は、筑波大学の森田展彰先生のお話でした。「親のアディクションが子どもに与える影響とその支援」をテーマにお話をしていただきました。
 保護者が薬物事犯で収監された場合、子どもは養育者がいなければ児童養護施設に入所する場合があります。大体は、子どもは親の状態を知らないままであり、出所と同時にまた一緒に暮らし始めます。しかし、子どもたちへの支援はなく、子どもの治療は同時にできていないことがほとんどです。親のアディクションは子供への影響が大きく、子どもたちは傷ついています。児童思春期に、アディクションがかかわる状態では、子どもにアディクションが生じる場合と、家族のアディクションが影響している場合があります。子供のアディクション問題も、家族における葛藤や暴力あるいは家族の依存症や精神障害が関係することが多いと言えるそうです。児童の思春期にこうした背景がある場合、見逃さずに対応することが世代間連鎖を防ぐことにつながると考えられます。アディクションと養育の問題は相互に影響を及ぼしています。
 親のアディクションが養育に影響を与える場合、子ども時代の逆境的体験が累積的に成人になってからの健康問題を悪化させたり、死亡率をあげたりする原因になるそうです。

 依存症を持つ親の養育が生じる児童の問題として、依存症になる・気分障害・人格障害・摂食障害など、精神障害や健康上の問題、学校不適応、犯罪、自殺、自尊心の低下など広範囲の問題が多いことが示されています。安心できる環境がないため安心を求めようと薬物にはまり、自己肯定感が低くなっていくなど、悪循環にはまっていきます。親の抱える問題を子どもの口から発するのは非常にハードルが高く、言える場もないことから追い詰められてしまうのです。子供が親の依存症の症状に振り回されたり、生活上の困難を感じたりすることが増えていきます。ヤングケアラーとして、親の世話に過度の責任を感じることもあります。自分のことより親のことで手いっぱいで大人になってから生きにくさを感じて行きます。虐待のリスクも高くなります。
 依存症のある親の元で育った人の調査によると、相談できる人がいなかったと答えた人が67.4%と最も高いそうです。75%の人がうつ病や躁うつ病にかかってしまうなど、受けた影響の大きさが想像に難くないと思います。ほとんどの人が依存症の説明をされておらず、わけがわからないまま問題に巻き込まれ、不安な生活を強いられてきたと言えます。子ども時代にきちんと説明を受けていたら「自分や親を責めなくてもよかった」「わけがわからない状況にさらされる恐怖や無力感を減らせた」「家庭で起きていたことを知り、相談や対処ができた」と考える人が多くあったそうです。
 支援者にはぜひ、このような当事者の気持ちに寄り添い、支援にあたっていっていただきたいと願うばかりです。
 またそのような環境で生活してきた人たちが大人になってから、心の病を持つ人と持たない人がありますが、その違いを比較した結果、かからなかった人たちは、親の精神疾患に対する心理的負担感が少なかったこと、首尾一貫感覚(人生を見渡せる感覚)が高く自分が生きている状況が理解でき人生に意味を感じていたこと、幼少期の逆境的体験が少なかったこと、親から自律性や主観性を尊重されていると感じていたこと、精神疾患を持つ親が治療していたことを知っていたなどの理由が挙げられるようです。
 調査からいえる大切なことは、以下の通りです。

子どもに依存症や治療のことを伝え、その話題に関してコミュニケーションができるようにする。
子どもの自主性を助ける関わりが重要。
子ども自身が自分の人生をやっていけると思えることを助ける。
子どもが親の依存症の影響を減らす。そのためにも親が治療を受けて、子どもだけがなにかと対応しているのではなく、外の人にも手伝ってもらえるようにすること。

依存症など精神疾患を抱える親と暮らす子どもへの支援は、子ども自身が自分でハードルを一つずつ超えるために援助できるようにシステム作りが必要です。親子だけでなく兄弟の問題もあるので、視野を広くして取り組んでいけるといいと思いました。
最後にプルスアルハなどの依存症に関する絵本の紹介がありました。

2021年9月25日(土)「2021秋の市民公開講座<9月講座>」

今回の「秋の市民公開講座」9月講座は、マロニエ医療福祉専門学校医療学部 学科長であられる渡邊厚司先生をお招きしての開催となりました。テーマは「回復と成長につなぐコミュニケーション~その点検道具のガイド~」です。
先生は、刑務所のメンタルヘルスプログラムにも携わっており、受刑者の7~8割は何等からアディクションの傾向があるといいます。先生ご自身はアディクションの本人や、家族と出会ったことでご自身が救われていると感じるそうです。
 人との関係の中で困りごとがあっても、解決するための道具を人はなかなか見出せません。依存症も問題に巻き込まれて、どうにもならなくなった本人との関係をどう整理するのか。交通整理をするためのコミュニケーションの道具を紹介してくださいました。
 「アディクション」とは、近代社会のなかで生まれた病気です。人間が商品化されてきた社会の中で、薬物に手を出した人は、商品としての価値が下がってしまいます。いわゆる「傷物」として生きていくのには近代社会はあまりにも過酷となります。高い商品価値が無くなったとき、「酔い」を求めて薬物を使用し、酔うことで自分を守るしかなくなるのが近代社会です。周囲にとらわれ自分の息を殺して、感情を感じないようにする、そのために酔いが必要になってくるのです。「私としての生き方でいいんじゃない?」そう思えてこそ、「酔い」ではない生き方・自分を守る違う方法を見つけられるといいます。
 本人との関わりの中で、本人を変えようとしてしまうこと。本人を変えることがすべてになり、家族も自分自身を見失い、相手がすべてになっていきます。それは家族として依存症の問題に関わったことがあるならだれもが通った道です。人間関係は変えられないのに、正解があると思い込み呪いにかかっていきます。その思い込みはしみついてとらわれてしまいます。本人も自分を変えようとする人にしか出会ってこなかったという人が多いようです。問題を整理して取り組めることに目を向けていくことがスタートです。
子どもが成長していく中で、おむつが取れた時が「自分」になる第一歩だそうです。おむつをつけていると替えてくれる誰かが必要です。そしてこの時期には他者に通じる言葉を持ち始めます。
イネイブリングは、大人におむつをつけ、世話をしている状態だと言います。
本人との関わりで、うまくいかないパターンを知ることも大切です。悪循環を引き起こすパターンを知れば回避することができるようになります。
 何かを伝えたいときに「アイメッセージ」で伝えるようにすると、対立しないで伝わるようになります。肯定的に伝え、「安全・安心」や「気づきと受容」「自信と自尊心」の流れを意識することが重要になります。伝えるのは「願い」として、しかし「願い」をかなうかかなわないかは自分の問題ではありません。誰にとっても悩みと戦うことは苦しいことです。一歩距離を置いて味わう感覚でいられると少し楽になります。苦しい感情は家族会で聴いてもらい、気持ちを整理することがとても大切になってきます。家族が楽になることは、本人も楽になります。
 「パウンダリー」は心理的境界線といわれます。パウンダリーの側面は①体②考え③気持ちの3つです。考えや気持ちは違っていて当たり前ですが、依存症の問題が起こるとそれが見えなくなりがちです。
家族内の役割は固定されがちですが、それを壊して新しい関係を作っていくことも必要になることがあります。決まった役割から降りて、その関係性を風通しの良いものにしていくことも大切です。
依存症者は、「自分のままを受け入れていく」ことにより、新しい生き方を覚えていけると薬は必要でなくなっていきます。変えられないところを「受け入れて」「責めず」に「恥じない」「自分に対する怒り」を受け入れる
ことができてくると、回復がずいぶん進むようです。
 
毎回、渡邊先生のお話に救われ、教えていただいた道具を実践してきました。状況がぐんとよくなるわけではないですが、自分自身の心を整理し、自分を大切にすることを学ぶことができました。
今回も依存症者本人を「宮様」と思って距離をとるお話をしてくださいました。この考え方は多くの苦しい状況に風穴を開けていきます。今、苦しくて困っている家族はぜひ、実践してみてください。

8月21日(土)第5回「薬物依存症者と家族フォーラム」

横浜ひまわり家族会の5回目のフォーラムを開催しました。
新型コロナ禍による緊急事態宣言下のため、基調講演等はリモート開催となりましたが170名(会場75・オンライン95名)の参加があり、会場参加者とオンライン参加者が広くつながり、問題の共有ができ、多くの気づきが得られたフォーラムでした。
今回の基調講演は埼玉県立精神医療センター 副病院長 成瀬暢也先生に
「やめさせようとしない依存症治療・支援の実践」というテーマでお話をいただきました。

 まずは、家族の体験談としてK子さんのお話がありました。まだ若い息子さんとの葛藤や、ダルクを飛び出してきては戻ることを繰り返していく中での、母としての成長や息子さんへの信頼をどう深めていったのか、リアルな体験談を聞くことができました。息子さんが自分で考えて決める、それを信じて成長を祈る。家族としてみんなが通る混乱や、回復へのきっかけなど、胸を打つお話でした。
そして依存症者本人の体験談は、横浜ダルクのKKRさんでした。去年の3月から横浜ダルクに入寮してプログラムを受けているとのことです。ミーティングに参加し、横浜ダルクにある関連図書はすべて読んだそうです。母との関係に問題があったけれど、それはどちらが悪いということではないと思うそうです。お母様は家族会には参加していないので、参加してほしいと思うそうです。

原宿カウンセリングセンター・臨床心理士の高橋郁絵先生からは、「楽になるってどんなこと?」というテーマでプレセッションをしていただきました。家族のためのセルフケアと当事者への支援は相反するようにみえます。依存症の問題が起こると、家族はすべてを投げ出して当事者を救おうと躍起になります。自分の幸せなど考えることが罪悪感に思えます。しかし、からからの井戸を持っていても、他の人に水を与えられないように、家族が疲弊してしまうと結局は当事者を救えないのだと理解することが大切です。女性は特に、社会から望まれた役割を負わされており家族を助けないで自分を優先することが許されにくい風潮があります。
そんな中でも自分を大切にするためのチェックリストを教えていただきました。
薬物の問題が起こると、依存症者本人も家族もトラウマを抱えてしまいます。本人にもしんどい体験あるのと同様に家族も巻き込まれていく中でトラウマになっていることを自覚してよいのです。緊張と疲労・期待の間を行ったり来たりしても大丈夫だと思いがちですが、混乱の後に精神的な問題が表れることもあります。
本人への対応は情報がかなり増えてきている中で、私たち家族は何を選んでよいのか混乱します。毎日は小さな選択の繰り返しです。一つの選択が一歩先を照らして道が作られていきます。仲間に支えてもらいながら自分を大切にしていくこと、それが当事者の回復への一歩となります。

 埼玉県立精神医療センター 副病院長 成瀬先生からは、「やめさせようとしない治療と支援の実践」と題してお話をいただきました。毎日の診療の中で、依存症について学んでいったことが多いそうです。依存症は誰でもなりうる、そして我慢や意思では止められないということ。日本では道徳や犯罪としての問題に目が向けられることが多い社会です。犯罪のスティグマが押され、バッシングを受けます。依存症者もひどく傷つき社会的に孤立をしていきます。
依存症の治療のコツは、「やめさせようとしない」「無理強いしない」「スリップを責めない」ことだと話されました。治療者や支援者は動機付けできるように働きかけることが大切です。そのためにもひと昔前の社会の規範から逸脱した対応をしないことが重要です。
依存症は廃人になったようなイメージを持つ人も多いですが、そのような状態のはるか前から依存症になっているといいます。早期の対応が早い回復につながります。
治療として大切にしていることは患者との信頼関係を築くことと、動機付けをすることだそうです。ここが一番のポイントで、治療の土台となります。生活上の問題の整理と解決への援助が必要になります。依存症のひどい状態では酩酊して問題から逃げてばかりいたので、ケースワークなどが大切な要素になります。成瀬先生たちが「ようこそ外来」と名付けているように、関係をつなぎ続けることが依存症治療には重要です。信頼関係の中で抱えている問題を聞き出し、解決につなげていけるよう支援が必要です。
依存症の問題を抱えている人は人との関係でストレスを抱えています。自分では解決できないつらさがあり、人の助けを求めることができないのです。依存症は「人に癒されず生きにくさを抱えた人の孤独な自己治療」と言われます。回復のためには、「人の中にあって癒されるようになること」「本音を正直に言えるようになること」「自信を持てるようになること」がとても大切です。自助グループが有効な理由もそこにあります。安心の場で人は癒され、共感を得られるからです。数年前までは、薬を取り上げることにばかり注目していたけれど、生きづらさへの支援をすることで、回復していくことに注目されるようになっています。
家族として、依存症の問題に向き合うときに家族も精神的に参ってしまうことが多いです。家族会に繋がっている人ほど、ストレスが軽減され依存症者本人にも適切な対応ができているそうです。家族にも人とのつながりが重要で、癒されることが大切です。家族は依存症が「病気であること」を社会が受け入れてくれるとずいぶん楽になります。家族として何ができるのか、それはまず「知識」と「対応」を身に着けることです。そのためにも家族が自分を大切にして元気になることが第一歩になります。日本は国としての対応が遅れており、家族の背中にすべてが乗ってきます。これからは、家族が主役の回復を作っていかなければいけないと考えているそうです。
治療の場は、本人が尊重され共感されて安心できるものでなければ回復につながりにくいとのことです。健康な人との関わりが大切であり、支援者も孤立せず人から癒されていることがとても重要になります。共感と信頼の双方向作用が回復にとって重要な要素となります。
患者を尊重し、責めないことで治療から脱落する人が少なくなり、診療の場が明るくなったとのことです。

Q&Aセッションは、成瀬先生、高橋先生、加えて横浜ダルクのセナさんとロンさん、横浜ひまわり家族会のオカヤンで行われました。
高校生の息子さんの問題や、40代の娘さんの問題などについてアドバイスをいただきました。
共通して語られたのは、本人が自分のこととして考えること、家族はコントロールや支配をしないことなどでした。見守ることは家族としてとてもつらく苦しいことです。そこで頼れる仲間を作ることの重要性がわかると思います。

これからも依存症の問題に向き合いながらも、自分たちらしく生きることを忘れないようにしたいですね。

2021年6月26日(土)家族研修会


講師:沖縄ダルク 施設長 森 廣樹氏


 今回の研修会は、沖縄ダルクの施設長、森 廣樹氏と、ゲストスピーカーに沖縄ダルクで回復の道をたどったきんたろうさんの体験談を伺いました。
 
 きんたろうさんは、4年目のバースデーを迎えたということでした。回復の道のりはたやすいものではなかったようです。元いたダルクでは、近隣からの反感が強く雨戸も明けられない生活だったと振り返っておられました。布団を干してもたたけないなど、閉塞感が強くそれがつらくて沖縄ダルクに移ったそうです。開放的な環境でエイサーを通じて外部とのつながりも持てたことがうれしかったと話されていました。
 薬物との関わりは、15歳からで、シンナーやガスなど好奇心から使っていたとのこと。覚せい剤には苦しめられ、親兄弟のお金を使いこみ借金はお母さんが払ってくれたといいます。申し訳ない気持ちと、ラッキーと思う気持ちを持っていたそうです。覚せい剤は本当にボロボロになるまで使ったとのこと。
ダルクへの入寮や生活保護を受けることには抵抗があったけれど、仲間がいたことで救われた、優しくしてくれる仲間に出会い、自分も受け入れることができたそうです。依存症という病気を通して見方が変わってきたと話されていました。

 森さんは、薬物使用18年、クリーン15年になったそうです。中学生のときからシンナーやたばこを始め、覚せい剤は17歳の時から使用。はじめは覚せい剤を使っている仲間を馬鹿にしていたそうですが、3回目に誘われたときに使い、その時の感覚はまだ覚えているといいます。幼少期から父のアルコール、両親のけんかなどで心に穴が空いていて痛みを抱えていたということです。父との関係をうまく築けず、父の無関心にますます不良行為がエスカレートしていったそうです。覚せい剤を使うことでヒーローになった感覚、心の空白が埋まったように感じていたと話されました。20歳過ぎに結婚し息子さんが生まれ、父に顔を見せに行ったとき初めて父と晩酌をしてうれしかったこと、その2か月後に飛行機事故で父が亡くなり、また空白を抱えたまま生きていったそうです。アメリカに渡り、語学留学をしながらビジネスを始めたけれど、本来の自分を探したくてまた薬を使う生活になっていったといいます。日本に帰国してもこう見せたいと思う自分と、本来の自分が合わなくて頑張るために薬を使い続け、逮捕されました。母は家族会で勉強しており、生き方を選ぶのはあなただと言われたそうです。茨城ダルクの岩井氏と出会い、光が見えてきたと感じたそうです。沖縄の厳しいダルクでも仲間がいることに安心し、モデルになる人にも出会うことができたと。欲求も減りありのままの自分を受け入れることができるようになってきたそうです。
 沖縄ダルクの紹介も丁寧にされました。沖縄ダルクは7番目にでき、27年経っています。以前は地域の依存症者を入寮させることはなかったそうですが、今は地域で回復することを目指しているそうです。利用者さんも多種多様で、支援の仕方も多岐にわたっています。弁護士も依存症や回復の仕方を勉強しているということです。沖縄ダルクはたった一か所のLGBTQの利用者を受け入れています。LGBTQの人たちは依存症に加えて性的マイノリティであるため2重3重に居場所がないことが多く、居場所を作りたかったとのことです。見捨てないことを信念にして日々活動しています。
ダルクを運営していることは、回復に向かう瞬間、人が変わる瞬間に立ち会えることが醍醐味だそうです。安心できる仲間の中で安全に失敗しても許される場所で「生きる」ことを支援していきたいと話されていました。

沖縄ダルクでは宮古島に学校を作りたいと動いています。日本ダルク代表近藤さんの強い願いを実現すべく精力的に活動を進めています。
力強いお話で聞いていて元気が出ました。

2021年4月24日(土)家族研修会「家族の回復プログラム」②

講師:群馬ダルク 施設長 福島 ショーン氏・代表 平山 晶一氏

 今回も群馬ダルクより、平山晶一氏と福島ショーン氏を招いて「家族の回復プログラム」②と題しての研修会を行いました。
前回の終わりに機能不全家族の勉強をするとのことでしたが、今回はアリゾナ州の家族会で学んだ脳科学のお話となりました。
 アリゾナの回復施設は家族が家族教室に参加しないと入所を断られるそうです。それくらい家族が依存症の病気を理解することが回復にとって大切だということです。
 病気をしっかり理解していないと偏見(スティグマ)を持ち、回復の邪魔になってしまいます。ディディーズモデル(病気)として理解していくことが重要です。
しかしなぜ依存症は「病気」として受け入れられにくいのでしょうか。それは検査して何かしらの数字で表すことができないからだそうです。病気になる要因としては、遺伝が52%、生活環境が40~48%になるということです。依存症でいえば、環境として使う友だちや家族がいる状況です。
 WHOの病気の3つの基準は、
① 本人がつらいかどうか。
② ②機能不全に陥っているか。
③ ③困っているかで判断するといいます。
慢性疾患としての依存症はこの基準に当てはまります。
 薬を使ったときに、脳内では何かが起こっています。脳内には3種類の物質が必要ですが、ひとつはドーパミン・あとはセロトニンとアドレナリンです。薬物によって影響されるのはドーパミンです。
 薬物をやりたくなるのは、快楽を求める・問題から逃げる・リラックスしたいという理由があるようです。はじめは快楽を求めていた人たちも、すぐにやらないと生きていけない状況になっていくそうです。脳が変わり始めてドーパミンを出すために脳が行動をコントロールするようになります。決して意志の問題ではないということです。脳のあらゆる部分が変容し、セーブすることができなくなり、うつ状態になること、恐れを抱かなくなること、優しさや思いやりが欠落していくなど、人として重大な部分が壊れていきます。そして、考えること、計画を立てること、問題を解決することができなくなります。
 家族がこの病気を理解することは、自分たちを理解することに繋がります。それは問題に巻き込まれているうちに、家族も依存症様の状態になっているからです。私たち家族も同じメカニズムで動いてしまっているのです。
 興味深かったのは、ドーパミンチャートでした。普通の生活で、生きるためにこれ以上のドーパミンは要らないという数字を100として、食べ物やスポーツは80くらいです。アルコールが150、マリファナが180くらいです。そして、家族が共依存になり必死になるとアルコールより高い数値になるそうです。
 では、遺伝と生活習慣ではどちらの依存症が回復しにくいのでしょうか。遺伝の場合ははじめからドーパミンが低い状態に慣れているので、耐える力があり乗り越えやすいのだそうです。

 なんといっても、回復していく責任は本人にあります。病気だから仕方ないと責任を放棄せず、スピリチュアルな方法を実践していけるといいということでした。
家族は本人を回復させる責任はないこと、きっかけを作ることだけが家族にできること、
そして、親がいなくても生きていけるように応援をしていくことが大切だと切に思いました。
 ショーンさんと、プーさんは自分たちの回復をこのように話されました。
「治療を受けるきっかけは、どうにもならなくなったことを認められたから。回復はダルクに入れば回復だと思っていたが、そうではなくて自分の中で変化が起こってきたこと。仲間の中で感じること。感じ方が変化してきた。目指していた回復とは違ったりすることも多い。」

依存症の回復率は4割。その中に入るために私たち家族は何をするか?ともに考えましょう。

2021年3月27日(土)家族研修会「家族の回復プログラム」①

講師:群馬ダルク施設長 福島 ショーン氏 ・ 代表  平山 晶一氏

 今回は群馬ダルクより、平山晶一氏と福島ショーン氏を招いて「家族会のプログラム」の研修会を行いました。

平山氏は横浜出身の方で、高校生の時に薬物を使用し始め、すぐに止まらなくなったといいます。使っていてもすぐにつらくなり、回復の中で癒されてきたとのことです。横浜ダルクのセナさんと同期で一緒に回復の道を歩んでこられました。コロナ禍でzoomでの研修会も多いそうですが、こうして対面でうなずいてもらえるだけでもうれしいと話されていました。

福島ショーン氏は座間キャンプ内で育ち、15歳でブロンを飲み始めたそうです。ハワイでアメリカの回復プログラムを勉強し、群馬ダルク独自の家族プログラムを実施しています。

 コロナ禍では、家族や本人からの相談が増えているといいます。孤立していたり薬物が手に入りにくかったりと原因はさまざまのようです。電話相談や家族間のネットワークを利用するのも一手です。

ショーン氏が回復プログラムにつながったころはまだ「突き放せ」と言われていた時期で、母親に突き飛ばされた様な感じがするそうです。今は、考え方もずいぶん変化し、いろんなことをやってみようという取り組みになっています。群馬ダルクでは家族にも一緒に考える方法をとり、自分たちに置き換える参加型に取り組んでいます。

 依存症の現場でよく耳にする「共依存」という言葉ですが、説明するのは難しいです。今回、「共依存」を6つのタイプに当てはめて説明をしてくださいました。

まず①コントロール:コントロールにも「支配する」「支配される」の2種類があります。子供のころはある程度保護者が支配することで成長していきますが、依存症になってしまうと反発しコントロールしようとします。

支配関係も入れ替わりがあり、お金を要求して支配しようとしますが、お金を親が渡した瞬間に支配が逆転していきます。お金に支配されていきます。要求に付き合わなければ共依存は成立しなくなります。「期待」と「理想」を手放せば支配からはなられると、私たち家族には大きな決断が必要な言葉を聞いたように感じました。薬の問題が大きい時は「生き延びてさえくれればそれでいい」と思っていても、回復してくると欲が出て、理想が出てきてコントロールしようとしてしまいます。親が思うようにできなくても認めてほしいと話していました。②悲劇のヒロイン:ドラマクイーンは「なんで私だけ?」こんなにつらいのはまわりのせいだとか、自分のせいだとか自己憐憫に陥ること。「私は私」になれないことから起こります。日本人は自分を責める傾向にあるそうです。家族の持つ罪悪感が依存症者にも罪悪感を背負わせてしまったり、家族が持つ罪悪感に依存症者が付け込んだりして、よい結果にはならないので責めたくなるくらいなら離れたほうがよほどいい関係になるとのことです。家族もプログラムを受けて元気になることにより、本人も変化していきます。

③ピープルプリーザーは、なんでもやってあげる人のことを指します。共依存と呼ばれる最たるもので、やってあげて喜ばせることがうれしい・自分は犠牲者で余計なこともしてしまいます。他人が中心にいて「自分が気持ちいい」もしくは「やらないことが罪悪感」になり本人にも自分にも害があります。依存症者本人にとっては最高に都合のよい家族です。

④ドアマットは、本人が起こした問題の後処理を家庭でする。つまり尻ぬぐいとなります。家族は「やらない。あなたのために生きているんじゃない」という気持ちを持つことが大切です。

⑤ウォールフラワーは父親に多いタイプでただ立って観ている。上から目線でみて時々中途半端に関わってくることです。半端なくらいなら、何もしないほうがよいといいます。

⑥エンパスは何でも共感する人。おかしいと思ってもやってしまい疑わない人のことです。危機感がなく騙されやすいので都合がよい人です。共依存の中では大変な部類になります。

 共依存は連鎖します。ふつうは家族のために動くことはいいとされますが、依存症が生まれてしまうと通用しなくなります。共依存はコントロールの病です。変えるチャンスはあります。家族はいろいろ勉強しておくことが必要です。依存症者と距離をとること、分離していく教育をすることを大切にして家族へのプログラムを開催しているとのことです。親の責任は、子供を自立させることです。

軽快な語り口のお二人にたくさんのことを学びました。次回は「機能不全家族」についての研修会となります。お楽しみに。