基調講演 国立精神・神経医療研究センター 薬物依存研究部長 松本 俊彦先生
テーマ 「市販薬クライシス」の実態とわが国の薬物対策の課題
今回のフォーラムでは、いま社会問題となっている、市販薬の乱用オーバードーズ対策についての基調講演をはじめ、家族や当事者の体験談、又、活発なQ&Aセッションが行われました。今回は行政、学校関係、医療関係者なども多く246名の参加がありました。、若年層の依存症支援のあり方について多くの気づきが得られたフォーラムでした。
<まず家族の体験談>
横浜ひまわり家族会のひよりさんのお話でした。10年前から始まった娘さんの依存症、そしてその行動に巻き込まれていました。向精神薬の大量服用、アルコール、窃盗など様々な依存をかかえ、それに伴い摂食障害も併発しました。色々な事に巻き込まれ、その中でも娘さんから「お前のせいだ!」と罵られた日々も少なくなかったといいます。今はネット社会で、自分の苦しい依存症の症状をカメラに収め、配信していたそうです。自殺未遂を繰り返し、「おまえのせい!」と罵倒され、母としてどうしたら良いのか、何をしたらいいのかを模索しました。依存症の問題は、近所にしれたらどうしよう、周りに何か言われたらどうしようという気持ちで一杯になり、何度も自問自答しては、怖くてどんどん孤立します。そんななか、依存症についての勉強をはじめ、ひまわり家族会に繋がりました。そこで、「自分が元気でいることの大切さ」「私は私の人生を歩む」ということを理解し実践していくようになったと言います。この奥深い依存症という病は、本人も家族も一人では乗り越えることが難しいとわかったそうです。今後も、わが子が生きていることの幸せを感じ回復を願って家族会の仲間と学んでいきたい。という言葉でしめくくっていただきました。
<次は当事者体験談>
横浜ダルクスタッフのソウさんのお話でした。ソウさんは職員として10年仲間とともに過ごしています。ダルクという家族の中で自分が支えてもらいながら、仲間の回復の手助けをしていると言っていました。学校になじめず、反抗期も手伝って、居場所がないと強く感じ、不良となり、16歳で薬物を使うようになりました。その後17歳で覚醒剤も使うようになります。はじめはうまく使えていたものの、気づけば何度も警察沙汰、精神病院への入退院の繰り返し。なかなか自分は回復の道にはのれなかったと言っていました。ところが家族は家族会につながり、本人への正しい対応を身に付けていきました。そのおかげで「新しい生き方を見つけたい」と思うようになり、ダルクへつながります。その後もフラッシュバックに悩まされ、再使用も経て、いつしかクリーンが続き、今も回復し続けられているとのことでした。自分の経験を生かし、たくさんの仲間と家族の援助をしています。 お話を通して、いつの日か、本人が新しい生き方をしたい。。と思える日まで、家族はどうしていったらいいのか。。という、家族のあり方を教えてもらえました。
<基調講演は松本俊彦先生でした>


今回は市販薬についての現状とその課題について教えてくださいました。 わが国では市販薬は安全なもの、処方薬より手軽で便利。。という、依存症の現場での問題視とは全く逆な考え方が蔓延しています。実態調査の中でも、薬物の乱用は合法的な薬物でなされていると結果がでています。私たちが風邪の時にドラックストアで買う風邪薬や解熱剤、咳止めの中には、乱用、依存症になりやすい成分が入っています。それらの薬を、今の若者たちは、安いからとドラックストアで買い、大量に飲んだり(OD,オーバードーズ)、アルコールと合わせて服用したりと間違った飲み方をしています。そして、そのオーバードーズとともに若年者の自殺も増え、深刻な問題となっています。 「助けて!」を言えない子どもたちが増えているのは明らかです。麻薬(ジヒドロコデイン)は、孤立感を強く感じ、覚せい剤原料のメチルエフェドリンは、家や学校でのルーチンをこなすのに必要で、幻覚薬(デキストロメトルファン)は、嫌なことを忘れさせてくれる解離性誘発剤の効果があります。若者たちは、心の苦しさを人に相談できず、薬に頼るようになりま す。10年前に、流行った危険ドラッグは非行少年、学校に行けないような男子が多くはまりまし。今、オーバードーズして苦しんでいる子たちは、学校に所属し、通学して、良い子普通の子を演じている女子におおいそうです。 もし、薬がないと眠れない、苦しいと、学校で子供にSOSを出されたら、大人たちはどうすればよいのでしょうか。その相談事を頭から否定したり停学や退学などと口にしてはいけないとのことです。相談を受けたときは、だめ絶対!のように禁止する言葉は言わないこと、そして「変わっていこうよ!」と言わないこと。変わらないと今のあなたじゃダメなんだよというメッセージになるからです。一緒に考えていこう。。と言うことが大切だそうです。子供がやってしまったこと(オーバードーズ等)をやってしまった、と言えるには、受け止める大人たちがまずは続けて話に来てくれるよう雑談(ZD)していくことが大切であるとのことでした。 最後に、今の薬物対策の根拠法は違法薬物に特化したもにです。医薬品の場合は有害が明らかでも政府や企業の論理のほうが尊重されてしまいます。薬物依存症にも、「基本法」が必要です。それについて家族会が何ができるかを考えていくことも必要あると思いました。
<Q&Aセッション>

ファシリテーターを国立精神・神経医療研究センター、精神保健研究所、薬物依存研究部の片山宗紀氏にお願いし、松本先生、横浜ダルクから山田貴志氏、ソウさん、湘南ダルク栗栖次郎氏にご登壇いただきました。 Q1 今問題になっているサイレースについて、まだ処方されているのか? 松本先生… 確かに依存性のある薬でデイトレイプなどにも使われる。アメリカでは禁止。いつもの量であればOK。ふらつきがあるようなら他の薬に変える。安易には処方しない。 Q2 への市販薬の相談案件について聞きたい 山田… 処方薬については病院にきちんと診てもらい通院させる ソウ… 相談件数としてはそんなにないが、気持ちによりそう様に相談をうけている。

栗栖… 青い舌(サイレースを噛むと舌が青くなる)の写真をアイコンにしている若い子がいる。その行動の向こうにある生きづらさを考え居場所を作れるよう相談にのっている。 Q3 発達のグレーゾーンの人への接し方を知りたい 松本先生… 依存症、発達とそれぞれの診断が大切。社会保障も検討していく必要がある 山田… 周りの回復プログラムについていけない時には個室にしたり、プログラムそのものを配慮して、ケアしている。 ソウ… 見守りながら緩やかでもいいので、苦しみやいろんな思いを共有し、たくさんの経験を積めるようそのことを一緒にやっていくことが大切と思いながら接している。 栗栖… 底付き体験をさせることは大事だが、安全に失敗してほしい。突き放しだけではなく、家族のサポートを入れることが大切なこともある。 Q4 教師として今の若者に接する中、その支援方法に悩んでいる。
松本先生… 養護の先生だけではなく、校長先生の考え方。理解が大切。 Q5 ダルクの地域の理解についてやっていることは何か? @回復者に会ってもらう@回復者と色んなことを伝えていく @本当の仲間の姿を見てもらう@学校などでの講演などを受けている 最後に。。。 今、若年者の依存症問題が浮き彫りになっています。私も子供が10代でダルクにつながりました。それまでは外で同じ高校生をみるたびに涙が止まりませんでした。しかしそれが息子の回復には、何の役にも立たないことを、後に勉強しました。 依存症の家族は孤立しがちです。本人を相談に連れていけなくても、まず親が支援の窓口につながりましょう。
ともに学び、分かち合い、理解して、そして楽しく生きていけますよ


