8月25日(日) 第8回「薬物依存症者と家族フォーラム」

基調講演 / 筑波大学医学医療系 准教授 森田 展彰 先生

テーマ/「当事者、家族、援助者の対話的な働きかけによるアディクションへの対応」

オープンダイアローグ(開かれた対話)

横浜ひまわり家族会のフォーラムも8回目を迎えました今回も家族の体験談、当事者の体験談、専門家による基調講演など多様なプログラムで開催しました。

まずは、家族の体験談です。横浜ひまわり家族会のつむぎさんのお話でした。幼少期から思春期を過ごす中での息子さんの変化やそれに伴う親の心情を丁寧に伝えてくださいました。施設などからいなくなることもあり、胸が張り裂けそうな家族の様子が切々と伝わってきました。出口のないトンネルに迷い込んだような気持ちで自分たちだけで抱え込んでいたけれど、家族会につながったことで人とつながり始め、自分たちが回復していったと結んでいました。

依存症当事者の体験談は湘南ダルクの女性スタッフの愛さんです。他剤を使用しオーバードーズを繰り返していたといいます。父はアルコール依存症者で家の中で飲んでは暴れていたそうです。母は明るいけれど愛さんの気持ちを汲み取ろうとすることがなく、傷つくことをたくさん言われたとのことです。中2でいじめにあい転校。家族には傷つけられそうで「助けてほしい」と言えなかったのだそうです。また父から受けた暴力の影響で傷つき癒されないまま大人になっていきました。20歳の時にうつ病になり通院しましたが母はついてきてくれず、また傷ついていきます。自分が「クスリ」をやめられないのはなぜだろうと思いながら進む日々。当時はスマホなども普及しておらず調べることもできなかったといいます。入院先の主治医が話をよく聞いてくれて方向が変わっていったようです。施設に入寮して両親と距離をとったことが本人にとってはよかったとのことです。自分は自分のつらさを自分で引き受け、仲間と分かち合って回復してきたとのこと。今はスタッフをして仲間の回復に奔走している、多様性を認められる施設を運営していきたいと展望を話してくれました。



基調講演は筑波大学医学医療系准教授であられる森田展彰先生の「当事者、家族、援助者の対話的な働きかけによるアディクションへの対応」と題したお話でした。近年、アディクションが多様化してネット依存やゲーム障害や市販薬、処方薬の依存が問題となっています。未成年や引きこもり問題の当事者も多く、こうした場合に家族は距離をとること以上に安心できる対話的な関係をもつことが重要だそうです。

依存症は、心の中に「安心感」がなくなり外側のなにかの刺激に夢中になることで乗り切ろうとすることで、誰でもなりうる不安解消方法のよくないパターンです。

オープンダイアローグ(開かれた対話)を使うことによって関係性を保ち困ったときに話せるようにしていくことが依存症の現場では重要になります。 当事者や家族はしがみついている「依存症の輪」から一旦手を離すことが大事です。家族の対応がどのように影響するのか。依存症初期の対応では、話すことにより初期のチャンスを増やすことができます。家族は自分が支えてもらえることも大切で、家族会などに繋がりながら対応するのがよいとのことです。重度で慢性の依存症がある場合は、家族と当事者を離す方法が必要な時もあります。それぞれが支援を受け境界線を引きなおす作業をします。距離をとることはその後の境界線のある相互尊重的なやり取り

に繋がります。未成年の依存症者と家族への予防的援助では離れてしまう方法ではなく、同居しながらよい関係を目指す方がよいようです。

ゲーム障害やネット依存症における家族機能の問題として肯定的な家族関係・親子関係の3つの基本的な心理的欲求(①自律の欲求②関連性の欲求③自分の能力を発揮する欲求)がありますが、それらが関わりの中で過干渉や支配的、過保護により依存的になってしまいがちだということになります。その欲求が不足しているとゲーム障害リスクを高めていくようです。ケアの提供として①暖かさの提供②ニーズへの反応③共有されたポジティブな感情の育成が挙げられます。家族は否定するのではなく、ゲームの情報をうまく手に入れて共感する部分を作っていくことも必要になります。


今回の講演の中で、家族会のメンバーがロールプレイをしました。母役、息子役、学校の養護教諭役、カウンセラー役になってゲーム依存の問題をお互いが聴いている中で意見を伝えあうものでした。

未成年の依存症に対する予防的な介入では家族と当事者の関係を幅広く風通しのよいものにしていくことがカギになります。

渦中にいると混乱して、当事者を責めてしまうことが多くなりますが、専門家を交えて開かれた対話をしていくことが依存症治療の入り口に立つ第一歩になっていくと感じました。



Q&Aセッションでは、ロールプレイがわかりやすかったという感想や、当事者が専門家同士の話を聞くことが果たしてよいのかどうかという質問が寄せられました。当事者の愛さんは専門家が自分の前で話してくれることによって裏を読まなくていいので気持ちが楽だったと話されていました。

8月27日(日)第7回「薬物依存症者と家族フォーラム」

テーマ:薬物依存症は「病気」です。〜家族が笑顔を取り戻すために〜

いっしょに考えよう!生きづらさのこと

 この夏、7回目の横浜ひまわり家族会フォーラムを開催しました。

基調講演の講師に、一般財団法人信貴山病院 ハートランドしぎさん 臨床教育センター長の長(ちょう)徹二先生をお招きし、依存症者本人体験談、家族の体験談などを織り交ぜて行われました。

今回もハイブリット方式で会場とオンライン参加者とが一体となり問題の共有ができました。

 まずは家族の体験談でした。登壇者は息子さんの薬物の問題を抱えているターボーさんのお話です。

現在26歳の息子さんは、市販の睡眠薬を6~7年前から服用しており、行動などの問題を抱えています。

おかあさんへの暴言がエスカレートしていき今はお母さんが自宅を離れて生活しています。病院などに行っても長続きせず、時々派遣の仕事をしながら自宅で暮らしているそうです。

ご夫婦で昨年12月から家族会に参加するようになり、本人への対応などを学んでいるところです。家族が心安らかにいられるように今後も家族会に参加していきたいとのことです。

 そして依存症当時者のたくさん。

11年前にダルクに繋がって今は横浜ダルクのスタッフをされています。

薬物は12歳に時に始まったと言います。家庭は一般的で両親と兄と暮らしていました。朝、なかなか自分で起きられず蹴とばされることがあったそうです。他の家族を知らないから、それが変わっていることだとは思っていなかったといいます。学校では目立ちたがりで中心にいたいという気持ちが強かったようです。小学校5年生くらいから先輩と過ごすことが多く、たばこも覚えていきました。それがエスカレートしてアルコールやガスなどを使用するようになっていったようです。

若くして結婚し、子どもが産まれても薬物を止めることはなかったけれど、妻からはやめてほしいと言われ続けていたそうです。口では止めるというけれど、特にやる気もなく続けていたら、だんだん生活がままならなくなってきました。ダルクのデイケアに通いながら、とりあえずしばらく我慢すればなんとかなると思いながら通っていたといいます。それではうまくいかず再使用を繰り返し、山梨ダルクに行くことになって初めて薬物の問題と向き合い始めたそうです。「しらふ」で社会で生きるのはとても大変、自分が一番楽に生きる方法はダルクでスタッフになることだと思ったそうです。クリーン11年、スタッフの仕事も8年続いているし、回復後に出会った仲間に助けられて今がある、与えられたものも多いと感じていると話されていました。

 そしてハートランドしぎさん 臨床教育センター長の長先生の基調講演です。「きょうどうする」をテーマに軽快に話をしてくださいました。

近年の薬物依存症の治療論が「ただ止めるだけ」ではなくなり、個々に抱えている[生きづらさ]に目が向くようになり、支援する側、家族にはさらに負担が増えてきていることを踏まえて、一緒にできることを探しましょう。大きな岩は動かせないけれど小さな石にすれば運ぶことはできます。というメッセージを届けてくださいました。

効果(快感)を発揮するものを求める。しかしそれは便利で快感の多いものは脳機能を刺激し、より強い興奮が生じるようになる。だがコントロールが効かなくなる。これを「依存性」と表現します。 

治療の場面では医師が外から依存症患者を診て判断することが多いです。しかし、支援者や治療者が診てるものと、家族が見てるもの、患者自身が観ているものどう違うのか?支援者が考える「今日一日」と本人が考える「今日一日」では、重みが全く違うと気づくまでに時間がかかったそうです。問題が起きてないときもあれば、たまたま起きてしまう時もある。なのにコントロール障害と言われたくない。何回かに一回の失敗を責め立てられるのはつらいと言います。元来、話すことや本音を言うことが苦手で人との関係が作れない人が、依存症者には多く観られる傾向です。臨床においてのターニングポイントは本音が放せる関係性を作ることが何より重要だと治療現場にいて実感されたそうです。問題は物質関連だけではなく、見えにくい水面下にある、そう考えて取り組んでいます。表現が下手な人は、初めから「近寄ってくるな」というオーラを醸し出したり、「大丈夫」と調子を合わせたりする人が多く見られます。そうすれば短い時間の関わりだけで済むから、本人としては楽だからです。信頼する人がいないから物質に頼って対処することになっていきます。逆境体験を持っている人も多く、心の傷を話せずにいる場合も多くあります。どのように信頼関係を築くのかが治療のポイントになります。

本当の問題は物質使用ではなく、ほかの何かを抱えています。物質使用がないと生きられなかった、死んでいた。そんな状況を考えていかなければ治療のスタートに一緒には立てないように思います。

体験談を聴いたり話したりすることは、理解を助けるうえで重要なものであります。

 依存症者との関わりを持つ家族や支援者にも大切なことは、自分の感情に気づいてケアをすることです。自分が元気でこそ依存症者の支援に立ち向かえます。家族や支援者は車の助手席に乗っているイメージで時々手伝うくらいが良い距離間でしょうか。しかし、当事者の近くにいる家族はそう簡単にいかないのが常です。「わかっているけど、正しいかもしれないけど、そんなんできるかい!(できないよ)」

 長先生は家族支援の際に、正論だらけの勉強会や、スタッフレベルの対応を家族に伝えていました。それは大きな失敗だったと話されていました。「わしら、なんにもわかってなかった。」その後、思い切って路線を変えていったそうです。自分にご褒美をあげて次への活力にすることは効果があります。家族はじぶんができること、当事者がしなければならないことを分けて考えていくことが大切です。うつや落ち込みには悪循環があります。逆に健康行動には好循環があります。ストレスに気づいたら自分をいたわってご褒美をあげることが好循環への道です。ただセルフケアといっても、自分一人では難しいことも多いです。家族会の仲間の存在が重要になります。話せる場を持つことが大きな力になります。

 患者さんとの治療場面でも、客観的に自分を見ることができるように支援します。一緒に見る機会を増やすことが大切です。

すべてのかかわりの基本は ①まずは受け止め ②安心できてから少し対話 ③余裕があれば協働作業。共通の島に着地するイメージです。当事者にとって一番の安心はせめられないこと、そしてかかわる工夫があること、話やすいことです。医師といえども教えてもらう気持ちを持つと、関わりが変化していくようです。

協働作業は、一緒に地図を見るイメージ、細かくチューニングをするイメージなどです。家族も少しずつ行動を変えていけるといいですね。

「きょうどうする」は「協働する」「共同する」「今日どうする?」あなたはどう読みますか?

 Q&Aセッションは、長先生、横浜ダルク施設長・山田氏、HOPE施設長・栗栖氏、当事者のたくさん。そしてファシリテーターとして国立精神・神経医療研究センターの片山氏を交えて、質問に応えていただきました。

家族関係や、回復に向かうターニングポイントなど興味深いお話が聞けました。たくさんから、「薬物を再び使いたいとは思はないけど、やめたいかと言われると、わからない。やめたいというより、変えていきたいと思った。」と語ったのが印象的でした。

長先生の「家族としてお互い気遣いながら生きている。そもそも違う個体が暮らしいるのに、マッチしないといけないと思い込んでいるからつらくなる。自分なりの整理ができるとよい。」と話されていました。

 3年前のフォーラムはコロナで急遽オンライン講演になりましたが、今回はフェイス・トゥ・フェイスで関西弁の軽妙な語りが心地よいフォーラムとなりました。

2022年8月28日(日)第6回「薬物依存症者と家族フォーラム」

薬物依存症は病気です。~家族が笑顔を取り戻すために~
「罰より前に寄り添う支援を」

 去る8月28日(日)に南公会堂で「横浜ひまわり家族会」の第6回フォーラムを開催いたしました。
国立精神神経医療研究センタ―・薬物依存研究部部長・薬物依存症センター長の松本 俊彦先生を講師にお招きしました。
 家族体験談は、ふたりの娘さんの依存症を正直に語ってくださいました。なんでも話せる家族会は自分にとってオアシスだと話されたのが印象的でした。
 当事者の体験談はユーキさんでした。興味本位で始めた薬物に怒りを忘れることができたと話されていました。今は人との関係が楽しいと感じられるようになり、仲間とともに正直に生きていきたいと思っているそうです。

 松本先生の基調講演は「なぜ いま我が国にも ハームリダクション・アプローチが必要なのか?」というテーマでした。いま我が国の薬物問題を解決するために本当に必要な対策は何なのかについて、「ハームリダクション・アプローチ」を軸にした講演となりました。
そもそも「ハームリダクション」とは、いかなるものか。「ハームリダクション」は公衆衛生政策の理念で、「感染症予防」「社会的機能維持」「過量摂取防止」「治療・支援からの阻害防止」の考えが基本になっています。海外ほどの薬物汚染が深刻で取り締まり困難になった国がやむなく採用している政策で日本には必要ない・治療目的ではなく減らすとする依存症治療・あるいは患者の意向に迎合した甘やかし治療などの誤解もあり、浸透していないのが現状です。
 法と刑罰によって本格的に薬物流通量や使用量の規制をしたのは60年ほど前ですが、それによって薬物の生産量は激増し健康被害は深刻化・密売組織が肥大化している現状があります。「ハームリダクション」を採用してHIV患者の減少・治療アクセス者が増加した国もあります。国民の違法薬物障害経験率が減少し、犯罪・社会的損失の減少も見られ、「ハームリダクション」が成功しているそうです。
 薬物事犯の再犯率は高く、刑罰に効果がないことはこれまでも言われてきていることです。
我が国の薬物依存症の中心は覚せい剤です。刑務所で長く収監されたり何度も収監されたりすると不当な差別を受け、社会生活が安定して送れない現実と向き合うことになります。
 近年では、捕まらない薬物が台頭しています。生きづらさを抱えつつ過剰適応するための市販薬乱用が10代女性に増えています。市販薬のインターネット販売の規制緩和など背景がありますが、トラウマやストレスを抱えていたり、自閉症スペクトラムに該当するなど生きづらさが関係したりしているということです。
 薬物依存者に対する精神保健・精神科医療体制にもこの20年ほどでかなりの変化があります。以前は病棟に鍵をかけたり、大量の向精神薬を処方したり、また薬物依存は病気だといいながら、再使用が発覚したら司法に投げるなどの対応をしていたとのことです。近年「薬物依存症は安心して人に依存することができない病気」であるという考えに変化してきています。そんな変化の中で「ハームリダクション」を念頭に置いた実践が始まりつつあるそうです。「個人の嗜好を否定せず、強みを信じる」
「動機付けの程度に合わせた関わり」「薬物使用を裁かず、適応的な面と不適応的な面があるとみなす」
「正しい方向へのスモールステップを評価する一方で、『変化しない』ことを責めない」など、個別の支援に応用していくことが大切で、患者が変わらないことも含めて向き合うことが必要であるとのことです。
 「アディクション」とは、長期的にみると「自殺の危険因子」ですが、短期的には「クスリ」があったことで生き延びることができた「自殺の保護因子」です。
 国の政策としての「ハームリダクション」には時間がかかりますが、今すぐに実現できる「ハームリダクション」があります。強制的身柄保護の中止・支援者の秘密義務・メディア報道の規制など「治療・相談の場面での守秘義務の保障」、また「ダメ、絶対」や「覚せい剤止めますか?人間やめますか?」といった「予防啓発のコンセプトを変える」というものです。
「アディクションはリカバリーの一部、リカバリーの始まり」。依存症患者のサバイバルをどう支援し、人とのコネクションをつくり回復を目指していきたいと締めくくられました。
 
 「Q&A」コーナーでは、松本先生や横浜ダルク・湘南ダルクの施設長、スタッフ、体験談の方、ファシリテーターとして国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の片山氏が登壇しました。


会場やオンラインからの質問にそれぞれの立場から考えを伝えていただき、有意義なものとなりました。
当事者にかかわるスタンスとして、「つらかったね」という共感を基本に据え、できることを優先していく、気持ちを聴くことを大事にすることと話されていたことが印象的でした。家族としてのつらさももちろんありますが、落ち着きを取り戻して当事者の気持ちに耳を傾けられるようになると、事態は動いていくのだと思います。

 「30年前からダルクでは一度も排除されなかった。ハームリダクションを実現してほしい」
これが、今回の大きなメッセージではないでしょうか。

今回もコロナが終息しない中での開催となりましたが、300名(会場148名・ZOOM159名)を超える参加がありました。北海道から沖縄まで、横浜から全国の皆さんと問題の共有ができたのは大変よかったと思います。

8月21日(土)第5回「薬物依存症者と家族フォーラム」

横浜ひまわり家族会の5回目のフォーラムを開催しました。
新型コロナ禍による緊急事態宣言下のため、基調講演等はリモート開催となりましたが170名(会場75・オンライン95名)の参加があり、会場参加者とオンライン参加者が広くつながり、問題の共有ができ、多くの気づきが得られたフォーラムでした。
今回の基調講演は埼玉県立精神医療センター 副病院長 成瀬暢也先生に
「やめさせようとしない依存症治療・支援の実践」というテーマでお話をいただきました。

 まずは、家族の体験談としてK子さんのお話がありました。まだ若い息子さんとの葛藤や、ダルクを飛び出してきては戻ることを繰り返していく中での、母としての成長や息子さんへの信頼をどう深めていったのか、リアルな体験談を聞くことができました。息子さんが自分で考えて決める、それを信じて成長を祈る。家族としてみんなが通る混乱や、回復へのきっかけなど、胸を打つお話でした。
そして依存症者本人の体験談は、横浜ダルクのKKRさんでした。去年の3月から横浜ダルクに入寮してプログラムを受けているとのことです。ミーティングに参加し、横浜ダルクにある関連図書はすべて読んだそうです。母との関係に問題があったけれど、それはどちらが悪いということではないと思うそうです。お母様は家族会には参加していないので、参加してほしいと思うそうです。

原宿カウンセリングセンター・臨床心理士の高橋郁絵先生からは、「楽になるってどんなこと?」というテーマでプレセッションをしていただきました。家族のためのセルフケアと当事者への支援は相反するようにみえます。依存症の問題が起こると、家族はすべてを投げ出して当事者を救おうと躍起になります。自分の幸せなど考えることが罪悪感に思えます。しかし、からからの井戸を持っていても、他の人に水を与えられないように、家族が疲弊してしまうと結局は当事者を救えないのだと理解することが大切です。女性は特に、社会から望まれた役割を負わされており家族を助けないで自分を優先することが許されにくい風潮があります。
そんな中でも自分を大切にするためのチェックリストを教えていただきました。
薬物の問題が起こると、依存症者本人も家族もトラウマを抱えてしまいます。本人にもしんどい体験あるのと同様に家族も巻き込まれていく中でトラウマになっていることを自覚してよいのです。緊張と疲労・期待の間を行ったり来たりしても大丈夫だと思いがちですが、混乱の後に精神的な問題が表れることもあります。
本人への対応は情報がかなり増えてきている中で、私たち家族は何を選んでよいのか混乱します。毎日は小さな選択の繰り返しです。一つの選択が一歩先を照らして道が作られていきます。仲間に支えてもらいながら自分を大切にしていくこと、それが当事者の回復への一歩となります。

 埼玉県立精神医療センター 副病院長 成瀬先生からは、「やめさせようとしない治療と支援の実践」と題してお話をいただきました。毎日の診療の中で、依存症について学んでいったことが多いそうです。依存症は誰でもなりうる、そして我慢や意思では止められないということ。日本では道徳や犯罪としての問題に目が向けられることが多い社会です。犯罪のスティグマが押され、バッシングを受けます。依存症者もひどく傷つき社会的に孤立をしていきます。
依存症の治療のコツは、「やめさせようとしない」「無理強いしない」「スリップを責めない」ことだと話されました。治療者や支援者は動機付けできるように働きかけることが大切です。そのためにもひと昔前の社会の規範から逸脱した対応をしないことが重要です。
依存症は廃人になったようなイメージを持つ人も多いですが、そのような状態のはるか前から依存症になっているといいます。早期の対応が早い回復につながります。
治療として大切にしていることは患者との信頼関係を築くことと、動機付けをすることだそうです。ここが一番のポイントで、治療の土台となります。生活上の問題の整理と解決への援助が必要になります。依存症のひどい状態では酩酊して問題から逃げてばかりいたので、ケースワークなどが大切な要素になります。成瀬先生たちが「ようこそ外来」と名付けているように、関係をつなぎ続けることが依存症治療には重要です。信頼関係の中で抱えている問題を聞き出し、解決につなげていけるよう支援が必要です。
依存症の問題を抱えている人は人との関係でストレスを抱えています。自分では解決できないつらさがあり、人の助けを求めることができないのです。依存症は「人に癒されず生きにくさを抱えた人の孤独な自己治療」と言われます。回復のためには、「人の中にあって癒されるようになること」「本音を正直に言えるようになること」「自信を持てるようになること」がとても大切です。自助グループが有効な理由もそこにあります。安心の場で人は癒され、共感を得られるからです。数年前までは、薬を取り上げることにばかり注目していたけれど、生きづらさへの支援をすることで、回復していくことに注目されるようになっています。
家族として、依存症の問題に向き合うときに家族も精神的に参ってしまうことが多いです。家族会に繋がっている人ほど、ストレスが軽減され依存症者本人にも適切な対応ができているそうです。家族にも人とのつながりが重要で、癒されることが大切です。家族は依存症が「病気であること」を社会が受け入れてくれるとずいぶん楽になります。家族として何ができるのか、それはまず「知識」と「対応」を身に着けることです。そのためにも家族が自分を大切にして元気になることが第一歩になります。日本は国としての対応が遅れており、家族の背中にすべてが乗ってきます。これからは、家族が主役の回復を作っていかなければいけないと考えているそうです。
治療の場は、本人が尊重され共感されて安心できるものでなければ回復につながりにくいとのことです。健康な人との関わりが大切であり、支援者も孤立せず人から癒されていることがとても重要になります。共感と信頼の双方向作用が回復にとって重要な要素となります。
患者を尊重し、責めないことで治療から脱落する人が少なくなり、診療の場が明るくなったとのことです。

Q&Aセッションは、成瀬先生、高橋先生、加えて横浜ダルクのセナさんとロンさん、横浜ひまわり家族会のオカヤンで行われました。
高校生の息子さんの問題や、40代の娘さんの問題などについてアドバイスをいただきました。
共通して語られたのは、本人が自分のこととして考えること、家族はコントロールや支配をしないことなどでした。見守ることは家族としてとてもつらく苦しいことです。そこで頼れる仲間を作ることの重要性がわかると思います。

これからも依存症の問題に向き合いながらも、自分たちらしく生きることを忘れないようにしたいですね。

令和2年8月23日フォーラム

令和 2年 8 月 23 日(日)

第 4 回「薬物依存症者と家族フォーラム」                  

●基調講演/ 奈良県立医科大学精神医療センター 長 徹二 先生        ●テーマ/ 『アルコール・薬物問題を抱える人のご家族が、ご自身の回復のために』〜Withコロナ、生きづらさをプラスに変よう!〜

今回の基調講演は薬物・アルコール依存症の臨床の治療現場で長年、当事者、家族に寄り添い、回復支援していただいている、一般社団法人信貴山病院ハートランドしぎさん臨床教育センター長の長徹二先生による『アルコール・薬物問題を抱える人のご家族が、ご自身の回復のために』をテーマに、奈良県からオンラインにて講演していただきました。Withコロナの時代に依存症者や家族にとって、いつもより増して生きづらさを抱え孤立し、悪循環に陥りやすい状態です。こうした困難な中で『生きづらさをどう変えていくか』、依存症からの回復のために、サポート・支援のあり方、家族の対応などをご講演いただきました。 今回はじめてZOOMオンラインで先生と会場とリモート参加者と繋ながり、新しい回復の場が広がりました。

●アンケートから参加者の声を紹介します。

家族

・初めてのリモートフォーラムは、世話役の皆様の協力のもと、とても良かったと思います!長先生のお話は、家族に寄り添って下さる内容で、心が暖まる言葉がたくさんありました。特に印象に残ったのは家族も本音を話せる関係性が大事だと言う事でした。改めて家族会の存在は病院では出来ない役割があると実感しました。自分の経験を話す事によって救われる人がいるのは、嬉しいです。

 ・印象に残った言葉 *かしゅまたせ *「怒っている人は困っている人」 *両価性 *ハーム・リダクション。息の長い支援の為に、家族だけでも楽になる事、家族が健康である事、まずは自分のケアと言われて、肩の荷が軽くなりました。

・怒りの感情をぶつけてくる人の方が当事者の回復は早い。家族も本人も安心、安全な居場所が大切・家族が元気になって、自分にごほうびをあげること

・両価性を理解して親は見守るように努力しても、親も両価性を同じように持っているから、いい親を演じていると疲れるので家族会など安心できる場所で本音を話し自分自身のケアが必要。・・・・今、家族会はどうでしょうか。考えさせられる。

・家族対応で、『か、しゅ、ま、た、せ』は、直ぐにできるものではないが、大変参考になりました。自分の意見を前面にださぬように、自然に会話出来るように、癖をつけていきたいです。一般診療では、中々教えてくれない事、ストレートに聴かせていただき、ありがたいです。

・「か・しゅ・ま・た・せ」は以前も学ばせて頂いていたのですが、長先生は”なかなか難しいよ””すぐ使えなくてもよい””勉強としては、このような言い方となる”などおっしゃってくださったので、とても救われた気持ちになりました。余裕があれば違う立場で聴いてみて、と研修がスタートしたことは、新しい視点で内容を拝聴することができ、改めて相手の立場になる重要性に気付かされました。

・スライドがわかりやすく、イラストも可愛くスッと入ってきましたが、中でも(相手との間に)川が流れているイラストと、シーソーのイラストが印象的で、今後も思い出せると思います。

・コロナがまだ解決されていない中での講演会でしたので、出産した娘や新生児のお世話や家族の介護を考え、今回の講演は諦めていましたが、事前の準備をして頂いたおかげで、リモートに参加できました。久々の家族会のメンバーの顔、会場の様子を少し見ることができました。長先生の質問、一つ一つを真剣に向き合って答えていたからでしょうか?アッと間に時間が過ぎました。学べば学ぶ程、私の声かけの仕方の悪さを思い知らされました。相手を変えるのではなく、自分を振り返り、前を見据え、学び続けたいと、強く感じました。

行政関係

・同じ景色を見たいです。家族、本人、支援者どの立場でも聞きやすい講義でした。

・オンライン講演会が想像よりもスムーズに進行できていて感動しました。今日は貴重な講義の機会をありがとうございました。

・コミュニケーションの改善について「難しいから2年くらいかけてできるようになると良いかな」と仰っていて、無理に身に着けようとしないように。今一番大切なことはシンプルにご家族に伝えられるようになりたいと思いました。

・一対多でなく、個対個対個的な参加方法で、一人ひとりが参加(フリップ)している感があって良かった。

・色々な立場から考えることの難しさと大切さを感じました。具体的な事例をたくさん示して考える問いかけが多く、とてもわかりやすかったですし、考えるきっかけになりました。

・印象に残ったことは、「生きるために使わざるを得なかった面を理解した上で、本音を表現してもらうためにも安心・安全を提供することが大切」「家族の支援も安心・安全が大事で、家族だけでも楽になるということも大事」。

医療関係・一般・その他

・皆様の姿や表情を観ることが出来て、苦しんでいるのは自分ひとりだけではないと心強くまた温かい気持ちになり元気をいただけました。zoomフォーラムにしていただいたので、仕事をしながらも参加出来ました。企画いただきましてありがとうございました。

・依存症者が上手に頼んできたときの、返す言葉が印象に残った。上手に切り抜ける言葉を考えていきたい。返す言葉の大切さをつくづく感じる。実生活で生かしていきたい。

・患者に対する治療の一般的な方法・方針とそれぞれに異なる患者や患者を取り巻く環境の個別性をどのように調整・適合させていくのか、課題があるように感じました。

今後、より良い活動を行っていくために

・新型コロナウィルス流行に伴い集会スタイルの講演が難しい中、オンラインの開催も新形式でとてもよかったです。

・オンラインでの講演会はとてもよかったです。講演会の内容は見たくても、小さい子供もいて、休日に家を明けることも負担が大きく、毎回参加することはできなかったので、とてもありがたかったです。

・91歳を介護しているので、自分がコロナにかかる事は何としても避けたい今です。 長先生の講演は長い間楽しみに待っていたので、zoomで参加出来て本当に嬉しかったです。zoomリモート講演実現の為に尽力してくださった世話役の皆さんに心から感謝申し上げます。 コロナが収束するまでの間、また、是非、是非、リモート講演をやってください。ありがとうございました。

・本音で話せる場であり続ける、生きやすさを分かち合える仲間が大切だと、強く思いました

・横浜ひまわり家族会のフォーラムでは、当事者及び家族の方の生のお話や第一線の先生のお話が伺えて、気持ちの引き締めや知識のアップデートができ、とても勉強になります。 ありがとうございます。 コロナ禍で会場に集まれない中、zoom開催されたことに感謝です。

・長先生は講演中、何度も「家族は簡単にできないとおっしゃっていました。」この様に家族の気持ちがわかる先生のお話は何度も聞きたいとおもいます。

・オンラインで参加よかったです。奈良から長徹二先生の参加、横浜、川崎、新潟、千葉、湘南、沢山来られて良かった。移動が無くて楽、安心して参加、実物が見られなくて残念、繋げない方々のフォローを考え欲しい

・直接会って話すという、リアルな繋がりも大切にできたらと思いました。

・コロナでこのような形になってしまったけど、やはりフォーラムは会場で家族と直接見て、聞きたいですね!私達家族は直接会って、体験談を聞きこれからの生活に生かしていきたい。

・コロナ禍で不安が渦巻く時に、オンライン講演、リモート受講が出来ましたこと本当に有難うございました。開催日を迎えるに当たり、世話役さんの、ご努力に感謝申し上げます。「IT」の応用、活用で高齢者は「夢の国」です。コロナのおかげで、世の中が進化しています。コロナは「憎いです」が「進化は歓迎です」長先生の、テンポの良い講演を聞き、数年まえと変わりがなく又講演中にテスト驚きました。全て成功です。感謝、有難う。 

8月25日(日)第3回薬物依存症者と家族フォーラム」

テーマ:薬物依存症は病気です。

〜家族が笑顔を取り戻すために〜

「回復は仲間の中から始まる」

基調講演:国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所

薬物依存研究部 心理社会研究室長 嶋根 卓也 先生

 今回は横浜ひまわり家族会の第3回「薬物依存症者と家族フォーラム」でした。 家族会からはきっこさんの体験談。息子さんにはつつみ隠さず話せる場が有意義であったこと、家族だけでは支えきれないことや、親が元気で暮らしていることが本人の回復につながることなどを胸を詰まらせながら語ってくださいました。横浜ダルクからはスタッフのブルースさんが薬物依存ではないけれど、これまでの生きづらさを話してくださいました。緊張感のある家庭に育ち、人と親しくなることがわからない・家庭の中でマスコット役やいない子役を背負い生きてきたことなど生きづらさの根本を丁寧に話されていました。薬物ではない何かに無力を認めないと生きるのがとても苦しかったということです。私たち家族も何か抱えて生きていると思います。自分を見つめるよい機会になったように思います。当事者の体験談は横浜ダルクのまっちゃんのお話でした。親の愛情を利用してお金を引き出し、覚せい剤につぎ込んでいたこと、現実を見ないでクスリだけあればいいと思って生きてきたことなど、正直な気持ちが聞けました。家族が「あなたはクズではない」と言ってくれたことがうれしかったことや、薬物依存は病気であるが、やりたい放題やってきたことを病気で片づけてよいのか迷ったことなど心の変遷がよくわかる体験談でした。

 基調講演は国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部心理社会研究室長の嶋根卓也先生でした。

「当事者が主体となった回復支援活動のエビデンス:ダルク追っかけ調査」がテーマでした。ダルクと聞くとヤク中のたまり場や、犯罪集団のように悪い印象が先立ち、世間一般に受け入れがたい印象を持たれていることが多いようです。研究の目的は、ダルク利用者の断薬率や再使用率などの予後に関する基礎情報を集め、地域連携のためにダルクなど民間支援団体の情報を関係機関に周知し共有していくこと・ダルクの利用者の予後を明らかにすることだそうです。 「ダルクの人ってみんな覚せい剤なんでしょ?」「みんなゼンカモンでしょ」「どうせまた使っちゃうでしょ」など世間は負のイメージで固まっていると感じます。調査の中で、覚せい剤以外の依存症のほうが多いことや、薬物事犯として逮捕されている人は半数以下であることやつながっている人の再使用率が圧倒的少ないことが数字で表されています。今後のダルクの活動を広げるために重要な調査であると実感しました。そして断薬を維持するためにはメンバーとの良好な関係・回復モデルの存在・自助グループへの定期的な参加が大切であることを伝えてくださいました。私たち家族も回復の道が数字で表されることにより、すこしでも見通しが立つ材料になりました。

 Q&Aセッションでは、ダルクの施設長や他の回復施設の責任者の方をお招きして家族会からの質問に答えていただきました。 出所や退院の時にいったん自宅に戻ることは回復の妨げになるのか、離婚はどう影響するのか、家族が家族会に参加していることを当事者はどう感じているのか、ダルク後のサポートはどうなっているのかなどそれぞれの考えを話していただきました。印象的だったのはダルクを出てもいつでも帰ってこられる港でありたいということでした。  

8月26日(日)第2回「薬物依存症者と家族フォーラム」RECOVERY BRIDGE 「もっと多くの場所で多様な支援を!」をテーマに開催しました。

国立精神・神経医療センターの近藤あゆみ先生を講師にお招きし、基調講演をしていただきました。「長い回復への道のりの中で、家族はどう対応し、自身も回復していくか」というとても大きな課題をわかりやすく、丁寧にお話していただきました。

家族という社会が生まれ、成長し別のボートで人生を歩み始める。そして今度は別のボートに乗ったまま並走して生きていくという家族の旅路をイメージします。依存症という病が家族の中で発症すると、別のボートに乗っていたはずがまた同じボートに乗ってしまい、何がだれの問題で、誰の責任で解決すべきなのか?それらが混乱し、もつれて出口を見失ってしまう・・・依存症がそのように家族をこわしてしまう性質を持ち合わせていることをまず理解することが大事になってきます。

家族は誰かに問題が起こると助けなければいけないという感情を持つのは当たり前ですが、それが依存症という病にとっては、マイナスに働いてしまうという独特の軌跡を辿ってしまいます。病気を理解して、対応を学ぶという作業が必要になります。同じボートに乗ってこんがらがった問題を整理し家族間の境界線を引くことが大切になってきます。家族自身が学び、境界線を意識していくなかで、自分の課題に取り組んでいけると依存症者への理解が変化し関わり方が変わってきます。関係が変わってくるとそこで依存症者本人にも変化がでてくる可能性が生まれてきます。この関わり方の変化が大きなポイントになります。
家族も自分たちだけでは苦しいので仲間が必要です。家族会や、自助グループで仲間を作ることが重要になります。

今回のフォーラムでは、川崎ダルクを卒業したかずやさんの就労に至ったお話もありました。「ダルクのその後」治療に繋がって一時は安心しますが、その後の生活をどうしていくのか、大きな課題です。スリップを繰り返しながらも、就労にこぎつけ、また依存症者であることをカミングアウトしての就労に希望を持つことができた家族も多かったと思います。

そして、ひまわり家族会のタカさんと、ノンさんの体験談も同じ思いをしてきた家族にとって胸の痛む思いとともに希望を感じたお話でした。

さらにトークセッションの前には国立精神・神経医療センターの松本俊彦先生の「もっと多くの場所で多様な支援を!」という話題提供のお話がありました。


依存症治療は貯金ができない治療であり、繋がり続けることが大切です。依存症の治療に取り組んでいる医療機関は少ないので、「これがあればなんとか治療できるツール」としてSMARPPなどを提供してきた取り組みや、各機関で取り組むことによってザルの網目にかかり治療効果をあげられる患者が増えていくことを望んでいるなどのお話をしてくださいました。

トークセッションでは、RECOVERY BRIDGE 「もっと多くの場所で多様な支援を!」テーマに対して近藤あゆみ先生のコーディネーションで、松本俊彦先生、横浜市こころの健康相談センター、横浜保護観察所、川崎ダルク、相模原ダルク、横浜ダルク、横浜ひまわり家族会の代表が、それぞれの機関での活動を話していただき、問題の共有が出来ました。各機関で今できることを有効に生かし、できないことはできる機関につないでいけるよう垣根を越えて繋ぐことが重要であることが確認できました。
会場からの依存症当事者の方からの質問や、家族会のメンバーからの質問も上がり、登壇者と活発な意見交換ができました。
昼には川崎ダルクのエイサーの演舞もあり熱のこもった力強い太鼓が聴け、みなさん元気をもらいました。

どの参加者にも有意義な一日となった事でしょう。
これからも依存症家族の体験を通して社会に発信を続けていきたいと思います。

 

 

7月23日(土)南公会堂 第1回『薬物依存症者と家族フォーラム』

少し暑さのやわらいだ日曜日、「横浜ひまわり家族会」は横浜市の受託事業として各機関の協力の下、初めてのフォーラムを開催いたしました。

午前中は原宿カウンセリングセンター臨床心理士 高橋郁絵先生による「家族に役立つ動機付け面接」のワークショップが開かれました。「間違い指摘反射」など普通に私たちがやってしまいがちな心の動きに焦点を当て、対峙しない話し合いを持つためのエッセンスが散りばめられたワークショップとなりました。初めて出会った皆さんもうちとけて楽しくワークができました。

そして午後のフォーラムには200人程の方が参加してくださいました。家族の切実な回復への思いや、本人体験談では自信を振り返る中で、生き方を模索している姿が、共感を呼びました。家族は突然、薬物の問題に巻き込まれ、なんとかしなければと右往左往します。しかし、どこに相談をするのか、はたまた相談していい問題なのか?問題はどんどん膨らみ、生きることさえ危なくなってくる・・・そんな状態でやっと家族会にたどり着く・・・たどり着ける家族は氷山の一角。いろいろな事件の背景に薬物問題の影があります。

当事者本人のごえもんさんのお話。今は就労支援事業をされています。自分で社会に働きかけて開拓していくたくましさを感じます。先ゆく仲間として参考にしていきたいと思える素晴らしいかたです。

基調講演は国立精神・神経研究医療センターの松本俊彦先生の暖かさに加え勢いのあるお話でした。

「依存症の栄養は孤独や秘密。依存症の反対はコネクション。人と安心して繋がることが回復への大きな支えになる。」そんなお話に胸がいっぱいになった家族や当事者本人も多くいらっしゃると思います。依存する先をできるだけ沢山持つこと、スリップしても治療プログラムから脱落しないことが大切。「おせっかいプロジェクト」の確立を願うばかりです。

当事者本人や家族が孤立しない「安心できる地域社会」を目指して活動していきたいと思います。

今回のトークセッションは、国立精神・神経研究医療センター近藤あゆみ先生の司会で松本先生、横浜市こころの健康相談センターや、神奈川県精神医療センター、横浜保護観察所の方、横浜ダルク、湘南ダルクも交えて、それぞれの機関の依存症への取り組みや、今後の課題などを話していただきました。フロアからの質問もあり、貴重な意見交換ができました。地域で生きていくことを目指して、関係機関が協力できる社会になって行くことを熱望します。