国立精神・神経医療センターの近藤あゆみ先生を講師にお招きし、基調講演をしていただきました。「長い回復への道のりの中で、家族はどう対応し、自身も回復していくか」というとても大きな課題をわかりやすく、丁寧にお話していただきました。
家族という社会が生まれ、成長し別のボートで人生を歩み始める。そして今度は別のボートに乗ったまま並走して生きていくという家族の旅路をイメージします。依存症という病が家族の中で発症すると、別のボートに乗っていたはずがまた同じボートに乗ってしまい、何がだれの問題で、誰の責任で解決すべきなのか?それらが混乱し、もつれて出口を見失ってしまう・・・依存症がそのように家族をこわしてしまう性質を持ち合わせていることをまず理解することが大事になってきます。
家族は誰かに問題が起こると助けなければいけないという感情を持つのは当たり前ですが、それが依存症という病にとっては、マイナスに働いてしまうという独特の軌跡を辿ってしまいます。病気を理解して、対応を学ぶという作業が必要になります。同じボートに乗ってこんがらがった問題を整理し家族間の境界線を引くことが大切になってきます。家族自身が学び、境界線を意識していくなかで、自分の課題に取り組んでいけると依存症者への理解が変化し関わり方が変わってきます。関係が変わってくるとそこで依存症者本人にも変化がでてくる可能性が生まれてきます。この関わり方の変化が大きなポイントになります。
家族も自分たちだけでは苦しいので仲間が必要です。家族会や、自助グループで仲間を作ることが重要になります。
今回のフォーラムでは、川崎ダルクを卒業したかずやさんの就労に至ったお話もありました。「ダルクのその後」治療に繋がって一時は安心しますが、その後の生活をどうしていくのか、大きな課題です。スリップを繰り返しながらも、就労にこぎつけ、また依存症者であることをカミングアウトしての就労に希望を持つことができた家族も多かったと思います。
そして、ひまわり家族会のタカさんと、ノンさんの体験談も同じ思いをしてきた家族にとって胸の痛む思いとともに希望を感じたお話でした。
さらにトークセッションの前には国立精神・神経医療センターの松本俊彦先生の「もっと多くの場所で多様な支援を!」という話題提供のお話がありました。
依存症治療は貯金ができない治療であり、繋がり続けることが大切です。依存症の治療に取り組んでいる医療機関は少ないので、「これがあればなんとか治療できるツール」としてSMARPPなどを提供してきた取り組みや、各機関で取り組むことによってザルの網目にかかり治療効果をあげられる患者が増えていくことを望んでいるなどのお話をしてくださいました。
トークセッションでは、RECOVERY BRIDGE 「もっと多くの場所で多様な支援を!」テーマに対して近藤あゆみ先生のコーディネーションで、松本俊彦先生、横浜市こころの健康相談センター、横浜保護観察所、川崎ダルク、相模原ダルク、横浜ダルク、横浜ひまわり家族会の代表が、それぞれの機関での活動を話していただき、問題の共有が出来ました。各機関で今できることを有効に生かし、できないことはできる機関につないでいけるよう垣根を越えて繋ぐことが重要であることが確認できました。
会場からの依存症当事者の方からの質問や、家族会のメンバーからの質問も上がり、登壇者と活発な意見交換ができました。
昼には川崎ダルクのエイサーの演舞もあり熱のこもった力強い太鼓が聴け、みなさん元気をもらいました。
どの参加者にも有意義な一日となった事でしょう。
これからも依存症家族の体験を通して社会に発信を続けていきたいと思います。