講師:国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 近藤 あゆみ先生
テーマは「アディクションとトラウマからの回復」
横浜ひまわり家族会でビギナーさんを中心にアドバイスをしてくださる国立精神・神経医療研究センターの近藤あゆみ先生が今回の研修会の講師をしてくださいました。
「自分の人生に目を向け、深堀り」することは、心に目を向けることになります。イヤな気持ちやしんどい気持ちになり、苦しくなることが多いです。そんなときは無理をせず、自分を思いやることが大切です。
心がしんどくなった時には、
① 呼吸に注目し整える。
② 体にギュッと力を入れて、脱力する。
体がどんな風になっているのか、どこで感じているかをよくみる。
③好きなものを30個挙げてみる。
このようにセルフケアをするとよいです。
アディクションとトラウマには深くて複雑な関係があります。あまりにつらい時には、見ないようにすることも大切ですがどこかで向き合い、断ち切る、または和らげていく必要があります。家族の世代間連鎖や自分のなかのつながりを「安心・安全」を大事にして一人ひとりができることをやり続けることが希望に繋がります。心の傷や痛みを成長しながら目をむけていくことがアディクション当事者や家族の回「トラウマ」とは心の傷になる体験で、その影響による症状があります。心的外傷後ストレス(PTSD)は自分のコントロールを離れて再体験をしたり、無意識に回避したりずっと緊張し続けたりして様々な問題を抱えます。1回の大きな出来事でなくても継続的に経験をしてきた人でもPTSDになりえます。このトラウマは時間とともに小さくなっていくことはないといいます。傷は見えないけれど大きく残っています。
依存症の家族の本人に関する否定的感情が、実は自分が体験したしんどい出来事とつながっていることがよくあるそうです。こんな場合、どう対処どのように対処すればよいのでしょう。多くの場合、否定的感情や強迫観念への反応として「拒絶」(自分との切り離し)します。無視、無感覚、誰かのせいにする、ほかのことに没頭するなどです。傷つきや痛みを乗り越えるなかで安全・承認・愛などの基本的ニーズをみたすための戦略や防衛策をとります。しかしどこかでやはり向き合う必要が出てきます。否定的感情や強迫観念への反応を肯定(自分とつながる)していく過程に入ることです。自分の思考や感覚・感情を認める。ありのままを受け入れる。自分のニーズを調べる。ニーズを満たす、はぐくむことが肯定の段階です。これまで、家族は依存症者に振り回されてきており、自分を思いやる余裕がなかった方が多いでしょう。自分を肯定する作業は、まずリラックスして困難な状況や反応を思い出します。そして自分の思考や感覚、感情を認めていきます。感情を言葉にすることも大切です。そしてさまざまな感情とともにいることを受け入れていきます。気持ちが揺れることもあるので、呼吸が静まるまで待ちます。自分の中で最悪なものは何か、最も苦しい信念はなにかなどを調べていきます。始めはつらくても、練習を重ねるといろいろな自分の気づきにつながっていきます。さらに育むこと、自分の弱い部分が受け入れられ理解され安全であると感じられる方法を見つけていきます。つらい感情に気づき、癒す。他者に手伝ってもらってもよいのです。スカッと嫌な気持ちがなくなるわけではないけれど、いろいろな経験をして生き続けていきましょう。また最後にはリラックスして今の感じをゆっくり味わいます。自分に「大丈夫」と言ってあげることが大事です。
トラウマティックな出来事をきっかけとした人間としてのこころの成長を、「心的外傷後成長(PTG)」と呼びます。「PTG」による5つの成長は、「人間関係を信頼し重視する。精神的変容、感謝、人生の価値を理解し新しい興味を持つ、自分の強さを実感し困難に対処できる。」ことです。
アディクションとトラウマは世代を超えて家族全体を苦しめます。双方からの回復の基盤は「安全安心」と自分への思いやりです。影響と反応に気づき立ち止まれるようになることが悪循環を断ち切る鍵です。苦しみが消えてなくなることはないけれど、苦しみを経験した人ならではの気づきや成長があるということです。
家族の方が自分に向き合うときには、仲間の力があると「安心で安全」なのだと実感した研修会でした。