講師:横浜保護観察所 統括保護観察 石川 美緒 氏
「保護観察における薬物事犯者への処遇について」と題した研修会を行いました。
まず更生保護の役割として、「社会において適切な処遇を行うことにより社会内で再犯を防いで支えていくというものがあります。刑事司法における再犯防止の要であり、収監中から出所後の生活の環境を整えること、生活環境の調整などが柱となります。社会復帰を促し、再犯防止につなげることが大きな目的となります。保護観察は、犯罪や非行を犯した人が更生するよう、実社会の中で指導監督や歩道援護等を行う仕組みです。定期的な面接等を通して生活状況の把握を行います。
薬物事犯の状況としては、全体は減少傾向にはあるものの40歳代の覚醒剤取締法違反は増加傾向にあります。大麻においては10代の逮捕者もおり、平成26年を境に若い世代への広がりが見られます。
保護観察官及び保護司による指導として
① 面接による接触確保と行状の把握
② 保護観察を行っていくうえでの約束事(遵守事項)を守るようにと働きかけること
③ 専門的処遇プログラムの実施
があります。専門的処遇プログラムは令和4年4月の少年法改正により、18歳以上の保護観察対象者にも実施可能になりました。
保護観察を通じて得てほしいものは、悩みや課題を話し合うことのできる関係作りです。薬物事犯の人は一人で解決しようとする人が多く、友達や家族にうまく相談ができない傾向が強いです。新庄茶往査をするとネグレクトなどの虐待やいじめの経験があることが多いです。心に大きな傷を抱えています。困ったことを相談して解決するという体験の蓄積が今後の生活に必要なスキルになります。そして、大切に思われる経験。自尊感情が持てるようになること。感情が揺れ動いたときに踏みとどまる力の体得、つまり逃げずに解決する力をつけることです。問題の解決方法に関する知恵の習得も大切になります。必要な支援(治療や自助グループ等)に繋がり生きづらさがやわらぐことも大いにあります。
薬物再乱用防止プログラムを収監中から受講し、社会に出てからも保護観察中に実施し、その後も何かの形で治療プログラムにつながることを目的に実施しています。プログラムは、自分の内面に気づき薬物使用の引き金になることや、孤独な状況を避けるなどを考えていきます。実現可能で自分に合った対処法を学んでいきます。
地域の関係機関や団体と連携し、切れ目のない息の長い処遇ができることが理想です。薬物依存から脱するための体制を作っていくことが重要課題となっています。家族等への相談支援にも目を向けているところです。
研修後は家族の質問にも真摯に答えてくださいました。