第11回「薬物依存症者と家族 オープンセミナー」

基調講演:信田さよ子先生
原宿カウンセリングセンター 顧問
日本公認心理師協会 会長

今回のオープンセミナーでは、「依存症と家族〜その対応をめぐって〜」というテーマで信田さよ子先生に講演していただきました。現状での家族の困りごとに焦点を当て、私たち家族にとって、心強くあたたかい、そしてユーモア交えた素敵なお話をたくさんしてくださいました。

<まずは家族の体験談>

◆横浜ひまわり家族会 じゅんこ

12年前にこのひまわり家族会に繋がり、たくさんの仲間の話を聞いたり勉強させていただくなかで、自分自身がこの2〜3年、とても心が軽くなってると感じています。自分に向き合うことを学び、その行動や思考を少しずつ変えていこうとするうちに心が軽くなったと思います。そのきっかけを3つお話します。
 息子が数々の問題を起こし施設につながり、半年経った頃、本人と話す機会かありました。私たち夫婦は、息子に会える喜びでいっぱいでした。久しぶりに見る息子は、少し恥ずかしそうにしていましたが、プログラムに真剣に取り組んでいると聞き、嬉しかったです。ところが施設長が席を外し、私たち家族だけになると、息子は元のきつい顔に戻り、勝手なことを言ってきました。私はその時に、自分は何をやっていたのかと感じました。息子がプログラムに取り組めばいいとたけ思っていた自分に気づきました。私は私のことをしなければという考えが固まった1つ目の出来事です。
さらに1年数ヶ月経ち、息子は施設を卒業しました。施設内にいるときの安堵感が一気に崩れ、不安な気持ちがあふれました。その頃、NAの大きな会場で、一般社会のなかでプログラムを使って生きる話を、依存症本人のお話として聞くことができました。これが、2つ目の私の気づきでした。
 その後息子は社会生活のなかで自立をしていきます。
生きていると私たち家族にもいろんな問題が起きてきます。認知症の母への対応、癌が発覚した父への介護、看取り。これが私の3つ目の大きな気づきとなります。
私は「人にお願いして頼む」「助けてほしいと言う」ということを実践することにより、心穏やかに、両親を見送ることができました。
自分を見失わないこと、焦らず一つずつ解決していく、という方法を、依存症の勉強を通して学び、自分の生活のなかで活かせることができるようになりました。
今私は、自分の人生を楽に過ごし、楽しめていると思います。そして点検も怠らないことが大切です。
そのためには家族会がとても大事な私の居場所です。たくさんの仲間、そしてダルクスタッフさんには感謝しています。これからもよろしくお願いします。

<続いて、当事者体験談>

◆横浜ダルクスタッフ ヤスさん

両親が離婚し、自分にはあまり干渉しない、自由な父親との暮らしのなかで、専門学校に進学しますが、薬が始まりました。しかし何とかうまく使えていました。お金がなくなりギャンブルに手を出して借金を抱えますが、そのときはギャンブルのみの問題と思っていたお母様が返済してくれました。その時の気持ちは、「ありがとう、これでまた薬がかえる。。。」

 その後29歳で薬物での逮捕。母親に対して「お前に何が分かるんだ!」という思いの中、執行猶予で実家(母の元)に戻るようになりました。関係性もコミニュケーションもうまく取れない中、32歳の時薬物で再逮捕されます。
その頃からお母様はひまわり家族会に繋がり勉強をしていきました。ヤスさんに対する言動、行動ぎ変わっていくのを感じたそうです。はじめはそんなことは受け入れられなかったヤスさんですが、仮出所のためだけに通所するということになり、ダルクとつながり始めました。
 気持ちは受け入れられずにいやいや過ごしていましたが、サーフィンに誘われたことをきっかけに、少しずつその場に馴染んでいきました。
ヤスさんは入寮せずに、通所で回復し続け、いまはスタッフとしてたくさんの仲間を助けています。
しかし、いまでも家族内では、感情のもやもやがあるとのことでした。コミニュケーション不足を解消して自分の自信を取り戻し、今後も生活していきたいとおっしゃっていました。

<基調講演>

◆信田さよ子先生

信田先生は病院、保健所のご経験を経て、1995年に原宿カウンセリングセンターを設立し、現在は顧問として多くの相談に乗ってくださっています。また多くの著書もあります。
長年にわたる依存症、暴力などの家族問題にかかわってきた体験から、本人と家族の関係、又、50年もの間様々な理論が取り入れられてきた、家族の対応の仕方について、その返還をお話しくださいました。
かつて依存症は中毒と言われ、とくにアルコールに問題がある夫を持つ奥さんの苦労というものが多く語られる時代でした。

その家族たちは、そのアルコールで起こる問題が「依存症」という「病気」で引き起こされるもので、「病気なら治療できる」と思い、希望を見いだしました。家族にとっては「病気」と名前をつけることに、意味のあることだったのです。
「病気」とすることで、意志の問題という個人の責任をなくし、回復という言葉を使っていくことになります。これは、日本なりの言葉を手探りして作ってきた言葉になります。
又、依存症に関わる様々な方法論が出てきました。
(クラフト、マインドフルネス、動機づけ面接)
2014年頃から現在は、スマホの普及によりスマホで何でもできるようになり、ゲーム、ネット依存、スポーツ賭博の問題が増大し、問題となっています。

また自己治療という視点からトラウマとアディクションとのつながりが注目されてきました。自助グループでの語りを起点に当事者研究とのつながりも注目されています。
ハームリダクション、オープンダイアローグなども、いわれてきていて、全体的に依存症の姿がかわりつつあります。

@アディクションアプローチの先進性

·本人より家族困っている人が対象→家族は本人か困るよりずっと前から困っている
·底をつかせることの問題性→死に直結することがある
ギャンブルの場合は底付きが借金であることが多いので、底付きも有効なこともある。
·ケアの有害性→援助は時として有害になる
·自助グループの力→本人たち主導、医療の限界、専門家の姿勢
@支配と共依存

依存症の中でよく言われる「共依存」は病気ではなく、支配の一つである。ケア(愛情)によって、相手を弱者化することによる支配(無自覚な善意)である

@KGグループ(共依存グループ)

先生が行っているグループで、子供に問題が生じて困っている母親のグループ。もともとは共依存の妻、母親を対象としていたが、今は子どもの問題への介入を目的にしたグループ。週一回、またオンラインもあり

問題のある子供を持つ母親は、
①世間から母親の育て方が悪いと言われ
②周りの親戚から、一族の恥と言われ
③夫から、妻の過保護が原因と言われ孤立無援状態
この母親たちのグループで、先生がファシリテーターとなり、放射線状態の関係性を基本とするグループ。

KGの基本知識

·アイメッセージのコツ。。。(松竹梅)
松。。。プラスの感情(嬉しい、楽しい、ホッとした)
竹。。。マイナスの感情(悲しい、不安だ、辛い、さみしい)
梅。。。意志、要求(〜と思う、〜してほしい)

その結果よい変化が起きたときはその理由を3つ考える

悪い変化が起きたときはその対応を考える
夫婦間での合意形成が重要な役割を果たすので、共同歩調を実現するように努力すること。
オンラインは距離があるため、「仲間意識」「連帯感」を、生むことへの抵抗がなくなり副作用が少ない

家族を援助することの意味

ファシリテーターが中心となり、個人を動かそうとせずキーパーソンの母親が変化を起こすことを理解すること、そして誰からも共感されない母親への敬意、共感をベースにする。
介入は生命危機を救うためのグループであるので、その一点において介入は許される

<Q&Aセッション>

登壇者:
・ファシリテーター:国立精神·神経医療センター 片山宗紀氏
・信田さよ子先生
・NPO法人横浜ダルク 施設長 山田貴志氏・スタッフ ヤスさん・スタッフ・純さん
・(一社)HOPE湘南ダルク代表 栗栖次郎氏

<Q1> 家族との関係と物質使用について家族が原因なのでしょうか?また関わり方で回復するのでしょうか?

・信田先生 … 家族が原因ではない。一方家族にしかできないことがある
・ヤスさん… 家族とのかかわりという点においては、いまの自分の子供との関わりを通すと、自分の幼少期は寂しかったと思う
・栗栖… 家族が要因となることもあるのではないか。自分は20年クリーンの中で、薬物依存症者になったことの原因を探してきた。今は「そのように生まれた」とおもっている。自分の家庭は虐待、暴力があった。
・純さん… 幼少期の影響としては親に捨てられたという思いと、預けられた親戚からの心ない言葉から、居場所がなくなり、不良グループが害場所になっていった。

・山田さん… 実際の日々のダルクへの相談者の中で、夫婦間で相談できているのは1割ほど。家族。。特に父と母のあいだで向き合うことができるように、今後も提案できるよう取り組んでいきたい。

・信田先生… 因果関係は考えないほうがいい。できることを探していく。原因、結果というような言葉を使わない。

<Q2> OD(オーバードース)している子供との付き合い方、子供のともだちもしている。

・信田先生… オーバードースしているあなたが心配、相談しようということを伝える。
・栗栖さん… 友達もやっていることについては、まずはそのことを話せるようにサポートしてもらえるところを提案する。施設では、環境を変える、新しいことをみんなで始めるなどで、やめるきっかけを作っている。

<Q3> 一人で子どもの問題を抱えている母親のしんどさを、夫にどうやってつたえていったらいいのか(スクールカウンセラーからの立場で母親の心配をしている状況)

伝えかたは難しいが、アイメッセージでつたえていく、相手がすぐにはわかってくれないかもしれないが伝えていくことが大切

夫婦間では、あなたの問題、私の問題とわけなくていい。理解するかしないかは別として「聴覚」としては残っていく。

・ヤスさん… 第三者を挟んで伝えていく

<Q4> 特別支援学校教員の立場で、娘さんが母親に対して暴力を振るう。父は関心なく介入してこない。母親にしてあげられる援助はあるか?

・信田先生… 暴力からは逃げること、暴力は受けないこと、それ以上のことは難しい。その母親が教員に頼るという関係性はよいこと

<Q5> 家族内に薬物依存症者(今は回復)がいる。子どもへの伝え方、ケアは?

・栗栖さん… ありのままを伝えている。また自分の特性は、影響はゼロとはいえないので、子どもたちには自覚し、注意して生きるようというところまで話している
・ヤスさん… まだ話していない。年齢的なことを考えまた伝え方も考えていきたい
・山田さん… 子どもに話している。当事者間の結婚で、お互い壊し合うような作業をしてしまうこともある。気づいて成長していきたい
・信田先生… いつ話すか、時期は難しい。一概に言えないが、「病気」を、継続治療していることを伝える。

<Q6> ミーティングにアルコールで酔ってきてしまった人への対応は?

(支援者の方へ)

・栗栖さん… ほどよく迎え入れる、個別対応
・ヤスさん… 仲間の影響を考える、仲間の仲で話せるようなら話してもらうが、無理なら個別対応
・純さん… 個別対応。またはシラフにったら話そうねと言う
・山田さん… 暴言がひどければ帰ってもらうような動きをする
酔っている人を見ると、仲間が崩れてしまう危険があることは忘れずに対応する。

<Q7> 訪問看護ステーションの方より

若年者のオーバードースに対して、代替方法はありますか?また周囲の関わり方が分からない
(援助職は見守る、家族は辛い)
・信田先生… 本人を肯定してあげる。その薬はどういうもの?どんな事がいいの?などを聞いてみる。代替作業は先の話。どうやったら援助者との関係をつくれるかを考える。

・最後に信田先生より……支援者のリスクについて。

どこまで言っていいのか、どこまでやったらいいのか、支援者は常に悩むところではありますが、私たちは保険点数が取れないなかで、この仕事をしています。介入には責任はつきものでありますが、そこを覚悟で介入しています。と、お話されていました。、これは私達家族にとっては、本当に心強いお言葉です。しかし一方で、このことをきちんと保険点数に乗せられる社会であってほしいと思います。

文面ではなかなかお伝えできないほどのたくさんのユーモアも交えて、また質疑応答も活発な、オープンセミナーとなりました。

家族の皆様が笑顔を取り戻せますように

2025年2月16日(日)第10回「薬物依存症者と家族」オープンセミナー

2016年に始めたオープンセミナーも今回10回を迎えることができました。多くの皆さまと依存症問題の共有ができ、多くを学びができましたことに感謝申し上げます。
今回の基調講演は、神奈川県立精神医療センター依存症診療科部長の青山久美先生による『家族から始まる回復の連鎖』と題してのご講演です。青山先生のもう一つの専門である児童精神科と合わせて、小児期の逆境体験と依存症の関連についてもうかがうことができました。会場とZOOMオンライン合わせて、174名の参加をいただき、多くの方と沢山の事を共有できました。

まずは、横浜ひまわり家族会のさくらさんの体験談です。
14年間の月日、今日のことしか考えることができなかった。という冒頭の言葉に、皆うなずいていました。薬物使用に対して、親は、私がなんとかしなくては、やめさせなくてはと躍起になります。感情にまかせて泣いたり怒ったりしていたとのことです。病院に貼ってあったポスターのキヤッチコピー『依存症は愛情だけでは治らない』を見て家族会につながり、家族会の中で学び、学んだことを実践していくと、息子は少しずつ変わってきたとのことでした。依存症本人との同居生活は不安と疲労感が続く…だから、これからも仲間とともに学び続けたい。という力強い言葉をきくことができました。

次の当事者の体験談は、横浜ダルクの純さんでした。
9年前、夫の薬物の問題で家族として私達ひまわりの仲間だった純さんは、その後当事者であることをカミングアウトし、自助グループに行くようになりました。今は横浜ダルクにも、通所しています。小さい頃に家族と別れ、親がいない純さんは、預けられた親せきからも、虐待をうけることになったそうです。たばこ、シンナーを覚え、暴走族に入り、やがて覚せい剤を覚えていきました。その後出会った夫にも、覚せい剤を教えてしまい、旦那さんはどんどんはまっていきました。自分は自然とやめることができ、その中で気づいた、自分の夫に対する「共依存」。沢山もがき苦しんだ純さんは、今は自助グループの中で仲間と共に、逃げずにプログラムを継続しています。
彼女の幼少期のつらい体験は、彼女の人生を変えてしまったのかもしれません。しかし、このような体験をのり超えて、回復していく姿に希望を教えてもらいました。

基調講演の青山久美先生はひまわり家族会でも以前に講演いただきました。

今回の講演テーマは『家族から始まる回復の連鎖』です。
「依存症の人は、自分の感情にうまく気づいたり、言葉にしたり、人にSOSを出すことができず、依存性のある物質や行動で対処をするようになる。
家族は人に相談できず、自分で何とかしようとして、健康的な対処ができなくなり、家族自身の体調を崩すようになる。
ではその解決方法はどうすればよいのか。その大きな課題を、先生が具体的な事例も含めわかりやすく教えてくださいました。

➀今どきの依存症事情
②背景にある、複雑な生きづらさ
・愛着障害としてのアディクション
・依存症リスクと17項目の小児期(15歳以下)逆境体験
・信頼障害仮説
小児期の愛着障害や逆境体験が要因で、依存症になる方がいます。困難な養育環境は、心の病のリスクを高めるからです。そのような体験が、人を信じられなくなり、ストレスへの対処能力が低く、物資や行為に依存するようになります。人に頼ることができるようにになり、依存物質や、依存行為から距離をとることで、依存症からの回復につながっていくのです。とのお話しでした。

①、②についての説明の後、家族が元気になるためのお話をしてくださいました。
➂見守る家族が元気になるために。
・本人とのかかわり方を学ぶ。
・本人に話しかけるときは、「私は」を主語にして話す。
・感情にまかせない。正したい反射を出さない。
・依存症の人は、欲求や渇望があるのは当たり前の事なので、それを叱ったりしない。
・金銭的や後始末、本人の代わりに本人にとって都合のいい噓をかわりにつくなどの「尻拭い」はしない。

家族が子供の場合
子供のための支援を充実させることが必要。
子供が安心と安全を感じられ、気持ちを受け止めてもらえる場所を作る
子供たちの支援者も、依存症を知り親子で支援してもらう。
また、年齢にもよりますが、子供に「依存症」という病気について説明することも大切。

家族が大人の場合
まず、自分が元気になる。
自分に目を向け、自分がホッとできる時間、楽しいと思える時間を持てるようにする。
家族会や家族教室に顔を出してみる。

私たち家族は依存症の問題が起き、疲弊していきます。そして自己憐憫に陥り毎日が苦しくなります。しかし依存症について正しい知識を身につけ、安心して話せる仲間を見つけていくうちに、私たちは元気になれるのです。
家族が回復すると、その姿を見て、依存症者本人の回復が始まっていきます。家族会という安心安全な場所、仲間の中で回復の連鎖が始まっていくのです。
そのために家族は、愛情をもって手を放していき、本人との適切な距離をもち、家族自身が心にフタをしない生き方を学んでいくことです。どうしたらよいかを学ぶことのできる家族会の重要性をあらためて感じました。

Q&Aセッションでは、登壇者に青山先生、横浜ダルク施設長山田貴志氏、湘南ダルク代表栗栖次郎氏、横浜ダルクスタッフ ソウさん、純さん、そして、ファシリテーターに、国立精神・神経医療研究センターの片山宗紀氏でした。会場・zoom参加者から、たくさんの質問が寄せられました。

まず、本人との距離の取り方についての質問。
本人の体験や年齢、もともとの家族関係にもよりますが、自分たち(家族)だけで判断せず、それでよいのか、よかったか、など、相談、評価できる支援者や仲間がいるとよい、そして、言い方に気を付けたり家族が巻き込まれない状況を作っていくことが大事である。とのことでした。

また、もし自分に近い人が、薬物を使っていたらどうしたらよいのかの質問。
これも一人で抱えず、信頼できる人に相談して行くこと。あなたはどうしたいのかと、問いかけてあげること、など、それぞれの立場でお答えいただきました。

また「愛情のかけ方」についての質問では、
登壇者のみならず、会場からもそれぞれの立場で感想がありました。なんでもやってあげることが愛情ではないこと。家族が助けないことが必要な時もあること。障がいのあるご家族は愛情があるからこそ、自立を目指した経緯などが話された。親が子に対して、適切な距離をもって愛情を注ぐのがどれだけ難しいものか。でもそれをしなければ…。ということを痛感しました。感じるものが多い意見交換でした。

今回もたくさんの方が参加してくださいました。ありがとうございました。この依存症の問題は依存症者本人も家族も一人では抱えきれない問題です。仲間の中で元気を取り戻し回復の連鎖が起きますよう願っています。

2023年2月26日(日)第8回「薬物依存症者と家族オープンセミナー」

去る2月26日(日)にラポールシアターで「横浜ひまわり家族会・第8回オープンセミナー」薬物依存症は病気です。~家族が笑顔を取り戻すために~を開催いたしました。
基調講演に北里大学医学部精神科学助教授の朝倉崇文先生を講師にお招きしました。

 当事者の体験談は、横浜ダルクのスタッフ、ソウさんでした。
 「プログラムで自分の人生を振り返っても、仲間のようにトラウマがあったわけではなかった。ただ薬があった。一緒にクスリをやっていた友達は失敗すると薬を止めていったが自分にはそれができず、コントロールを失っていった。仕事もなにもかも破綻して失っていったが止められなかった。逮捕されて「クスリとの戦いが終わる。」と思ったがうまくはいかず、死ぬに死ねなくてあきらめていた。ダルクで「止めようとすることを止める。」と言われ、プログラムの中で仲間の支えを頼りに少しずつ正気を取り戻した。」そんな苦しい思いを話されました。「今、悪夢から解放されている。」と明るい表情で話されていました。
 家族の体験談は、ジュンさんでした。息子さんのストーリー、家族のストーリー、薬物の問題が発覚してからどんな思いで今日までやってきたのか、ご夫婦の思いが詰まった体験談でした。家族会での出会いや回復などのお話もありました。

 朝倉先生の基調講演は、「常識ではわからない依存症。わかることで回復できる。」~レッテルを貼られた人達との出会いで得た、依存症の本質~というテーマでのお話でした。

「依存症」あなたにとってのイメージはどんなものでしょうか。「だらしない人がなる。」「意志の弱い人。」「快楽に身を沈めた結果。」「悪い奴。」このような社会の偏見や差別により本人や家族にとっては恥ずべき問題となっているのが現状です。例えば著名人では、逮捕されてからも否定する場合が多かった時期がありました。しかし、近年は「依存症であること」を告白するようになってきました。アメリカでは先にカミングアウトをして栄光を手放し回復に向かおうとする人、さらには栄光を手にしたまま治療にあたり復帰する人も出てきています。日本でも2018年ころより依存症治療を告白する人が出てきました。
 依存症の歴史としては、アメリカの禁酒法時代より前に社会問題として注目されており、規則や刑罰の強化をしてきました。それでもうまくいかず、飲む人は減らないことに反社会組織が目をつけ闇で売ることに。このころから病気としての認識も存在していました。道徳的・宗教的なアプローチも失敗しましたが自助グループの広がりで治療に成功するようになっていきます。心理学の発達も相まって一定の効果を上げていくようになりました。今現在は、断酒断薬ができない人でも生きられるようにという考え方も出てきています。ハームリダクション政策で問題を減らしていくという立場で治療にあたっていきます。社会的孤立や生活困窮・心理的安全性など背景の社会問題の支援をし、ライフスキル教育によって使わなくても生きていける、使わなければならない人を減らす政策に切り替えようという動きが出てきています。
 何年か前から言われている「依存症の自己治療仮説」というものがあります。不快な感情を緩和・逃れるために薬物を使う行動をとるというもので、一時的であれ手軽に確実に様々な問題から逃れることができます。他人に助けを求めると裏切られることもありますが、クスリは必ず効果があります。そのように感じている人が薬物使用を止めるには安心できる場・居場所・充足感などが重要です。ライフスタイルを変えないまま薬物だけを止めようとする人は多いようですが、それだけでは問題を解決することは難しいです。
 「ちゃんと生きたい気持ち」を持っている依存症者が、「ちゃんとできない現実。」にぶつかっても生きていけるように支援をしていくこと、問題解決において大切なことを認識できるように支援をすることが大切です。そのために、本人にとって「本当に困ること」「何とかなること」を区別することが必要になります。治療するには戦略を立てる必要があります。本人の意志の強さに頼るのは危険で無策の場合が多いようです。不安要素を分析し戦略を立て、その一つとして自助グループや病院が存在します。依存症になる人の特徴として「自分に自信がない。」「人を信じられない。」「本音を言えない。」「見捨てられる不安が強い。」「孤独で寂しい。」「自分を大切にできない。」などが挙げられます。支援者はまず本人の目の前にいる自分が彼らを受け入れること、それが彼らの最初の救いになります。
 家族は起きている問題を整理し誰かに相談すること。自分も疲弊しているのでケアをすること。家族教室や自助グループに通い背中を見せること、情報を集めること、治療者になる必要はないこと、依存症の課題と自分の課題を分けて考えることを実践できるとよいでしょう。家族の自助グループの役割は、「分かち合い孤独を解消すること。」「希望を見出すこと。」「陥りやすい失敗を知り振り返ること。」「新しい生き方をすること。」「自分の課題と家族の課題を分けて取り組むこと。」などです。

平安の祈りのなかの、「変えられるものは変えていく勇気、変えられないものを受け入れる落ち着きを、そして二つを見分ける賢さを」これにつきるということでしょうか。

Q&Aはセッションは、朝倉先生、横浜ダルクの施設長山田氏、スタッフのソウ氏、一般社団法人HOPEの栗栖氏、家族会のジュン氏、ファシリテーターの片山氏で行われました。

会場から、「本人との距離の取り方」の質問には、事情によっても違うけれど、ダルクからは「困らせたいわけではない。支えとして家族に一緒にやってもらいたいこともあるが、親は親の生活を大切にし、危険のないようにしてほしい。」「過保護になりがちだが誰のための行動なのか、自分が安心したいから構いたいのか考える。正解はわからない。」などのお話がありました。朝倉先生からは「家族は問題を分けるのが難しい。できないなら離れるほうが良い。困るところを見せてもよい。それがきっかけで本人が変わることもある。家族は自分が死ぬまでに何とかしたいと思うが、急ぐ原因になるのでその考えを捨てるとよい。死んでから変わってもよいのではないか。人はいつか変わると信じること。」などのご意見でした。
最後に会場から当事者の手が挙がりました。言葉に詰まりながらもやっと心の叫びを発してくれた男性。「ドラッグに逃げた自分。自分にしかわからないことがある。人のせいにしたくないが、家族への不満、意見の食い違い、両親の【ものさし】に合わなかった。母の変化を感じ自分も言えるようになってきた。親の一歩と自分の一歩は違うが進んでいきたい気持ちがある。みんなが同じではないが少しずつ進んでいることを認めてほしい。」心の叫びともとれる大切な発言でした。朝倉先生からは、「時間をかけて世代間連鎖を切るように努力してほしい。」と言葉がかけられました。

2022年2月27日(日)第7回「薬物依存症者と家族 オープンセミナー」

 

基調講演:神奈川県立精神医療センター副院長小林桜児先生

第7回となった横浜ひまわり家族会のオープンセミナーです。コロナウイルスまん延防止重点処置期間中でしたが、会場には100名ほどの参加がありました。Zoomでの参加は120名もあり、会場とオンライン参加者・講師の先生と繋ぎ、多くの方にメッセージを届けられたと思います。

 まずは家族からの体験談でした。Mさんは50代の息子さんの薬物問題に悩んで家族会に参加されました。刑務所から出所するときに、ダルクへの入寮か、病院に行くかの選択を息子さんに求めましたが、息子さんは「働きたい。」と…自分の考えにはなかった選択肢を息子さんが選んだことに困惑されましたが、母が敷いたレールではない人生を歩み始めた息子さんを応援するまでの過程を、心を込めて語られました。
 本人体験談は、ロンさんでした。何度かロンさんの体験談を聴いてきましたが、表情がとても穏やかになっている印象を持ちました。「不安」という言葉を知らない、そんな気持ちを誰かに言ってはいけないと思いながら生きてきたと話されていました。今、スタッフとしてダルクで生活しているが、スタッフでいることで自分が助けられているということに感謝したいとのことでした。
 もうお一方の本人体験談はK-GAPの近藤氏でした。発達障害を持っていて、学校での生活がとてもつらかったとのことでした。自分でも動いてしまう原因がわからなかったし、ぜんそくがあって夜も安心して眠れない生活、母からは生まなければよかったと言われ、居場所がなかったと話されていました。お話の最後に、「インナーチャイルドワーク」をしてくださいました。

 今回は、久しぶりに神奈川県精神医療センターの小林桜児先生の基調講演でした。
「依存症患者をどう理解し、治療につなげるか?―家族の対応について―」
従来は依存症の説明として、遺伝的要因と環境的要因が絡み合って依存症になると言われてきました。発達障害を持っていたり好奇心・興味本位ではじめたり、害に対する知識の欠如などによるものと認識されてきた部分が多かったのですが、果たしてそうなのか?社会的に地位のある議員や教員、果ては医師などおそらく知識が欠如しているなどとは縁遠い人たちにも依存症になる人はいます。社会的地位や名声をなげうっても止められない「依存症」とは、一体何なのかということを丁寧に説明されました。
小児期の逆境体験が心理的孤立を生み、依存症との接点を作りだす可能性に触れていました。薬物に頼ることで心理的孤立が改善され、それが習慣化していく、つまり報酬的効果が本人にとって大きくなります。
 依存症は本人にとって溺れかかったときの浮き輪のようなものであり、依存症の症状は自己調節機能障害=「感情の海」を上手に泳げないことだと言います。無理に浮き輪(薬物やアルコール)を取り上げても、別のもの(他の薬物やギャンブル)にしがみつくだけで解決にはならない、解決していくためには泳ぎ方を覚えていくしかないのだと。
 小林先生は、依存症を信頼障害という仮説に立って、分析を進めています。その立場から治療を考えると、まず依存症の重症度を下げる視点に立ち、人を頼れるようになって不信感を減らすなどの取り組みをしていくことが大切だとのことです。すぐにやめられなくても害を減らして行くことを目指し、受容や共感の体験を積んでいければよいと考え治療にあたっています。
 まずは家族間のコミュニケーションを改善していくこと、行動変容を強化していくこと、距離をとるなどを経て、家族自身の生活も守る必要があります。
 本人を治療につなげるには相当な労力が必要です。家族が先に相談に繋がり行動を変化させることで、突破口が見つかることもあります。本人の回復に振り回されずに家族自身が楽に生きる方法を模索していくことが重要ですと締めくくられました。

 小林 桜児先生の依存症に関するYouTube動画もアップされています。何かの折に観て心を軽くするのもよいのではないでしょうか。

Q&Aセッションでは、まだダルクにつながっていないご家族や保護司、ZOOM参加者からも質問を受けて活発な質疑応答ができ、時間が短いとのアンケート回答も頂きました。
ZOOM講演も4回目となり定着した感があります。神奈川県外から北海道・沖縄までで大変盛況となりました。
今後もニューノーマルのイベントとして、ZOOMオンラインを併用したオープンセミナーで、依存症家族以外の援助者・一般参加者へも啓発を図っていきたいと思います。

2022年2月26日横浜ひまわり家族会・第8回オープンセミナー

去る2月26日(日)にラポールシアターで「横浜ひまわり家族会・第8回オープンセミナー」薬物依存症は病気です。~家族が笑顔を取り戻すために~を開催いたしました。
基調講演に北里大学医学部精神科学助教授の朝倉崇文先生を講師にお招きしました。

 当事者の体験談は、横浜ダルクのスタッフ、ソウさんでした。
 「プログラムで自分の人生を振り返っても、仲間のようにトラウマがあったわけではなかった。ただ薬があった。一緒にクスリをやっていた友達は失敗すると薬を止めていったが自分にはそれができず、コントロールを失っていった。仕事もなにもかも破綻して失っていったが止められなかった。逮捕されて「クスリとの戦いが終わる。」と思ったがうまくはいかず、死ぬに死ねなくてあきらめていた。ダルクで「止めようとすることを止める。」と言われ、プログラムの中で仲間の支えを頼りに少しずつ正気を取り戻した。」そんな苦しい思いを話されました。「今、悪夢から解放されている。」と明るい表情で話されていました。
 家族の体験談は、ジュンさんでした。息子さんのストーリー、家族のストーリー、薬物の問題が発覚してからどんな思いで今日までやってきたのか、ご夫婦の思いが詰まった体験談でした。家族会での出会いや回復などのお話もありました。

 朝倉先生の基調講演は、「常識ではわからない依存症。わかることで回復できる。」~レッテルを貼られた人達との出会いで得た、依存症の本質~というテーマでのお話でした。
 「依存症」あなたにとってのイメージはどんなものでしょうか。「だらしない人がなる。」「意志の弱い人。」「快楽に身を沈めた結果。」「悪い奴。」このような社会の偏見や差別により本人や家族にとっては恥ずべき問題となっているのが現状です。例えば著名人では、逮捕されてからも否定する場合が多かった時期がありました。しかし、近年は「依存症であること」を告白するようになってきました。アメリカでは先にカミングアウトをして栄光を手放し回復に向かおうとする人、さらには栄光を手にしたまま治療にあたり復帰する人も出てきています。日本でも2018年ころより依存症治療を告白する人が出てきました。
 依存症の歴史としては、アメリカの禁酒法時代より前に社会問題として注目されており、規則や刑罰の強化をしてきました。それでもうまくいかず、飲む人は減らないことに反社会組織が目をつけ闇で売ることに。このころから病気としての認識も存在していました。道徳的・宗教的なアプローチも失敗しましたが自助グループの広がりで治療に成功するようになっていきます。心理学の発達も相まって一定の効果を上げていくようになりました。今現在は、断酒断薬ができない人でも生きられるようにという考え方も出てきています。ハームリダクション政策で問題を減らしていくという立場で治療にあたっていきます。社会的孤立や生活困窮・心理的安全性など背景の社会問題の支援をし、ライフスキル教育によって使わなくても生きていける、使わなければならない人を減らす政策に切り替えようという動きが出てきています。
 何年か前から言われている「依存症の自己治療仮説」というものがあります。不快な感情を緩和・逃れるために薬物を使う行動をとるというもので、一時的であれ手軽に確実に様々な問題から逃れることができます。他人に助けを求めると裏切られることもありますが、クスリは必ず効果があります。そのように感じている人が薬物使用を止めるには安心できる場・居場所・充足感などが重要です。ライフスタイルを変えないまま薬物だけを止めようとする人は多いようですが、それだけでは問題を解決することは難しいです。
 「ちゃんと生きたい気持ち」を持っている依存症者が、「ちゃんとできない現実。」にぶつかっても生きていけるように支援をしていくこと、問題解決において大切なことを認識できるように支援をすることが大切です。そのために、本人にとって「本当に困ること」「何とかなること」を区別することが必要になります。治療するには戦略を立てる必要があります。本人の意志の強さに頼るのは危険で無策の場合が多いようです。不安要素を分析し戦略を立て、その一つとして自助グループや病院が存在します。依存症になる人の特徴として「自分に自信がない。」「人を信じられない。」「本音を言えない。」「見捨てられる不安が強い。」「孤独で寂しい。」「自分を大切にできない。」などが挙げられます。支援者はまず本人の目の前にいる自分が彼らを受け入れること、それが彼らの最初の救いになります。
 家族は起きている問題を整理し誰かに相談すること。自分も疲弊しているのでケアをすること。家族教室や自助グループに通い背中を見せること、情報を集めること、治療者になる必要はないこと、依存症の課題と自分の課題を分けて考えることを実践できるとよいでしょう。家族の自助グループの役割は、「分かち合い孤独を解消すること。」「希望を見出すこと。」「陥りやすい失敗を知り振り返ること。」「新しい生き方をすること。」「自分の課題と家族の課題を分けて取り組むこと。」などです。

平安の祈りのなかの、「変えられるものは変えていく勇気、変えられないものを受け入れる落ち着きを、そして二つを見分ける賢さを」これにつきるということでしょうか。

 

Q&Aはセッションは、朝倉先生、横浜ダルクの施設長山田氏、スタッフのソウ氏、一般社団法人HOPEの栗栖氏、家族会のジュン氏、ファシリテーターの片山氏で行われました。会場から、「本人との距離の取り方」の質問には、事情によっても違うけれど、ダルクからは「困らせたいわけではない。支えとして家族に一緒にやってもらいたいこともあるが、親は親の生活を大切にし、危険のないようにしてほしい。」「過保護になりがちだが誰のための行動なのか、自分が安心したいから構いたいのか考える。正解はわからない。」などのお話がありました。朝倉先生からは「家族は問題を分けるのが難しい。できないなら離れるほうが良い。困るところを見せてもよい。それがきっかけで本人が変わることもある。家族は自分が死ぬまでに何とかしたいと思うが、急ぐ原因になるのでその考えを捨てるとよい。死んでから変わってもよいのではないか。人はいつか変わると信じること。」などのご意見でした。
最後に会場から当事者の手が挙がりました。言葉に詰まりながらもやっと心の叫びを発してくれた男性。「ドラッグに逃げた自分。自分にしかわからないことがある。人のせいにしたくないが、家族への不満、意見の食い違い、両親の【ものさし】に合わなかった。母の変化を感じ自分も言えるようになってきた。親の一歩と自分の一歩は違うが進んでいきたい気持ちがある。みんなが同じではないが少しずつ進んでいることを認めてほしい。」心の叫びともとれる大切な発言でした。朝倉先生からは、「時間をかけて世代間連鎖を切るように努力してほしい。」と言葉がかけられました。

2021年2月28日(日)第6回「薬物依存症者と家族オープンセミナー」

薬物依存症は病気です。~家族が笑顔を取り戻すために~

昨年は新型コロナウィルス感染拡大防止のため、やむなく中止となりましたが、今回は緊急事態宣言中でしたが、関係各機関のご指導により万全の感染対策を実施して開催しました。会場に参加できない方々にはリモートによる参加を呼びかけ、会場とオンライン参加された全国各地の方々と広くつながり、130名の方々が問題の共有ができ、希望がみえるセミナーとなりました。

 まずは家族の体験談としてジローさんのお話でした。

ジローさんは姪ごさんの依存症回復に尽力してきました。今回、姪ごさんの家族の背景やこれまでの治療の経過などを詳しく話されました。あちこちのダルクなどに繋がっては出てしまうことを繰り返したけれど、沖縄で落ち着き回復に向かえました。今は頼れる仲間もできて、これまでのジローさんの努力が報われたように感じるそうです。

 お二人目は、湘南ダルクで回復の道を歩いているユーキさんの体験談です。

入寮してアディクトと自分は違うと感じていたそうです。家庭環境は「あいさつのない家」「両親の共働き」「虐待」と赤裸々に話されました。問題のない家庭はないし、自分と家族は合わせ鏡のように思うとも語っていました。12年間睡眠薬が放せず、パチンコ・パチスロにはまって「眠らない街で眠らない俺」をかっこいいと思っていたといいます。

 客観的に自分を振り返ったときに、恥ずかしい自分がいたと思っているとのことです。堅苦しく表現してしまう自分も嫌、そして親が自分の息子に困惑しているのではないかと、試すように怒鳴り、助けてほしいという気持ちが届いているのか確かめていたように思うそうです。精神病院に入院させられた時は恨んでいたけど10年以上にわたったクスリの生活から抜けられたことに感謝していると。

親との関係はすぐには元に戻らないけれど、親への思いは伝えたいし、ほどよい距離で支配されないことが大切だと思っているそうです。最後に「親の意見と日本酒はあとから効いてくる」という言葉で絞めてくださいました。

 三人目の講演者はNPO法人友愛会の生活指導員 田中 健児さんです。

山谷のドヤ街で制度の隙間を埋める活動を長年されています。山谷は酒と近しい生活場所で断酒には厳しい街です。家族とは疎遠でアルコールと近い生活であるため、トータルサポートが必要な人が多く住んでいます。物事の優先順位が物質で貧困が拡散・拡大・多様化している現代社会においてドヤ街支援をすることは、生活のすべてにおいて支援をすることに繋がります。山谷に集まる人たちは、精神的・社会的・身体的に生きることがうまくない。のしかかる不安から逃れるために依存症になっていく人が少なくない現実があります。治療のネットワークを多く、長く継続していけるようになる必要があります。田中さん自身も薬物・アルコール依存症当事者であったため、仕事を機に薬物・アルコールを断つ決心をしたそうです。ひとの心は変えられないけど、本人が望めば回復の場を提供して情報や選択肢を知らせていけるように取り組んでおられます。うまくいかないことも「前向きにあきらめる」という名言が印象的でした。

  そして、みくるべ病院の岡﨑有恒先生のお話は、ご自身のエピソードを含めてわかりやすいお話でした。

「依存症への正しい対応」という、まさに今私たちが直面している困難な課題についての大変重要なメッセージをいただきました。当事者の回復を促す関わりには『労多き愛』が欠かせない、バランスのとれた関わりがポイントとなること、関わるからには責任を全うする姿勢が必要であること等々、先生ご自身のご家族との関係に係るユーモアをまじえたエピソードを含めて時間の経過を忘れて拝聴させていただきました。

依存症に苦しむ人たちに必要なものはリアルな体験談だとのこと。医者などたいして役には立たないと話していました。家族が一番困るのは、当事者が重症な状態なのに病識がなく、病識がない患者は病院が受け入れてくれないことです。みくるべ病院は治療途中で退院を迫ることなく、プログラムの終了まで診てくれる数少ない病院です。途中で逃げず向き合うことで困難を解決する過程を経験し成長があると。回復には「愛が」必要で、相手の成長を願い、問題と向き合い取り組ませること…回避からの脱却をすることと考えているそうです。

 回復を促す関わりとは、「適切に突き放す・存在としてそばにいる・自助体として共に取り組む・一貫した意志と努力する姿勢を関係者も見せる・愛は自らも成長する過程ととらえる。」悩んでいる家族にとってはできそうで難しいですが、仲間とともに取り組んでいけるとよいと思いました。

Q&Aセッションでは、

横浜ダルク・HOPE湘南ダルクの施設長も加わってくださり、「愛を持って関わっていくにはどうしたらよいか」をテーマに、会場とZoom オンラインのチャットからの質問に応えてくださいました。

 またひとつ、横浜ひまわり家族会の足跡ができたように思います。

ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。

2月24日(日)第4回「薬物依存症者と家族オープンセミナー」を開催しました。

薬物依存症は病気です。〜家族が笑顔を取り戻すために〜をテーマに、 横浜ひまわり家族会のオープンセミナーも第4回になり154名の参加がありました。今回は家族の体験談や依存症本人の体験談、そして茨城県立こころの医療センター前副院長の中村惠先生をお招きし、[薬物依存症とその周辺ー重複障害などー]と題して基調講演をしていただきました。

まずは家族の体験談として、依存症の問題を抱えたパートナーについて話してくださったのは、まりさんです。パートナーの依存症をなんとかしなければと思い、お金の管理や本人の居場所の確認など全てを抱えてしまったこと、そして依存症について勉強していく中で「ほおっておく」ことがやっとできるようになってきたことなどご自身の変化を中心に話されました。

「言葉は少なく示すこと」「ひとりで抱え込まないことが大切、それは本人も家族も」と締めくくってくださいました。

二人目の家族体験談はジュンさんです。薬物の問題に直面したのは、息子さんがまだ高校生の時。ジュンさん自身がその問題を否認してしまい、なかなか回復にのっていかなかったけれど、「手を放す」ことをし始めたら、事態が動き始めたことなどを話してくださいました。退寮し、一人暮らしを初めて3年、順調に回復と言いたいけれどいろんなことが起こっていくとのことです。しかし、本人の生き方と自分の生き方は別、「ゲシュタルトの祈り」をいつも心に浮かべて、自分の回復、本人の回復に向かっていきたいとのことでした。

本人体験談は日本ダルクのスタッフTさんです。なぜ依存症になってしまったのか?考えていくと「自分の問題をすべて母のせいにして生きてきた。厳しい母の下、自分がこうしたいと言えずに反発をしていた。薬物を使ったからこうなったのではなく、薬物以前から抱えていた問題が多かったと感じているとのことです。ダルクのプログラムは、「恨みを感謝に変えていくプログラム」であり続けていかないと元の生き方に戻ってしまうと話されていました。薬物は一人じゃ止められない。止めてから自分の人生をやり直している。この病気のおかげで気付くことがあったと家族に言われたことが心に残っているそうです。

基調講演は中村先生です。精神障害者の自立支援施設を開いたり、茨城県の薬物依存症対策システムを作り、「IARSA」(NPO法人茨城依存症回復支援協会)を立ち上げ、精力的に薬物問題に取り組んでおられます。

基調講演のテーマは「薬物依存症とその周辺~重複障害など~」でした。

「薬」を止めたら生きるのがつらい人。外来患者の半数以上は「薬」以外の問題を抱えており、そちらに焦点を当てていかなければ「薬」も止まらない場合が多いとのことです。職業や生き方を変えればなんとかなる人もいます。回復施設などのプログラムを受け続けても効果が見られず沈殿してしまう人も多くいます。

「時代に合わないという問題をベースに持つ薬物依存症者」は薬を止めると問題が周囲にばれてしまうなど、薬を止めても働けないことが多く、ひきこもりに通じる問題となってしまうことがあるそうです。

「そもそも、ひきこもりはそんなに悪いのか?」出発点のこの状態を大切にしてあげることが、死なないための選択であり、何かが生まれるとしたら、そこからしかないとのことです。専門家は大人の自閉症にまで手が回らないことが多いが、日常生活から見守っていき、少人数のグループのプログラムを受けることで、他者の様子がわかり、家族とも少しはうまくやっていけることがあると言います。

自分の問題の何がわかればいいのか?本人がどう生きれば楽しく幸せなのか、個別に寄り添い支援していくことが大切です。

回復施設でどんな人が沈殿していくのかというと、薬物使用による後遺症や慢性の中毒、統合失調症などの重複障害を持っている、時代に合わないベースを持っている人など、いろいろなケースがあります。「IARSA」は回復施設的な要素と、精神障害者の施設的な要素、社会復帰支援の要素があるとのことです。どんな人が、どう支援をすれば、いかように生きていけるか、わかっていく場所であり、そこで何ができるかは、メンバーが教えてくれて、支援自体も進歩してく場です。もっと多く「IARSA」のような施設が出来るようにしていきたいとのことでした。

家族としても重複障害の問題に向き合うことも多いので、是非応援していきたいと思いました。

Q&Aセッションでは会場からの質問もあり、依存症本人や施設スタッフ、中村先生からアドバイスをいただきました。

1月28日 第3回「薬物依存症と家族のオープンセミナー」薬物依存症は病気です~家族が笑顔を取り戻すために~

横浜ラポールシアターで、神奈川県立精神医療センターの小林桜児先生をお招きして、オープンセミナーを開催いたしました。200名ほどの参加がありました。

家族や薬物依存症本人の体験談や、Q&Aセッションなど盛りだくさんの内容でした。家族の体験談では、MKさんの胸に迫る混乱時期の状況が語られました。世間体の壁を超えられなかったことや、精神論・家族だけでは距離が取れず追い込まれていったことなど、この問題に直面した家族であれば、避けられなかった道だったと思いました。生きてこその回復・・・まさに、そんな体験談でした。

当事者である「NPO法人ハッチ」の細川さんは立場上、報道の嵐に巻き込まれ家族を傷つけてしまったことを語られました。会場に息子さんを連れてこられ、これから自分が歩んでいく道を示しておられました。そして回復に繋げる窓口を創りたいと活動を懸命にされています。応援していきたいですね。そして横浜ダルク・ケア・センターのロンさん。20年以上に渡り、薬物を止められずようやくたどり着いた横浜での回復の道でした。ご両親とは繋がることはできなくても、きっと心のどこかでは気にかけていることと思います。遠くから応援しています、私たち家族会も。

小林桜児先生の基調講演は、さらに混乱している家族がどうすればよいのかを具体的に示してくださいました。「病気としての依存症」の解説はもちろんのこと、脳の変容だけで起こるものではないことや、成育歴など易しくわかりやすい講義内容でした。「依存症行動は心の痛みに対する孤独な対処」 誰かと繋がり心の内をさらけ出せるようになることが依存症当事者にも、巻き込まれている家族にも一番大切なことです。

生き伸びること、そして繋がること。そんなメッセージを受け取りました。

Q&Aセッションでは、会場からの質問や、事前に受けていた質問に小林先生や家族や当事者、医療関係者などで知恵を合わせて答えてくださいました。答えはひとつではないけれど、なにか一歩前に進む勇気がわいてきたのではないでしょうか。

次回のオープンセミナーも実りあるものにしていきたいと思います。

1月28日(土)第2回「薬物依存症者と家族オープンセミナー」が開催されました。

神奈川県民ホールの大会議室には続々と多方面の方が集まってくださり、220名を超える参加となりました。

「横浜ひまわり家族会」のメンバー2名の体験談、そして「横浜ダルク」のメンバーの体験談が語られました。

家族は薬物にはまって壊れていく当事者に困惑し、振り回され家族自体も崩壊していくのをどうにも出来ずにいました。「横浜ダルク」「横浜ひまわり家族会」に出会い、家族が自分を取り戻していくなかで依存症者の回復にも道が出来ていきました。

依存症当事者のお話もとても印象的でした。病気で実家に帰っているときにどんどん世話を焼く家族に対して「家族は病気だ」と思ったと話していました。そして多くの方の心には「やりたくないことをやっていたら、やりたいことが出来るようになっていた。」ということでした。ジュンくん、ありがとうございました。

基調講演は神奈川県立精神医療センターの小林桜児先生の「薬物依存症の理解と対応」でした。軽快な語り口で聴いている人たちをどんどん惹きつけ「依存症とは」こういうことなんだと理解の糸口をつかめました。小林先生のさびしい思いをした生い立ちなども話されていて、依存症者の心の痛みを理解しようと心を砕かれていらっしゃることが伝わってきました。脳ではなく、心・感情に焦点を当てた理解と回復への支援をどうやっていけばいいのかを教えていただきました。「期待値を下げる」という言葉が多くの参加者の心に残った言葉でした。

Q&Aセッションには「横浜ダルク」「湘南ダルク」の代表と精神医療センターのPSW大曾根氏も参加していただき、会場からの質問にそれぞれの立場からお答えする活気ある場となりました。「どうにもできない」ことを当事者も家族も認めることが回復への第一歩、「無力」って偉大だと思いました。

たくさんの方に支えていただいて今回のオープンセミナーも成功しました。

今度は7月にあります。ぜひ会場でお会いしましょう。

8月27日 第1回「薬物依存症者と家族オープンセミナー」

主催:横浜ひまわり家族会/共催:特定非営利活動法人 横浜ダルク・ケア・センター
後  援:神奈川県精神保健福祉センター ・横浜市こころの健康相談センター ・横浜市社会福祉協議会障害者支援センター・横浜市障害者社会参加推進センター・横浜保護観察所
今日は「横浜ひまわり家族会」の初めてのオープンセミナーを開催しました。
予想をはるかに超える多くの方々に参加していただき、実りのある一日となりました。
参加してくださった方々の中には、家族会のメンバーはもちろん、他の家族会で依存症を学んでいる仲間や、依存症の当事者、そして支援の立場の方などでした。多くの方の支えのある中で、開催できたことに感謝でいっぱいです。
基調講演は埼玉県立精神医療センター 副院長 成瀬暢也先生の「依存症の正しい理解と回復について」でした。
成瀬先生のお人柄あふれる、楽しい雰囲気の中、「依存症」とはどういう病気なのか、そして家族はどうすればよいのか?を、お話いただきました。
「薬物依存症の特徴」として大きなものは、
*家族を巻き込んでいく病気である。
*根底に対人関係障害が存在する病気である。
ということが印象的でした。
「依存症者」は健康な人の中で回復していきます。
「健康な支援者」とは、患者に対して陰性感情を持たずに敬意と親しみを持てる人です。患者に共感出来る人です。
私たち家族は「健康な支援者」になれるように回復していく必要があります。
回復していくには、私たちにも仲間が必要です。
家族の体験談はお二人の仲間に話していただきました。自分たちも苦しい中で学び、変化し、回復の道を歩んでいく中で、当事者を治療に繋げていく様子が、痛いほど分かりました。年月が経っていてもその時の苦しみが想起されこみ上げるものがありました。ありがとうございました。
本人体験談は川崎ダルクのもんきちさんでした。治療に繋がった時や、回復途中のお話をしてくださいました。本人も苦しみの中で生きているのだと、改めて感じました。もんきちさん、ありがとうございました。
最後はQ&Aセッションでした。
横浜ダルクのセナさん、クリスさん、前述の成瀬先生、原宿カウンセリングセンターの臨床心理士 高橋郁絵さん、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センターの近藤あゆみ先生の登場で、会場からの質問にお答えしました。
現状では薬物依存症を診てもらえる機関は非常に少なく行き場がないなど、課題が上げられました。どこでも診てもらえる社会を作るために一緒に声をあげていきましょう。
パワーあふれる皆さんから、また新たなエネルギーをもらいました。明日からも自分らしく生きていこうという気持ちになりました。