令和2年 9月26日(土)・10月24日(土)「秋の市民公開講座」

  9月10月の「秋の市民公開講座」は、2回連続講座で国立精神・神経医療研究センター・精神保健研究所薬物依存研究部診断治療開発研究室長の近藤あゆみ先生をお招きして「薬物依存症者をもつ家族を対象とした対象とした心理教育プログラム」についてお話いただきました。会場に参加できない方へ講演会場からライブ配信しました。

 まずは「薬物依存症」とは、どんなものなのかという基本的なお話から始まりました。そして依存症からの回復について必要なものとして、「①薬物をやめること。②安全な生活スタイルを作ること。③薬物なしで幸せに生活できるための力を身につけること。」ですが、これには非常に時間がかかることや、仲間が必要であることを知っておくことが大事ですね。私たち家族も依存症者の混乱に巻き込まれ、同じように混乱し病的な状態に陥ります。家族がどうすればよいのか、まさしくそこが今回の研修の内容です。

 家族の薬物依存の問題が起こったときに、私たち家族も巻き込まれ眠れなくなったり食事ができなくなったりと、追い込まれていきます。まずは、落ち着きを取り戻すことが大切です。一日の中で安定する時間を少しでも持つようになること。混乱状態でそんなことを言われても、難しいのは家族の皆さんは痛いほどわかっています。家族も仲間と知り合い、助けを求められると変化が起こってきます。

 本人のみの治療ではうまくいかない場合が多いこと、家族のみの支援でもうまくいかない。両方への治療や支援が必要で、同時展開で回復していけるのが理想的な形になっていくそうです。

 家族が目指す依存症者本人との関係性は、「心理的境界線の明確化」が一番大切です。自分の領域、他人の領域を明確にすること。自分が何に責任を持つべきか、依存症の問題に巻き込まれると何もかもが家族の責任のように感じ、解決しなければいけないと必死になってしまいます。境界線を意識することは起こっている事態が誰の問題でだれが解決すべきなのかを考えることができるようになります。

そして「イネーブリングをやめる」こと、これもどの家族も知らず知らずに行ってきている行動だと思います。周囲の人が本人を助けようとして行うことが結果的に依存症を助長してしまう言動のことです。家族は依存症者を助けたいと思うことは自然なことです。しかし、助長していたことを知ることで踏みとどまって考えることができるのではないでしょうか。境界線を意識することでサポートの方法は変化してきます。サポートは本人の気持ちも大切にしながら、家族の思いだけでやらないことが変化を起こす大きなターニングポイントになるようです。さらに家族が目指す本人との関係性として、本人の自律的な考え方を強化することです。薬物使用につながる行動は答えないなどし、薬物なしでやっていこうとする姿勢を応援することです。最後は本人を治療の場につなげること。これは家族が一番悩んで苦しんでいることだと思います。家族が本人をとても愛していて、治療や回復のために協力を惜しまないことをしっかり伝えることが大切です。

 近藤先生は長年、家族支援をされていて具体的な言葉で表現することなどをお話の中に盛り込んで、楽しく明るく伝えてくださいます。会場の仲間の質問にも丁寧に答えてくださいました。「良い回復支援者に必要なこと」として「落ち着き・自律・信頼・尊重・希望」が大切だと締めくくられました。