令和2年11月28日(土)家族研修会

講師:横浜保護観察所 統括保護観察官 仲野智之氏

 今回は、横浜保護観察所 統括保護観察官の仲野智之氏をお招きして、「保護観察における薬物事犯者の処遇について」をテーマにお話をいただきました。

 まずは「更生保護の役割」とは、犯罪を犯した者及び非行のある少年に対し、社会内において適切な処遇を行うことにより、再び犯罪をすることを防ぎ、またはその非行をなくし、これらの者が善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助けるとともに(中略)犯罪予防の活動の促進等を行い、もって、社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進することを目的とするものです。保護観察は教育や福祉・保健や医療など多方面の関係者と連携し社会復帰を目指し、再犯防止を目的としています。特に生活環境の調整は、社会にスムーズにつないでいくために必要不可欠となるものです。釈放後の住居や仕事先の調査を行うなどして立ち直りを支える環境を整えていきます。引受人家族会は年に2回開催され、家族がどうしていくべきかを学ぶ機会を設けています。その場に横浜ひまわり家族会からメッセージ活動のために参加しています。引受人会でひまわり家族会のことを知り、家族会につながった方もいらっしゃいます。

 保護観察は、主に保護司によって行われています。近年、対象者の抱える問題が複雑多様化しており、また家族関係の希薄さや住宅環境の変化による生活実態の把握の困難さがあるようです。生活環境の調整や、犯罪予防活動なども保護司によって行われていますが、家族関係の希薄さや地域社会の連帯感の希薄さなどが浮き彫りとなり、犯罪抑制の機能が落ちていることが懸念されています。薬事犯罪は特に再犯率が高く、病気としての治療が不可欠となっています。執行猶予期間に必ず保護観察に付され、再犯防止のプログラムを受けたり、尿検査を受けたりすることが義務となっています。再犯防止プログラムをしっかり受けていると再犯率が低くなる傾向にあると検証結果が出されています。

 保護観察官や保護司による指導には、定期的に面接し悩みや課題を話し合える関係作りを大切にしているということです。薬事犯罪者は自分の悩みを相談する経験がない場合が多く、人との信頼関係を結ぶのが難しい傾向にあります。他者から大切に思われる経験こそが自分を大切にできる気持ちを持てるようになります。必要な支援につながり、生きづらさが和らいでいく可能性が出てきます。私たち家族の安定も、相談できる誰かを作ることですね。本人にも家族にも大切なプロセスです。

 薬物再乱防止のプログラムは依存症専門外来などでも適用されているプログラムです。ダルクのスタッフがファシリテーターやアドバイザーとして参加する場合もあります。保護観察期間が長い人は繰り返しプログラムを受けているそうです。そのプログラムの後に、自助グループにつながることが回復への大きなステップになりますが、実際のところ難しいようです。

 家族ができること、それはどの研修会にも共通することですが、まずは家族が回復することです。家族も自助グループで仲間を見つけ、助けを求められることが大きな安心につながります。そして迷いはあるでしょうが、家族が相談することによって本人の回復のチャンスが生まれます。本人も家族も抱え込まずに相談するスキルを身に着けることが非常に大切なステップです。

講義のあとは、個別相談にものっていただきました。