映画「まっ白の闇」上映会 トークセッション/内谷正文監督・渡邉厚司先生
市民講座の2回目、薬物依存症と家族をテーマにした映画「まっ白の闇」を上映しました。その映画の監督であり俳優、自らも薬物使用、そして実弟の薬物依存症に向き合ってきたという内谷氏と、前回に引き続きマロニエ医療福祉専門学校医療学部学科長の渡邊先生に来ていただきました。 映画「まっ白の闇」は兄の勧めで薬物と出会い、知らず知らずのうちに薬物依存症になっていった弟と家族のストーリーです。どんどん薬物にのめりこんでいく主人公。周りの人を遠ざけて孤独になっていく様子。どうにもならない感情の爆発、家族との葛藤、犯人捜し、否認、壊れていく当事者と家族関係。薬物依存症に向き合ってきた家族なら、思い当たる場面があったと思います。家族会につながることで何かが変化する過程。本人に対してできることは何もないと認められるまでの葛藤。「無力」を自覚するときの覚悟。いろいろな思いが胸をよぎりました。 「回復」があることを信じられるまでの心の揺れを仲間に助けてもらいながら、ゆっくりと変化していく家族。そして本人にも居場所があり、仲間とともに歩き回復していける。山あり谷ありの回復への道、順風満帆ではないけれど待つしかないと腹をくくって、たくさんの家族が前に進もうとしています。 「薬物依存症」を社会に伝えていくために、映画を観て「何かを感じてもらいたい」という内谷監督の思いを横浜ひまわり家族会として発信する機会となりました。 後半は内谷監督と渡辺先生のトークセッションでした。 内谷監督は、弟さんに対して「クスリに巻き込んでごめん。助けたかった。でも方法も分からずただ薬物の使用を認めさせたいだけだった。」と話されました。「自分が苦しいのが嫌だった。弟よりも自分が大事だった。」「弟と自分は別だと分けて考えることを学んだ。」「家族会のミーティングは自分をさらけ出し、楽になれる場所。話すことで楽になれる。仲間ができる。」など、大切なメッセージを込めて映画を撮ったとも話されていました。 本人の回復と家族の回復は呼応していくもので家族も自分自身と向き合い始めると本人の様子も変わっていきます。 参加された保護司の方は、ご自分がかかわっている薬物事案の方の保護者にも観てほしいとおっしゃっていました。 弟さんは「真面目に生きることがどういうことか学んでこなかった。正直がどんな意味かわからなかった。それでも自分で考えて見つけていった。」といいます。 渡邊先生は、私たち日本の文化は掟にとらわれて、「しんどい、つらい」と言ってはいけない呪いをかけられてきたと表現されました。負の感情が内面化して話す経験が欠落してしまうとも。負の感情をはぐくむ場所があることが生きづらさの軽減につながるのではないでしょうか。 内谷監督は、「戦うより受け入れること。」が大切だとも話されていました。