講師:特定非営利活動法人 群馬ダルク 施設長 福島 ショーン氏
今回も群馬ダルクから福島ショーン氏をお招きしての研修会でした。「関係を取り戻すコツ」と題してのお話でした。
ショーン氏のお母さんは、未だに自分のことを子供扱いするのだそうです。今はショーン氏自身のベースがしっかり安定しているから崩れないけれど、会うと怖いと思うこともあるようです。
薬物にどっぷりはまっている時期でもクスリの効果が切れてくると「自分は何をやっているんだろう。」と考えていたそうです。薬物をやっていると、止めたい気持ちと、止められない気持ちを抱えて「ジレンマに陥ります。そのうえ家族からも攻撃されることが多く、つらい気持ちに拍車がかかります。
そういったときの家族の関係をこじらせないためのコツを紹介してくださいました。
本人にやってはいけないこと
① 上から見る。
これは説教などが当たります。子供扱いしている状況です。
「まだそんなことしてるのか。」「あんた馬鹿じゃないの?」「そんな子、産んだ覚えはない。」などと、言った心当たりのある家族は多いのではないですか?自立を望んでいるはずなのに、子供扱いをしてしまう。そして裁いたり、批判したりする。決めつける。説教、比較などがこれにあたります。
大人として接する、その方が本人は頑張れます。
② この問題はいつか去ると思う。
自分たちが今を我慢すれば終わると思っていませんか?大人になれば治ると思っていませんか?これは進行性の病気です。クスリを使っていなくても進行しています。
③ 強制的にやめさせようとする。
「好きに使って。」と言われた方がまだいいと感じるそうです。親の回復が強いと本人は親を責めにくくなります。親は本人にコントロールされにくい状態になります。逆に弱っていると責められやすくなります。本人の行動を強制しないことが大切です。
④ イネイブリング。
尻ぬぐいをしない。(後始末、解決)を親がしないことです。生活習慣で依存症になっていく場合もあります。本来子どもがとるべき責任を奪ってしまいます。それは大人として生きるスキルを奪うことになります。
⑤ あきらめる。
家族会に来なくなる人も多いですが、唯一の話せる場、気づきの場を失うことになります。子供のことを根性のない子、弱い子と思いがちですが、どん底を何度も経験しても、生きようとしていることを忘れないでほしい。意志は強い、生きる力を持とうとしています。どこで何が変わるかわかりません。「うちの子だけは違う。」と考えないでください。病気の力が強すぎてクスリには負けてしまいますが、少しずつ手放せればいいと考えましょう。戻らないことが大事です。失敗したら、また話してもう一度始めればいいことです。
怖さはあります。それは死や世間などです。
そして、やってほしいこと
① 常に本人の病気のことや自分の共依存のことを勉強し続ける。
家族の病気と言われる依存症。問題のあるメンバーを中心にして合わせて生活をしてしまいます。本人だけが回復しても家族が勉強しないと元に戻ってしまいます。共にいない方がいい場合もあります。自分たちの問題を学ぶことが重要です。再発する病と認識していきましょう。
② おかしいと思ったらおかしいと言うようにする。
問題と感じたらやれることをやる。後で問題にならなかったらそれでよい。自分の勘を信じることです。
③ 手放そう。
距離を置くことは大切です。期待と理想を手放すことが、お互いが楽になれる大きな要因です。親は子に対して期待と理想を大きく持ちがちです。そしてがっかりする。がっかりされた子供はつらいです。コントロールできないものは手放すこと。口論や説教をしても何も変わらないです。
その気持ちを家族会で誰かに伝えましょう。問題は解決しないけれど話すことは手放すことになります。
④ 境界線を引こう。
自分が違和感を感じていながら許すのは、境界線がうまく引けていないということです。薄かったり、なかったり。暴言やお金をせびられても許してしまう。これだけはダメだというものがなく、相手が中心になっています。自分の芯を作りましょう。超えられてもまた線を引きましょう。
⑤ セルフケアを練習してください。
長年、依存症者に集中しているから自分のことを忘れています。意識して自分のケアをするようにしましょう。これまでダメージも大きかったはずなので、自分のために「何があっても○○をする。」と決めて無理にでもやってください。だんだん楽になっていくはずです。
⑥ 褒める。
本人も周りの家族も気にかけることが大切です。
兄弟姉妹のことが質問に上がりました。兄弟もダメージが大きいはずです。本来の家族内の役割を超えて抱えていることも多く、心が傷んでいます。依存症者に目が向いてばかりで愛情を向けられないことも多いです。うつ病になったり依存症になったりするケースもあります。まずは親が回復し元気になって本来の役割を果たせることが大切ではないでしょうか。
距離感を保つのは難しい場合もあります。心の準備も必要ですが慌てないで、できることを少しづつ行い、距離を保っていけると良いですね。
最後にショーン氏は、「希望は持っていてほしい。」とおっしゃっていました。