2月24日(日)第4回「薬物依存症者と家族オープンセミナー」を開催しました。

薬物依存症は病気です。〜家族が笑顔を取り戻すために〜をテーマに、 横浜ひまわり家族会のオープンセミナーも第4回になり154名の参加がありました。今回は家族の体験談や依存症本人の体験談、そして茨城県立こころの医療センター前副院長の中村惠先生をお招きし、[薬物依存症とその周辺ー重複障害などー]と題して基調講演をしていただきました。

まずは家族の体験談として、依存症の問題を抱えたパートナーについて話してくださったのは、まりさんです。パートナーの依存症をなんとかしなければと思い、お金の管理や本人の居場所の確認など全てを抱えてしまったこと、そして依存症について勉強していく中で「ほおっておく」ことがやっとできるようになってきたことなどご自身の変化を中心に話されました。

「言葉は少なく示すこと」「ひとりで抱え込まないことが大切、それは本人も家族も」と締めくくってくださいました。

二人目の家族体験談はジュンさんです。薬物の問題に直面したのは、息子さんがまだ高校生の時。ジュンさん自身がその問題を否認してしまい、なかなか回復にのっていかなかったけれど、「手を放す」ことをし始めたら、事態が動き始めたことなどを話してくださいました。退寮し、一人暮らしを初めて3年、順調に回復と言いたいけれどいろんなことが起こっていくとのことです。しかし、本人の生き方と自分の生き方は別、「ゲシュタルトの祈り」をいつも心に浮かべて、自分の回復、本人の回復に向かっていきたいとのことでした。

本人体験談は日本ダルクのスタッフTさんです。なぜ依存症になってしまったのか?考えていくと「自分の問題をすべて母のせいにして生きてきた。厳しい母の下、自分がこうしたいと言えずに反発をしていた。薬物を使ったからこうなったのではなく、薬物以前から抱えていた問題が多かったと感じているとのことです。ダルクのプログラムは、「恨みを感謝に変えていくプログラム」であり続けていかないと元の生き方に戻ってしまうと話されていました。薬物は一人じゃ止められない。止めてから自分の人生をやり直している。この病気のおかげで気付くことがあったと家族に言われたことが心に残っているそうです。

基調講演は中村先生です。精神障害者の自立支援施設を開いたり、茨城県の薬物依存症対策システムを作り、「IARSA」(NPO法人茨城依存症回復支援協会)を立ち上げ、精力的に薬物問題に取り組んでおられます。

基調講演のテーマは「薬物依存症とその周辺~重複障害など~」でした。

「薬」を止めたら生きるのがつらい人。外来患者の半数以上は「薬」以外の問題を抱えており、そちらに焦点を当てていかなければ「薬」も止まらない場合が多いとのことです。職業や生き方を変えればなんとかなる人もいます。回復施設などのプログラムを受け続けても効果が見られず沈殿してしまう人も多くいます。

「時代に合わないという問題をベースに持つ薬物依存症者」は薬を止めると問題が周囲にばれてしまうなど、薬を止めても働けないことが多く、ひきこもりに通じる問題となってしまうことがあるそうです。

「そもそも、ひきこもりはそんなに悪いのか?」出発点のこの状態を大切にしてあげることが、死なないための選択であり、何かが生まれるとしたら、そこからしかないとのことです。専門家は大人の自閉症にまで手が回らないことが多いが、日常生活から見守っていき、少人数のグループのプログラムを受けることで、他者の様子がわかり、家族とも少しはうまくやっていけることがあると言います。

自分の問題の何がわかればいいのか?本人がどう生きれば楽しく幸せなのか、個別に寄り添い支援していくことが大切です。

回復施設でどんな人が沈殿していくのかというと、薬物使用による後遺症や慢性の中毒、統合失調症などの重複障害を持っている、時代に合わないベースを持っている人など、いろいろなケースがあります。「IARSA」は回復施設的な要素と、精神障害者の施設的な要素、社会復帰支援の要素があるとのことです。どんな人が、どう支援をすれば、いかように生きていけるか、わかっていく場所であり、そこで何ができるかは、メンバーが教えてくれて、支援自体も進歩してく場です。もっと多く「IARSA」のような施設が出来るようにしていきたいとのことでした。

家族としても重複障害の問題に向き合うことも多いので、是非応援していきたいと思いました。

Q&Aセッションでは会場からの質問もあり、依存症本人や施設スタッフ、中村先生からアドバイスをいただきました。

1月26日 家族研修会 

今回の研修会は、神奈川県立精神医療センターのケースワーカー井上恭子先生をお招きしました。井上先生は長年、薬物依存症に関わってこられており、家族支援のスペシャリストといっても過言ではないような方です。横浜ひまわり家族会としても何年にもわたり研修会をしていただいています。

研修会のスタートは、ウォーミングアップとして十数名の家族会のメンバーが前に出て、自分の緊張度を並び順で表現したり、困り感を表現したりしました。メンバーの気持ちがほぐれたところで、軽快な井上氏の話がスタートしました。

まずは精神医療センターでのプログラムの紹介をしてくださいました。薬物依存症になってしまう人の多くは「過剰適応」をしてしまう人だと言います。

「断れない」そもそも「断るという感情が分からない」・・・そんな自分の本当の感情に気づいていくことが大切で、そのためのプログラムをグループで行っています。いろんな事に自分を合わせていくために「薬」が必要だったということです。

医者は「患者の病気」を診ます。心理士は心の問題・作業療法士は行動面・ソーシャルワーカーは色々な社会資源につなぐためのアセスメント・経済状況や収入・生活のキーパーソンや家族関係などを担当するそうです。問題の解決には、家族への支援も重要になります。

私たち家族は、一番に困るのは本人を治療に繋げること、そしてその後の生活をどう支援していくかということです。福祉サービスの利用や就労支援など、家族だけでは出来ないことが沢山あります。そんな時には家族が気軽に相談できる場所を知っておくことも大切です。

研修会当日は、参加者から質問されたことにも快く応えていただきました。家族として、本人の回復を考え、つらい選択をせざるをえないことも多々あります。後悔することもあるかもしれないけれど、その時のベストの選択をしていくしかありません。家族の力はすごく大事です。

決めたら実行する強さも持たないといけません。

そんな時もひとりで悩まず家族会の仲間と手を取り合って進んでいくことが大切だと教わりました。

11月24日(土)家族研修会

今回の研修会は、横浜保護観察所の統括保護観察官の林 京子さんをお招きして、「一部執行猶予と薬物事犯者の処遇について」というテーマでした。

まず、「更生保護」とは何かということについてお話がありました。「犯罪を犯した者及び非行のある少年に対し、社会内において適切な処遇を行うことにより、再び犯罪をすることを防ぎ、またその非行をなくし、これらの者が善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助けるとともに(中略)犯罪予防の活動公共の福祉を増進することを目的とする。」ということです。わかりやすく表現すると、犯罪を犯してしまった人も地域社会で生きていけるようにするということでしょうか。

そして「保護観察」とは、犯罪を犯したひとや非行のある少年が健全な社会の一員として更生するように実社会の中で保護観察官と保護司が協働して指導・監督・補導援護を行う制度です。保護観察を言い渡された人は、ボランティアである保護司と定期的に面談をし、地域での生活を支えてもらうと表現すると理解しやすいでしょうか。

「刑の一部執行猶予制度」により、保護観察に付されている期間が長くなり、社会内処遇の時間が確保されるようになりました。保護観察の間に、薬物再犯防止の教育プログラムを受けることが出来ます。薬物事犯者は再犯率が高く、刑を執行されるだけでは、抑止しにはならないことはもはや、周知の事実です。保護観察官と保護司による指導では、直接会い、本人の状況を知ることや約束ごとを守るように働きかけ、専門的なプログラムを実施しています。

薬物に問題のある人は、自尊感情が低い人が多いように感じるとのことです。保護観察を通じて、話しあう事ができる関係作りや、問題を相談して解決するという体験を積むことや、自分が大切に思われる経験をし、自尊感情が持てるようになること、必要な支援に繋がり続け、生きづらさを共有して問題解決に関する知恵を習得できるようになることが目標だそうです。NAやダルクなどにつながり、仲間とともにいることで生きづらさが少しでも楽になれるといいですね。薬物依存から脱するためには当事者に会い、回復していくその姿を感じることが大きな希望になると思います。保護観察が終わってからも、居場所があり相談相手がいることはその後の人生に大きなプラスになります。

薬物再乱用防止プログラムでは、簡易薬物検出検査と教育課程がセットで実施されます。コアプログラムとステップアッププログラムがあり、特性ン合わせた内容となっています。保護観察終了まで受講することになります。

家族の理解も大きな支援になるので、家族自身も支援機関に繋がることは大切です。

家族も「依存症」について勉強しなければいけませんが、保護観察所では引受人会で学習する機会があるとのことです。

保護観察の中で大きな役割を果たす保護司ですが、「依存症」を学ぶ機会があまりないということを、横浜ひまわり家族会のフォーラムなどで感想があがります。是非、学習の機会を作っていただきたいと思います。

そして保護観察の後、どう生きていくのか。福祉的な援助が必要になります。福祉や厚生労働省を巻き込んで社会のシステムをしっかり作ってほしいとの熱い思いと要望がでて終了となりました。

2018「秋の公開講座」第2回目11月4日(日)「家族が元気になる“動機づけ面接”」

講師:原宿カウンセリングセンタ〜臨床心理士・精神保健福祉士

高橋郁絵先生

テーマ 「共感ってどうするの?」

「困った時の一言は」

まず、「是認」とは何か?「上からの目線ではなく、同じ目線で相手の強みや努力などを認め、言葉にして伝えること」が大切です。また、1回目の研修会でも学んだように、本人は家族が正したくなることをいろいろ行います。その時に家族がやってしまいがちなのは「間違い指摘反射」です。その心理の裏側には、家族が感じる不安だということです。「間違い指摘反射」の抑制には、「本人が本当に言いたいことは心の奥にある」と言う事を知っているだけでも反応しないでいられるようです。本人と話す中で、すぐに言いたくなる言葉・例として「私だって知ってるよ」や「あなたのことを考えているからこそ心配なのよ」などはNGワードです。相手の気持ちを想像して伝えてみる、すなわち共感の言葉をかけることで、関係性は大きく変化します。声の調子や語尾を少し落として話すなど、練習をすることもできることです。今回はグループになって「聞き返し」の練習をやってみました。語尾を下げ、言いきらないことで、押しつけ感が弱まり、話が続いて行きます。「言い方ひとつで行動の未来が変わる」これは私たち家族にとって、非常に大きな変化を呼び込むものではないでしょうか。

本人の話を聴くためには、話のどこに注目していくのかも大事なスキルになります。相手が変化したい気持ちをうまくくみ取って話すことが大切になります。本人も気づいてない気持ちを引き出すきっかけになるかも知れません。

例えば、「親のせいで人生が台無しになった。俺の人生を返してくれよ。そうしたら酒だってかんけいなくなるだろ!とりあえず金をくれ!」に対して、怒らず落ち着いて「本当はお酒じゃなくてもっと違う人生を歩きたかったんだよね。」などかなりハードルが高いですが、言えるといいですね。

話を聞きながら共感していくことで本人の落ち着きを引き出せる可能性もあります。ただ家族はいろんな問題に巻き込まれてきたので、まずは自分が落ち着けるようにすることが大切ですね。

研修会では、「言われて困る一言」への対応や共感の言葉をグループで考えました。例えば、「俺なんかいなくなった方がいいんだろう。」と言われたとします。みなさんはどう答えますか?「そんなこと思ってないよ。」でしょうか?それとも売り言葉に買い言葉で「そうだよ。あんたなんかいなくていいよ・」と言ってしまうでしょうか?難しいところですが、裏にある気持ちを汲むと、「にくまれていると感じてるんだね。」とか、立場がなくて苦しんだよね。」などが言えるといいですね。

家族が本人に言いたいことがあっても、本人に聞きいれる心のスペースがなければ言っても本人の気持ちには入らないということも学びました。そのスペースを作るための作業が「共感」していくことだそうです。

家族や当事者の体験談も、大切な言葉が散りばめられていて心に響くものでした。

日々の生活の中でコミュニケーションスキルを身につけていけるようにしたいですね。仲間とともに歩く・・・その第一歩でしょうか。

2018「秋の公開講座」第1回目10月7日(日)「家族が元気になる“動機づけ面接”」

テーマ「やりがちな失敗とアドバイスの仕方」

講師:原宿カウンセリングセンター 臨床心理士・精神保健福祉士 高橋郁絵先生

今日は、2018「秋の公開講座」第1回目を開催いたしました。
原宿カウンセリングセンターのカウンセラーで臨床心理士・精神保健福祉士である高橋郁絵先生をお招きして、「家族が元気になる“動機づけ面接”MIFTのワークショップ」第1回の学習会をしました。
「動機づけ面接」とは、説得するのではなく、本人の内側にある行動を変えたい気持ちを本人に共感しながら引き出していく面接の仕方。例えば、空っぽのグラスに他者から動機なるものを注がれるのではなく、深い井戸から本人の本当の気持ち・動機をくみ上げていくイメージを持つとわかりやすいでしょうか。
そのために、援助者や家族はどういう会話の方法を身に着けていくとよいのかが今日の勉強の中心でした。

まず、一番に注意をしなければならないのは、「間違い指摘反射」だそうです。この原因は正しいことを教えないと失敗するかも・知らないまま不幸になるかもと思ってしまうことや、私が正しいことを知っていることを示さなければいけないと思っていることや、ここで相手の言うなりになったら大変なことになるなど、自分の中にある価値観です。

自分の不安を自分で抱えられるようになると相手の気持ちを想像できるようになります。そうでないときは自分が安心できる言葉を相手に言わせたくなってしまいます。自分で自分の不安を抱えられるようになるためには、トレーニングが必要になります。

トレーニングとして、最悪の状況を想像してみることや、深呼吸などの呼吸法、ストレッチなど気持ちを楽にする方法などがあります。また今日はやっているマインドフルネスなども湧いてきた考えと距離をとるのに役立ちます。
「間違い指摘反射」を抑制するには「不安や怒りと大切なものは表裏一体であることや相手の言葉や行動は気持ちのほんの一部に過ぎず、氷山の一角であることに気づくことも大切になります。

またアドバイスにもお作法があることを学びました。援助者や家族が話すときに聞いてもらえるかを尋ねてみることや、本人の知っていることを聞いてみる・アドバイスをしたら理解や感想を聞いてみるなどです。一方的に押し付けるのではなく、また本人が聞く気持ちになっているかどうかも成果に大きく影響することを学習しました。

みんなでワイワイとワークをしながらの今回の研修会は、自分のコミュニケーションの取り方を見直すよい機会になりました。2回目の研修会もぜひご参加ください。

9月22日(土)家族研修会

講師 : 国立精神・神経医療研究センター・精神保健研究所 薬物依存研究部 診断治療開発研究室長 近藤あゆみ先生

 今回の研修会は、前回に続いて近藤あゆみ先生の「コミュニケーションスキル~話すこと・聴くこと~」というテーマでお話をいただきました。

望ましいコミュニケーションのための5カ条として、

①アイメッセージ」を使う。
②相手に変化を望むときは批判をやめて明るく以来の口調で言う。
③相手の問題や苦労に理解を示す表現をする。
④明るき前向きな感情を表す。
⑤問題が起きた時は部分的に責任を受け入れる。
というものです。

・対立を減らし、お互いの境界線を越えないで話すこと
・想像力を働かせ正しく相手の話を理解すること
・前向きな感情を言葉で表現し伝えること
・喧嘩は100%相手が悪くないことを踏まえて話す努力をしていくことが、関係を悪くしないコミュニケーションです。

私たち家族は依存症に振り回されていて、当事者がまともな判断をしていないと考えがちです。確かに混乱する中で、身勝手に思える言動を変えさせようと必死になってしまいます。しかし、それでうまくいった家族はいないのではないでしょうか?
言いたいことは山ほどあります。
しかし、感情のままにぶつけても何も伝わりません。混乱がひどくなるばかりなのは、どの家族にもあったのではないですか?
混乱している当事者にも本当に理解して欲しい感情があるはずです。対立しないでその思いが聞き出せると関係が変わって行きます。そのためのツールがこのスキルを上げていくことなんだと今回の研修会で学びました。

8月26日(日)第2回「薬物依存症者と家族フォーラム」RECOVERY BRIDGE 「もっと多くの場所で多様な支援を!」をテーマに開催しました。

国立精神・神経医療センターの近藤あゆみ先生を講師にお招きし、基調講演をしていただきました。「長い回復への道のりの中で、家族はどう対応し、自身も回復していくか」というとても大きな課題をわかりやすく、丁寧にお話していただきました。

家族という社会が生まれ、成長し別のボートで人生を歩み始める。そして今度は別のボートに乗ったまま並走して生きていくという家族の旅路をイメージします。依存症という病が家族の中で発症すると、別のボートに乗っていたはずがまた同じボートに乗ってしまい、何がだれの問題で、誰の責任で解決すべきなのか?それらが混乱し、もつれて出口を見失ってしまう・・・依存症がそのように家族をこわしてしまう性質を持ち合わせていることをまず理解することが大事になってきます。

家族は誰かに問題が起こると助けなければいけないという感情を持つのは当たり前ですが、それが依存症という病にとっては、マイナスに働いてしまうという独特の軌跡を辿ってしまいます。病気を理解して、対応を学ぶという作業が必要になります。同じボートに乗ってこんがらがった問題を整理し家族間の境界線を引くことが大切になってきます。家族自身が学び、境界線を意識していくなかで、自分の課題に取り組んでいけると依存症者への理解が変化し関わり方が変わってきます。関係が変わってくるとそこで依存症者本人にも変化がでてくる可能性が生まれてきます。この関わり方の変化が大きなポイントになります。
家族も自分たちだけでは苦しいので仲間が必要です。家族会や、自助グループで仲間を作ることが重要になります。

今回のフォーラムでは、川崎ダルクを卒業したかずやさんの就労に至ったお話もありました。「ダルクのその後」治療に繋がって一時は安心しますが、その後の生活をどうしていくのか、大きな課題です。スリップを繰り返しながらも、就労にこぎつけ、また依存症者であることをカミングアウトしての就労に希望を持つことができた家族も多かったと思います。

そして、ひまわり家族会のタカさんと、ノンさんの体験談も同じ思いをしてきた家族にとって胸の痛む思いとともに希望を感じたお話でした。

さらにトークセッションの前には国立精神・神経医療センターの松本俊彦先生の「もっと多くの場所で多様な支援を!」という話題提供のお話がありました。


依存症治療は貯金ができない治療であり、繋がり続けることが大切です。依存症の治療に取り組んでいる医療機関は少ないので、「これがあればなんとか治療できるツール」としてSMARPPなどを提供してきた取り組みや、各機関で取り組むことによってザルの網目にかかり治療効果をあげられる患者が増えていくことを望んでいるなどのお話をしてくださいました。

トークセッションでは、RECOVERY BRIDGE 「もっと多くの場所で多様な支援を!」テーマに対して近藤あゆみ先生のコーディネーションで、松本俊彦先生、横浜市こころの健康相談センター、横浜保護観察所、川崎ダルク、相模原ダルク、横浜ダルク、横浜ひまわり家族会の代表が、それぞれの機関での活動を話していただき、問題の共有が出来ました。各機関で今できることを有効に生かし、できないことはできる機関につないでいけるよう垣根を越えて繋ぐことが重要であることが確認できました。
会場からの依存症当事者の方からの質問や、家族会のメンバーからの質問も上がり、登壇者と活発な意見交換ができました。
昼には川崎ダルクのエイサーの演舞もあり熱のこもった力強い太鼓が聴け、みなさん元気をもらいました。

どの参加者にも有意義な一日となった事でしょう。
これからも依存症家族の体験を通して社会に発信を続けていきたいと思います。

 

 

7月28日(土)家族研修会

講師:国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部 診断治療開発研究室長近藤あゆみ先生「家族の回復プログラム」シリーズ第1回「薬物依存症と家族」

「薬物依存症」というものが本人や家族にどう影響を与えるのか?依存症は脳がだんだん変化していき、特定の薬物に対して脅迫的に使用したり、コントロールを喪失したりする病気であること。一時的に止めることはできても止め続けることはたいへんだけど、止め続けている人はたくさんいること。優しい語り口で、わかりやすく依存症についてお話くださいました。

本人の回復に必要なものは「薬物を止める」という第一歩・「安全な生活スタイルを作る」こと、「薬物無しで幸せに生活できるためのスキルを身につける」こと。家族は一歩下がって、仲間との関係を見守ることができるように、自分自身も仲間を作って安心できることが本人と同じくらい大切です。

今回、「薬物依存症の重症度」を判断するASIという総合的な評価についてもお話されました。本人の状況が身体や精神面・社会面から判断し数字で評価することによって可視化され、段階を経て再評価することで変化がわかりやすくなるように思いました。家族会のメンバーも実際に混乱していた時期と、回復に繋がった後での評価をしてみました。驚くほど点数が少なくなっており、自分たちの回復も手に取るようにわかったようです。

家族からの話もたくさん引き出していただき、みんなで共有できたことも私たち家族にとっては大きな回復のステップになりました。

6月23日(土)家族研修会

講師:マロニエ医療福祉専門学校の医療学科の渡邉厚司先生

テーマ 「回復と成長(新しい生きかた)を「今日一日」踏み歩むための道具としての~12のステップ~」

いつもの優しい語り口でお話をしていただきました。

私たちが生活をしている社会は産業革命以降、有能で有用なことが優先され、人間としての価値が商品として捉えられるようになりました。そんな社会を生き抜くためには、気分の変容を求めるしかなくなり、それに貢献したものは感覚を麻痺させるアルコールだったということです。依存症をユングは「魂の病」と呼びました。

私たちの生きる社会は、「存在しているだけで素晴らしい」という感覚を持てない意識構造を生み出してきました。「自分を承認できない」ことが、感覚を麻痺させることを必要とし、コントロールを失っていくひとが多くなってしまったということです。

回復していくためには、まず土台である人との関係を創っていくこと、それにはありのままの自分を受け入れることができるように支援していくことが大切です。

負の感情を見ないように棚上げしてもいつかは手元に持ってこなければならない時がきます。その時に負の感情を言葉にできると自分が扱える大きさの問題になるとのことです。自分の心の奥に潜む得体のしれない感情に向き合うことはだれしも恐怖があります。仲間と語ることで自分の中の感情に気づきがあり、それも含めての自分の存在を受け入れていけることが回復への入り口になって行きます。

今回の研修を通して、「考え」が優位の世の中で気持ちや感・相手を変えるのではなく自分の生き方を変えていくということを学びました。

「私が私の一番の理解者」であるために、自分を大切にしていきたいと思います。一日の終わりに、自分にハグを!

4月28日(土)研修会

今年度最初の研修会は、日本ダルク代表の近藤恒夫氏と、日本薬物政策アドボカシーネットワーク ディレクターの古藤吾朗氏を講師としてお招きしました。

近藤さんは、みなさんもよくご存知のダルクの創始者であられます。薬に苦しむ本人を孤独にしない、寄り添うことから始める、そんな場所が出来て回復者が増えていく。そのプラスの連鎖が今のダルクなのだと思います。近藤さんの構想はとても大きく、学校を創りたい・仕事場を創りたい・・・一度、薬物で生活が破たんすると社会的制裁が大きく、回復しても生活が成り立たない現状があります。今回のお話の中で、印象的だったのは、「当事者の失敗に寄り添う」という言葉でした。失敗を責めない、そのままを受け入れるということなんだと思います。

「薬物をやめられない。」と裁判官に正直に言えたことから回復が始まったと、いつかの講演会で聴いたことがあります。家族や近しい人たちは、当事者が「薬を止める」と言ってくれることを望み、右往左往します。でも本当に大切なことは、「薬を止めたくても止められないから、助けてほしい。」と本人が言えることなんです。

そして今回、初めてひまわり家族会に来ていただいた、古藤さん。明るく軽快に今の日本の薬物対策をひも解いてくださいました。聴きなれない言葉ですが、「アドボカシー」とは代弁者ということです。「自己の権利を表明することが困難な障害者や高齢者の代わりに代理人が権利を表明すること。」というと分かりやすいと思います。

日本の薬物対策はなぜ、暗い印象になるのか?薬物が犯罪であり、依存症の概念がまだまだ浸透していないことに起因するように思います。日本では司法の樹に多く水をやり、保健の樹にはあまり水やりをしてこなかった。一定の成果はあったが限界にきている。これからは保健の樹にもっと多くの水やりをするよう働きかけていく。

最近、芸能ニュースで話題になっている方も、アルコールに対しての報道が過熱しています。依存の問題があるとしたら、是非正しい報道をしてほしいと、心より願います。