第11回「薬物依存症者と家族 オープンセミナー」

基調講演:信田さよ子先生
原宿カウンセリングセンター 顧問
日本公認心理師協会 会長

今回のオープンセミナーでは、「依存症と家族〜その対応をめぐって〜」というテーマで信田さよ子先生に講演していただきました。現状での家族の困りごとに焦点を当て、私たち家族にとって、心強くあたたかい、そしてユーモア交えた素敵なお話をたくさんしてくださいました。

<まずは家族の体験談>

◆横浜ひまわり家族会 じゅんこ

12年前にこのひまわり家族会に繋がり、たくさんの仲間の話を聞いたり勉強させていただくなかで、自分自身がこの2〜3年、とても心が軽くなってると感じています。自分に向き合うことを学び、その行動や思考を少しずつ変えていこうとするうちに心が軽くなったと思います。そのきっかけを3つお話します。
 息子が数々の問題を起こし施設につながり、半年経った頃、本人と話す機会かありました。私たち夫婦は、息子に会える喜びでいっぱいでした。久しぶりに見る息子は、少し恥ずかしそうにしていましたが、プログラムに真剣に取り組んでいると聞き、嬉しかったです。ところが施設長が席を外し、私たち家族だけになると、息子は元のきつい顔に戻り、勝手なことを言ってきました。私はその時に、自分は何をやっていたのかと感じました。息子がプログラムに取り組めばいいとたけ思っていた自分に気づきました。私は私のことをしなければという考えが固まった1つ目の出来事です。
さらに1年数ヶ月経ち、息子は施設を卒業しました。施設内にいるときの安堵感が一気に崩れ、不安な気持ちがあふれました。その頃、NAの大きな会場で、一般社会のなかでプログラムを使って生きる話を、依存症本人のお話として聞くことができました。これが、2つ目の私の気づきでした。
 その後息子は社会生活のなかで自立をしていきます。
生きていると私たち家族にもいろんな問題が起きてきます。認知症の母への対応、癌が発覚した父への介護、看取り。これが私の3つ目の大きな気づきとなります。
私は「人にお願いして頼む」「助けてほしいと言う」ということを実践することにより、心穏やかに、両親を見送ることができました。
自分を見失わないこと、焦らず一つずつ解決していく、という方法を、依存症の勉強を通して学び、自分の生活のなかで活かせることができるようになりました。
今私は、自分の人生を楽に過ごし、楽しめていると思います。そして点検も怠らないことが大切です。
そのためには家族会がとても大事な私の居場所です。たくさんの仲間、そしてダルクスタッフさんには感謝しています。これからもよろしくお願いします。

<続いて、当事者体験談>

◆横浜ダルクスタッフ ヤスさん

両親が離婚し、自分にはあまり干渉しない、自由な父親との暮らしのなかで、専門学校に進学しますが、薬が始まりました。しかし何とかうまく使えていました。お金がなくなりギャンブルに手を出して借金を抱えますが、そのときはギャンブルのみの問題と思っていたお母様が返済してくれました。その時の気持ちは、「ありがとう、これでまた薬がかえる。。。」

 その後29歳で薬物での逮捕。母親に対して「お前に何が分かるんだ!」という思いの中、執行猶予で実家(母の元)に戻るようになりました。関係性もコミニュケーションもうまく取れない中、32歳の時薬物で再逮捕されます。
その頃からお母様はひまわり家族会に繋がり勉強をしていきました。ヤスさんに対する言動、行動ぎ変わっていくのを感じたそうです。はじめはそんなことは受け入れられなかったヤスさんですが、仮出所のためだけに通所するということになり、ダルクとつながり始めました。
 気持ちは受け入れられずにいやいや過ごしていましたが、サーフィンに誘われたことをきっかけに、少しずつその場に馴染んでいきました。
ヤスさんは入寮せずに、通所で回復し続け、いまはスタッフとしてたくさんの仲間を助けています。
しかし、いまでも家族内では、感情のもやもやがあるとのことでした。コミニュケーション不足を解消して自分の自信を取り戻し、今後も生活していきたいとおっしゃっていました。

<基調講演>

◆信田さよ子先生

信田先生は病院、保健所のご経験を経て、1995年に原宿カウンセリングセンターを設立し、現在は顧問として多くの相談に乗ってくださっています。また多くの著書もあります。
長年にわたる依存症、暴力などの家族問題にかかわってきた体験から、本人と家族の関係、又、50年もの間様々な理論が取り入れられてきた、家族の対応の仕方について、その返還をお話しくださいました。
かつて依存症は中毒と言われ、とくにアルコールに問題がある夫を持つ奥さんの苦労というものが多く語られる時代でした。

その家族たちは、そのアルコールで起こる問題が「依存症」という「病気」で引き起こされるもので、「病気なら治療できる」と思い、希望を見いだしました。家族にとっては「病気」と名前をつけることに、意味のあることだったのです。
「病気」とすることで、意志の問題という個人の責任をなくし、回復という言葉を使っていくことになります。これは、日本なりの言葉を手探りして作ってきた言葉になります。
又、依存症に関わる様々な方法論が出てきました。
(クラフト、マインドフルネス、動機づけ面接)
2014年頃から現在は、スマホの普及によりスマホで何でもできるようになり、ゲーム、ネット依存、スポーツ賭博の問題が増大し、問題となっています。

また自己治療という視点からトラウマとアディクションとのつながりが注目されてきました。自助グループでの語りを起点に当事者研究とのつながりも注目されています。
ハームリダクション、オープンダイアローグなども、いわれてきていて、全体的に依存症の姿がかわりつつあります。

@アディクションアプローチの先進性

·本人より家族困っている人が対象→家族は本人か困るよりずっと前から困っている
·底をつかせることの問題性→死に直結することがある
ギャンブルの場合は底付きが借金であることが多いので、底付きも有効なこともある。
·ケアの有害性→援助は時として有害になる
·自助グループの力→本人たち主導、医療の限界、専門家の姿勢
@支配と共依存

依存症の中でよく言われる「共依存」は病気ではなく、支配の一つである。ケア(愛情)によって、相手を弱者化することによる支配(無自覚な善意)である

@KGグループ(共依存グループ)

先生が行っているグループで、子供に問題が生じて困っている母親のグループ。もともとは共依存の妻、母親を対象としていたが、今は子どもの問題への介入を目的にしたグループ。週一回、またオンラインもあり

問題のある子供を持つ母親は、
①世間から母親の育て方が悪いと言われ
②周りの親戚から、一族の恥と言われ
③夫から、妻の過保護が原因と言われ孤立無援状態
この母親たちのグループで、先生がファシリテーターとなり、放射線状態の関係性を基本とするグループ。

KGの基本知識

·アイメッセージのコツ。。。(松竹梅)
松。。。プラスの感情(嬉しい、楽しい、ホッとした)
竹。。。マイナスの感情(悲しい、不安だ、辛い、さみしい)
梅。。。意志、要求(〜と思う、〜してほしい)

その結果よい変化が起きたときはその理由を3つ考える

悪い変化が起きたときはその対応を考える
夫婦間での合意形成が重要な役割を果たすので、共同歩調を実現するように努力すること。
オンラインは距離があるため、「仲間意識」「連帯感」を、生むことへの抵抗がなくなり副作用が少ない

家族を援助することの意味

ファシリテーターが中心となり、個人を動かそうとせずキーパーソンの母親が変化を起こすことを理解すること、そして誰からも共感されない母親への敬意、共感をベースにする。
介入は生命危機を救うためのグループであるので、その一点において介入は許される

<Q&Aセッション>

登壇者:
・ファシリテーター:国立精神·神経医療センター 片山宗紀氏
・信田さよ子先生
・NPO法人横浜ダルク 施設長 山田貴志氏・スタッフ ヤスさん・スタッフ・純さん
・(一社)HOPE湘南ダルク代表 栗栖次郎氏

<Q1> 家族との関係と物質使用について家族が原因なのでしょうか?また関わり方で回復するのでしょうか?

・信田先生 … 家族が原因ではない。一方家族にしかできないことがある
・ヤスさん… 家族とのかかわりという点においては、いまの自分の子供との関わりを通すと、自分の幼少期は寂しかったと思う
・栗栖… 家族が要因となることもあるのではないか。自分は20年クリーンの中で、薬物依存症者になったことの原因を探してきた。今は「そのように生まれた」とおもっている。自分の家庭は虐待、暴力があった。
・純さん… 幼少期の影響としては親に捨てられたという思いと、預けられた親戚からの心ない言葉から、居場所がなくなり、不良グループが害場所になっていった。

・山田さん… 実際の日々のダルクへの相談者の中で、夫婦間で相談できているのは1割ほど。家族。。特に父と母のあいだで向き合うことができるように、今後も提案できるよう取り組んでいきたい。

・信田先生… 因果関係は考えないほうがいい。できることを探していく。原因、結果というような言葉を使わない。

<Q2> OD(オーバードース)している子供との付き合い方、子供のともだちもしている。

・信田先生… オーバードースしているあなたが心配、相談しようということを伝える。
・栗栖さん… 友達もやっていることについては、まずはそのことを話せるようにサポートしてもらえるところを提案する。施設では、環境を変える、新しいことをみんなで始めるなどで、やめるきっかけを作っている。

<Q3> 一人で子どもの問題を抱えている母親のしんどさを、夫にどうやってつたえていったらいいのか(スクールカウンセラーからの立場で母親の心配をしている状況)

伝えかたは難しいが、アイメッセージでつたえていく、相手がすぐにはわかってくれないかもしれないが伝えていくことが大切

夫婦間では、あなたの問題、私の問題とわけなくていい。理解するかしないかは別として「聴覚」としては残っていく。

・ヤスさん… 第三者を挟んで伝えていく

<Q4> 特別支援学校教員の立場で、娘さんが母親に対して暴力を振るう。父は関心なく介入してこない。母親にしてあげられる援助はあるか?

・信田先生… 暴力からは逃げること、暴力は受けないこと、それ以上のことは難しい。その母親が教員に頼るという関係性はよいこと

<Q5> 家族内に薬物依存症者(今は回復)がいる。子どもへの伝え方、ケアは?

・栗栖さん… ありのままを伝えている。また自分の特性は、影響はゼロとはいえないので、子どもたちには自覚し、注意して生きるようというところまで話している
・ヤスさん… まだ話していない。年齢的なことを考えまた伝え方も考えていきたい
・山田さん… 子どもに話している。当事者間の結婚で、お互い壊し合うような作業をしてしまうこともある。気づいて成長していきたい
・信田先生… いつ話すか、時期は難しい。一概に言えないが、「病気」を、継続治療していることを伝える。

<Q6> ミーティングにアルコールで酔ってきてしまった人への対応は?

(支援者の方へ)

・栗栖さん… ほどよく迎え入れる、個別対応
・ヤスさん… 仲間の影響を考える、仲間の仲で話せるようなら話してもらうが、無理なら個別対応
・純さん… 個別対応。またはシラフにったら話そうねと言う
・山田さん… 暴言がひどければ帰ってもらうような動きをする
酔っている人を見ると、仲間が崩れてしまう危険があることは忘れずに対応する。

<Q7> 訪問看護ステーションの方より

若年者のオーバードースに対して、代替方法はありますか?また周囲の関わり方が分からない
(援助職は見守る、家族は辛い)
・信田先生… 本人を肯定してあげる。その薬はどういうもの?どんな事がいいの?などを聞いてみる。代替作業は先の話。どうやったら援助者との関係をつくれるかを考える。

・最後に信田先生より……支援者のリスクについて。

どこまで言っていいのか、どこまでやったらいいのか、支援者は常に悩むところではありますが、私たちは保険点数が取れないなかで、この仕事をしています。介入には責任はつきものでありますが、そこを覚悟で介入しています。と、お話されていました。、これは私達家族にとっては、本当に心強いお言葉です。しかし一方で、このことをきちんと保険点数に乗せられる社会であってほしいと思います。

文面ではなかなかお伝えできないほどのたくさんのユーモアも交えて、また質疑応答も活発な、オープンセミナーとなりました。

家族の皆様が笑顔を取り戻せますように