講師/群馬ダルク施設長 福島 ショーン氏・代表 平山 晶一氏
今回は、群馬ダルクから ショーンさんと平山さんにお越しいただいて研修会を行いました。
現在、群馬ダルクは利用者が増加しているとのことです。刑務所の薬物事犯の受刑者は減少傾向のようですが、大麻の問題が表面化しているといいます。海外では大麻は合法の国もありますが、依存症者にとってはやはり危険な薬です。薬の使用を止めてもハッピーになれるわけではなく、現実と向き合うことになるので苦しいのだそうです。
今回はアメリカのプログラムの紹介です。アメリカは薬物の問題が多いので知識も蓄積されています。
「共依存を乗り越えるコツ」と題してのお話でした。
「共依存」とは、簡単に言うと「よかれと思って要らないことをしてしまい依存症が悪化してしまう」ことです。
「依存症は家族の病」と言われることが多いです。家族の中心のひと…この人に気遣いをして生きていかないといけない気持ちになり、その行為の中でお互いがコントロールをしあう関係になっていることと言えます。
① 自分に正直、本人に正直
自分に正直なることとは…やりたくないと思ったことはやらない。自分の気持ちをごまかさない。
依存症本人に「ダメ。イヤ。」と言えない親は多いです。ダメとわかっていても「今回だけ」「うちの子に限って」「そのうちよくなる」など自分に言い訳をしてやってしまう。「世間が…、みんなが…」などと言い、自分の意見として伝えないなども、正直になれていないと考えます。不正直はよくないとわかっていてもやってしまい、コントロール不能になっていきます。その気持ちの後ろには「罪悪感」を抱えています。「ダメ」を伝えていくことで依存症本人が親をだます方法が無くなっていきます。
② ネガティブな考えを避けましょう。
依存症の問題はネガティブなことがたくさん起こります。回復に向かっていても起こります。その中で浸ったり絶望しないでいることが大切です。一人にならないことが大きいです。少し前向きに考えることで可能性が増えることもあります。家族が前向きになっていると依存症本人も見て感じています。逆に家族が弱っていると依存症本人は「丸め込める、コントロールできる」と思い行動します。家族はプラスな自分を作りあげていくことが大切です。
③ セルフケアの練習をしましょう。
家族会に参加することも○です。自分が元気になることが本人にも影響します。問題がなかったころの趣味をすることや、新しいチャレンジをすることもセルフケアに当たります。自分が元気でいると新しいアイディアが浮かんだり、よい決断や解決策に繋がります。
④ 境界線を引く。
何が境界線か?本人がぐちゃぐちゃな時には境界線も引けない状況になります。引き方がわからない場合も多いです。自分で境界線を引こうとするとうまくいかないときも多いので、先行く仲間や施設のスタッフに相談するとよいでしょう。「NO」と周りの人に言う練習も大切です。心の中で「NO」と思っていても言えないのは共依存の考え方です。
⑤ 手放す・ほどく・イネイブリングしない。
「イネイブリング」とは、薬物を使う手助けをしている(結果的にそうなる)ことを指します。本人がしなければいけない経験を奪ってしまいます。借金は家族が返す必要がないものですが、理由を探して返してしまう場合が多いです。手放さないと本人が変わる必要が無くなります。
「ほどく」とは、いろんな問題がこんがらがっている状態を、誰の問題なのかを考えます。専門家の手を借りることもあります。周りに協力を求めることも大切になります。
⑥ 人生をかけて本人に必要以上に優しくしてきました。これからは自分に、仲間に優しくしましょう。
セルフケア・手放す・境界線などやることはやってきました。本人が変わるのは時間がかかります。まずは自分を大切にしてください。
何かをしたい人は、仲間に優しくする、自分の経験を話す、新しい仲間に自分の姿を見せることもできます。
新しい仲間が自分の過去の姿を思い起こさせ、その人たちをサポートすることは自分のためになります。
親としての責任は、子どもたちを自立させることです。必要以上に優しくすると親が死んだあとはどうするのか?自立することを望むのであれば、やるべきことは見えてくるでしょう。
Q&Aでは、施設入寮時の金銭管理の問題などの質問がありました。
群馬ダルクでは階級制を取り入れており、頑張れば階級があがっていきます。社会構造を利用し、回復へのモチベーションを保つようにしています。借金は禁止されていることなどを説明されました。
また、境界線を引くことについての質問もありました。
実行しないことを本人に伝えるのは、効果がないばかりかますます関係が悪くなります。
言ったことは実行する、できないことは言わないことが重要です。
自分がやることは言葉にして伝えることが大切です。喧嘩ではなく、正直に言うこと。
そして家族会などで勉強したことは実践していきましょう。
いつものショーンさんと平山さんの軽妙なかけあいの中、重要なワードがたくさんちりばめられていました。
「学んだことは実践」「自分に優しく」これにつきますね。