令和2年1月25日(土) 家族研修会

講師:神奈川県立精神医療センター 福祉医療相談科
精神保健福祉士 井上 恭子 氏 
薬物依存症者への対応 〜CRAFTを取り入れて〜

  今回は、神奈川県立精神医療センターの福祉医療相談科・精神保健福祉士の井上恭子氏をお招きして研修会を開きました。現在の神奈川県立精神医療センターの未受診電話相談件数は1年間に800件を超えているそうです。家族からの相談が350件ほど、本人からは280件ほどです。
 
今回はCRAFTという認知行動療法に基づいた技法をうまく取り入れて薬物依存症者本人を治療につなげていくことに焦点を当てたお話が中心でした。本人の内なる動機をつけるための技法です。

ポイント1として、目標を設定します。
ポイント2は間違い指摘反射を封印すること。間違いを指摘されると怒りや防衛の気持ちが働き心を閉ざしてしまいます。童話の「北風と太陽」に通じる考え方をすると有効です。
ポイント3はアドバイスしたいときは本人の許可を取ってから話すこと。本人が拒否するなら無理して話さないことです。
ポイント4は共感です。ここでいう共感とは、受け入れることです。同じ気持ちになる必要はありません。
ポイント5は褒めること。具体的に・4すぐに・上から目線でなくなど。これからも続けてほしい行動に対して是認の言葉をかけるとよいそうです。
ポイント6は本人の関心がどこに向いているのか時々観察し、本人の気持ちに添うことです。

 家族のなかのコミュニケーションを変えていくことも大きな変化を呼び起こします。「私」を主語にして話す練習をするといいですね。簡潔に肯定的な言い方をすることが大切です。また、あいまいな言い方をせず、具体的な行動に言及すること・感情に名前を付けて自分を分析できること・感情を整理すること・責任の一部を引き受けることなど留意する話し方がたくさんあります。
暴力がある場合は本人だけの問題で、家族に責任はありません。暴力のサインに気づき、静かに立ち去るか話題を切る、警察を呼ぶなどの対応をするようにしましょうということでした。

家族が陥りやすい行動として、小言・説教・懇願などがあります。どれも本人にとっては自分に対する不平不満と取り、また怒っていてもまだ相手にしてくれていると思います。世話を焼くことも誰かが何とかしてくれると思い、責任を自分で取ろうとしなくなります。世話を焼きたくなった時がチャンスです。やめること・・・これが本人の行動に変化をもたらす場合があります。実行しない脅しもやめること。効果がないばかりか、どんどん本人の要求が大きくなります。
依存症に向き合うのは家族も疲弊します。どうにもならない状況を変えようとすればするほど泥沼に入ります。対応を学んで自分の生活を取り戻すこと。これがのちに依存症の問題に上手に対応できるようになる鍵です。

依存症は再発しやすい病気です。本人の様子に一喜一憂せずに、家族は勉強し続けることが重要だということでした。

井上先生には個別の質問にも丁寧に答えていただきました。手を出しすぎず、見守るしかないこともあるけれど、少しずつ何かが変化していくように思います。

まさに「平安の祈り」です。