7月13日(土)家族研修会

講師:筑波大学大学院 人間総合科学研究科 ヒューマンケア科学専攻 医学医療系 社会精神保健学 准教授 森田 展彰先生

本日の研修会はいつもお世話になっている 筑波大学大学院 准教授 森田 展彰先生をお招きしました。薬物依存症、DVをはじめとして幅広く研究、業績を重ねてきていらっしゃる権威ある大先生です。物静かで謙虚な語り口は“権威”はみじんも感じさせず、むしろ「メッチャ」「ムッチャ」と若者言葉を交え、チャーミングな一面も見せ、難しく深いテーマ「様々な依存症の家族支援  共通するポイントと多様性への対応」(依存症と他と重複した問題を抱えているケースへの対応)を事例を交えて分かりやすく、講義していただきました。

1、共通する支援のポイント 2、依存症という疾患の種類と特徴  3、回復の時期による課題の違い 4、重複障害で起きる依存症等との影響  5、重複障害がある場合の家族の理解と回復支援を考える 6、多様性を尊重した対応とオープンダイアローグについてと講義がありました。

1、 共通する支援のポイント

・道徳的な観点で対応せずに糖尿病等の慢性疾患という観点で対応していく。

・世話焼きから家族は手を引く、本人が自分がやっていることが上手くいかないとしみじみ自分で気づくことが“変わりたい””止めたい“というきっかけになる。

・もたもたしていたり、危なっかしくても本人なりに試行錯誤してやっていくことを見守る。それに対してイライラしたりがっかりしたこと等を家族会で共有すると良い。

2、依存症という疾患の種類と特徴

 ・上記原則をもとに多岐にわたる依存症の種類や関係性、背景にある生活上の問題、重複障害等等、個々にどう線引きしていくかが大切で且つ難しさもある。

・例えばインターネット、ゲーム依存症の場合は未成年者も多いため“世話焼きから手を引く”と生活の面倒まで手を引いてしまうことは出来ないことやこだわりが強い傾向(自閉症スペクトラム等)があると“気付き”も難しい、など。

3、回復の時期による課題の違い 

・依存症からの回復をしていく時期は家族と本人は離れることが必要となるが、一生離れるということではなく新しく家族との関係を構築していけることもある。家族は「止められた。止められたのでこの状態が続くのは当たり前」とは思わないこと、再び過干渉にならないことがそこには必要となる。

・薬物等止め続けていても、ルールが守れない、昼夜逆転等の生活の乱れ等問題が長く続くときは依存症の回復途上の不安定な問題ということだけではなく、薬物使用により後遺症(精神病障害等)が残った、或いは薬物使用以前からもともとあった(発達障害、躁鬱、統合失調症、トラウマ等)ものかを判断し、重複の問題が認められるときは別の支援にもつなぐことが必要である。

4、重複障害で起きる依存症等との影響

・服薬を守れず、他の障害が悪化することがある。

・依存症の回復支援になじめない。(ダルクのミーティングで座ってること、話すことが難しい、一人の方が良い等)

5、重複障害がある場合の家族の理解と回復支援を考える 

・‘依存症’‘精神健康障害’‘発達、人間関係、生活’の3側面から回復支援を考える。

・複雑な面もあるが、当事者。家族・援助者のコミュニケーションをしっかり取り連携を取れれば、やっていけることがある。

・家族は依存症・精神障害・発達障害などの知識を持つことで、線引きすべき点を見つけることが出来てくる。

・数か所、数名と連携を取る中で、異なる意見、指示があっても情報を整理していくことや柔軟にとらえる余裕も必要である。

・依存症のサイクルに巻き込まれない事と重複障害がある依存症者の生きにくさは急には変えられない、時間を要することを家族は受け入れる。

6、多様性を尊重した対応とオープンダイアローグについて

・依存症へは段階的なアプローチを行う。

・依存症と他の重複が明らかな場合、どちらを優先して回復を目指すかは、個々に考える。

・生活・対人関係の場の確保と長期的な取り組みを考える。

・依存症や重複した問題があっても「ダイアローグ」(対話)が気付きや回復に有効な手段となり得ると最近分かってきた。

・オープンダイアローグとは‘開かれた対話’で当事者、家族、医療関係者、ケースワーカー等チームで対話をすることで、特に大事なことは精神医学的診断等の視点は脇に置き(上下関係)、当事者を尊重し、結論を出すことが目的ではなく、様々な人がいくつもの意見をテーブルに出すことを大切にしていく。

「しゃべりが止まらなくなっちゃいました」と準備してくださった資料で飛ばしたページもありましたが、どの内容も新鮮で且つ特に重複問題で悩んでいる家族に勇気を与えていただく補足説明ばかりでした。家族からの質問も止まらず終了時間が押してしまいました。森田先生、お忙しい中、時間オーバーでも質問に答えていただきありがとうございました。また続きは次回お呼びした際に聞かせてください!と楽しみが増えました。