令和2年1月25日(土) 家族研修会

講師:神奈川県立精神医療センター 福祉医療相談科
精神保健福祉士 井上 恭子 氏 
薬物依存症者への対応 〜CRAFTを取り入れて〜

  今回は、神奈川県立精神医療センターの福祉医療相談科・精神保健福祉士の井上恭子氏をお招きして研修会を開きました。現在の神奈川県立精神医療センターの未受診電話相談件数は1年間に800件を超えているそうです。家族からの相談が350件ほど、本人からは280件ほどです。
 
今回はCRAFTという認知行動療法に基づいた技法をうまく取り入れて薬物依存症者本人を治療につなげていくことに焦点を当てたお話が中心でした。本人の内なる動機をつけるための技法です。

ポイント1として、目標を設定します。
ポイント2は間違い指摘反射を封印すること。間違いを指摘されると怒りや防衛の気持ちが働き心を閉ざしてしまいます。童話の「北風と太陽」に通じる考え方をすると有効です。
ポイント3はアドバイスしたいときは本人の許可を取ってから話すこと。本人が拒否するなら無理して話さないことです。
ポイント4は共感です。ここでいう共感とは、受け入れることです。同じ気持ちになる必要はありません。
ポイント5は褒めること。具体的に・4すぐに・上から目線でなくなど。これからも続けてほしい行動に対して是認の言葉をかけるとよいそうです。
ポイント6は本人の関心がどこに向いているのか時々観察し、本人の気持ちに添うことです。

 家族のなかのコミュニケーションを変えていくことも大きな変化を呼び起こします。「私」を主語にして話す練習をするといいですね。簡潔に肯定的な言い方をすることが大切です。また、あいまいな言い方をせず、具体的な行動に言及すること・感情に名前を付けて自分を分析できること・感情を整理すること・責任の一部を引き受けることなど留意する話し方がたくさんあります。
暴力がある場合は本人だけの問題で、家族に責任はありません。暴力のサインに気づき、静かに立ち去るか話題を切る、警察を呼ぶなどの対応をするようにしましょうということでした。

家族が陥りやすい行動として、小言・説教・懇願などがあります。どれも本人にとっては自分に対する不平不満と取り、また怒っていてもまだ相手にしてくれていると思います。世話を焼くことも誰かが何とかしてくれると思い、責任を自分で取ろうとしなくなります。世話を焼きたくなった時がチャンスです。やめること・・・これが本人の行動に変化をもたらす場合があります。実行しない脅しもやめること。効果がないばかりか、どんどん本人の要求が大きくなります。
依存症に向き合うのは家族も疲弊します。どうにもならない状況を変えようとすればするほど泥沼に入ります。対応を学んで自分の生活を取り戻すこと。これがのちに依存症の問題に上手に対応できるようになる鍵です。

依存症は再発しやすい病気です。本人の様子に一喜一憂せずに、家族は勉強し続けることが重要だということでした。

井上先生には個別の質問にも丁寧に答えていただきました。手を出しすぎず、見守るしかないこともあるけれど、少しずつ何かが変化していくように思います。

まさに「平安の祈り」です。

11月24日(日)家族研修会

 「保護観察における薬物事犯者の処遇について」 横浜保護観察所  統括保護観察官 中野智之氏

 今回は横浜保護観察所の統括保護観察官の仲野氏をお招きして、「保護観察における薬物事犯者の処遇について」というテーマでお話をしていただきました。

 更生保護とは「犯罪をした者及び非行のある少年に対し、社会内において適切な処遇を行うことにより、再び犯罪をすることを防ぎ、またはその非行をなくし、これらの者が善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助けるとともに(中略)犯罪予防の活動の促進等を行い、もって、社会を保護し個人及び公共の福祉を増進することを目的とする。(更生保護法第1条)」を基本としています。犯罪をした人や非行のある少年が健全な社会の一員として更生するように、実社会の中で保護観察官と保護司が協働して指導監督・補導援護を行う制度です。保護司はボランティアで、無給ですが、犯罪や非行をした人たちの立ち直りを地域で支える大きな役割を果たしています。法務大臣から委嘱された保護司は保護観察官に協力して保護観察・生活環境の調整・犯罪棒の活動などを行っています。

 保護観察を通じて犯罪をした人たちに得てほしいのは、

・悩みや課題を話し合うことのできる関係作り

・自分が大切に思われる経験

・問題の解決方法に関する知恵の習得などで、生きづらさが和らぐようになる方法を知っていくことだそうです。

地域に密着した人間味のある処遇を目指しているとのことでした。

薬物事犯は再犯率が高く、保護司もどうしたらよいのか難しいようです。

薬物事犯に特化した保護司が存在するわけではないのです。専門的な保護司を養成する制度はない状態です。

 保護司になるための要件や、地域を超えて保護司活動ができるのかなど会場からの質問にも丁寧に答えていただきました。また、保護観察所で薬物事犯者の依存症の認識については、特に判断はしていないそうです。薬物事犯者には回復プログラムを受けてもらい、継続的に支援していきたいとのことでしたが、プログラム終了後はNAなど自助グループにつながるほか、支援がない状況です。

 刑の一部執行猶予制度ができ、刑罰から治療へと制度は少しずつ変わってきましたが、犯罪者ではなく病者としての医療・福祉の支援がつながっておらず、地域の受け皿がもっと充実させ、生きづらさを軽減する切れ目のないサポートを望みます。

10月26日(土)「秋の市民公開講座」

 映画「まっ白の闇」上映会 トークセッション/内谷正文監督・渡邉厚司先生

市民講座の2回目、薬物依存症と家族をテーマにした映画「まっ白の闇」を上映しました。その映画の監督であり俳優、自らも薬物使用、そして実弟の薬物依存症に向き合ってきたという内谷氏と、前回に引き続きマロニエ医療福祉専門学校医療学部学科長の渡邊先生に来ていただきました。  映画「まっ白の闇」は兄の勧めで薬物と出会い、知らず知らずのうちに薬物依存症になっていった弟と家族のストーリーです。どんどん薬物にのめりこんでいく主人公。周りの人を遠ざけて孤独になっていく様子。どうにもならない感情の爆発、家族との葛藤、犯人捜し、否認、壊れていく当事者と家族関係。薬物依存症に向き合ってきた家族なら、思い当たる場面があったと思います。家族会につながることで何かが変化する過程。本人に対してできることは何もないと認められるまでの葛藤。「無力」を自覚するときの覚悟。いろいろな思いが胸をよぎりました。 「回復」があることを信じられるまでの心の揺れを仲間に助けてもらいながら、ゆっくりと変化していく家族。そして本人にも居場所があり、仲間とともに歩き回復していける。山あり谷ありの回復への道、順風満帆ではないけれど待つしかないと腹をくくって、たくさんの家族が前に進もうとしています。  「薬物依存症」を社会に伝えていくために、映画を観て「何かを感じてもらいたい」という内谷監督の思いを横浜ひまわり家族会として発信する機会となりました。 後半は内谷監督と渡辺先生のトークセッションでした。 内谷監督は、弟さんに対して「クスリに巻き込んでごめん。助けたかった。でも方法も分からずただ薬物の使用を認めさせたいだけだった。」と話されました。「自分が苦しいのが嫌だった。弟よりも自分が大事だった。」「弟と自分は別だと分けて考えることを学んだ。」「家族会のミーティングは自分をさらけ出し、楽になれる場所。話すことで楽になれる。仲間ができる。」など、大切なメッセージを込めて映画を撮ったとも話されていました。 本人の回復と家族の回復は呼応していくもので家族も自分自身と向き合い始めると本人の様子も変わっていきます。 参加された保護司の方は、ご自分がかかわっている薬物事案の方の保護者にも観てほしいとおっしゃっていました。 弟さんは「真面目に生きることがどういうことか学んでこなかった。正直がどんな意味かわからなかった。それでも自分で考えて見つけていった。」といいます。 渡邊先生は、私たち日本の文化は掟にとらわれて、「しんどい、つらい」と言ってはいけない呪いをかけられてきたと表現されました。負の感情が内面化して話す経験が欠落してしまうとも。負の感情をはぐくむ場所があることが生きづらさの軽減につながるのではないでしょうか。 内谷監督は、「戦うより受け入れること。」が大切だとも話されていました。

9月29日(日)秋の市民公開講座

マロニエ医療福祉専門学校医療学部学科長 渡邊厚司先生の 「依存症は回復できる病気です」〜共依存からの家族の回復〜 と題した講演や家族の体験談と薬物依存症の本人体験談を行いました。

 家族の体験談は、楽多さんでした。薬物依存症である息子さんは、4年目のバースデーを迎えられたとのこと。5年前に7回目の入院のため、病院に送っていったときの富士山の光景が忘れられないと話されていました。一番印象的だったのは、息子さんが中学生の時に、当時の校長の花道を汚すなと学校から言われたというエピソードでした。今ならマスコミが食いついて大騒ぎになるような学校対応だと思います。入院先の病院で親の共依存を指導されていたそうですが、狂っていく息子を抱えて将来を絶望していた・家族が病んでいたと話されました。同じような感情は私たち家族会のメンバーも少なからず共有しています。だからこそ共感し、癒されていくのだと思います。社会の偏見を変えていくためにひまわり家族会の世話役を引き受け、これからも頑張っていきたいと力強いお話でした。

 依存症の当事者からは湘南ダルクのスタッフ・カズさんのお話でした。実家は中華料理屋を営んでおり、お父さんがずっと一緒にいる環境で育てられたそうです。お父さんはアルコールに問題があり暴力・暴言におびえて家族の中で問題を起こさないように生活をしていたとのことです。お父さんが事故にあったときにも「死んでしまえばいい」と感じていて、今も自分自身はとても傷ついていると言っておられました。親のようにはなりたくないと思っていたけど、アルコールが薬に変わっただけで同じだった・世代間連鎖を痛感したとのことです。 「自分の考えは間違いだらけだけど、今は一人で抱え込まないようにしている。依存症になり12ステップに出会え、回復していける。依存症になってよかった。」と締めくくっていました。

渡邊先生の研修会は、いつもの優しい語り口で始まりました。まず、共依存とはどんな状態のことかというと、自分の感情がわからない・他人のことで頭がいっぱいになる・他人の行動に反応する・他人のことに没頭して自分の優先事項を保留する・他人、職務、または状況についての責任を取る・否認システムに巻き込まれているという特徴があります。  家族間では見えない役割を無意識に背負っています。父であることや母であることは変えられないけれど、お世話をする人・怒る人、問題を起こす人・逃げる人などいつもの役割に気づき、それを回避すること、止めてみることから家族内に変化が表れ始めます。他者を変えるのではなく、自分の役割を降りてみる・一歩外から家族を俯瞰してみることが変化の第一歩になっていくことを伝えてくださいました。

 家族の中で問題が起こると、家族間の距離が一気に縮まり混乱してしまいます。境界線を越えないという意識が家族の問題を解決していくことに役立ちます。間にテーブルを置いてそれを超えない・話はテーブルに置くイメージでそれを受け取るか受け取らないかは本人の問題。支配やコントロールを避けて新しい関係を作っていくことが家族の回復につながっていきます。  渡邊先生が教えてくださるいろいろな感情の整理のツールにどれだけ救われてきたことかわかりません。新しい仲間にも伝えていきたいと思います。

8月25日(日)第3回薬物依存症者と家族フォーラム」

テーマ:薬物依存症は病気です。

〜家族が笑顔を取り戻すために〜

「回復は仲間の中から始まる」

基調講演:国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所

薬物依存研究部 心理社会研究室長 嶋根 卓也 先生

 今回は横浜ひまわり家族会の第3回「薬物依存症者と家族フォーラム」でした。 家族会からはきっこさんの体験談。息子さんにはつつみ隠さず話せる場が有意義であったこと、家族だけでは支えきれないことや、親が元気で暮らしていることが本人の回復につながることなどを胸を詰まらせながら語ってくださいました。横浜ダルクからはスタッフのブルースさんが薬物依存ではないけれど、これまでの生きづらさを話してくださいました。緊張感のある家庭に育ち、人と親しくなることがわからない・家庭の中でマスコット役やいない子役を背負い生きてきたことなど生きづらさの根本を丁寧に話されていました。薬物ではない何かに無力を認めないと生きるのがとても苦しかったということです。私たち家族も何か抱えて生きていると思います。自分を見つめるよい機会になったように思います。当事者の体験談は横浜ダルクのまっちゃんのお話でした。親の愛情を利用してお金を引き出し、覚せい剤につぎ込んでいたこと、現実を見ないでクスリだけあればいいと思って生きてきたことなど、正直な気持ちが聞けました。家族が「あなたはクズではない」と言ってくれたことがうれしかったことや、薬物依存は病気であるが、やりたい放題やってきたことを病気で片づけてよいのか迷ったことなど心の変遷がよくわかる体験談でした。

 基調講演は国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部心理社会研究室長の嶋根卓也先生でした。

「当事者が主体となった回復支援活動のエビデンス:ダルク追っかけ調査」がテーマでした。ダルクと聞くとヤク中のたまり場や、犯罪集団のように悪い印象が先立ち、世間一般に受け入れがたい印象を持たれていることが多いようです。研究の目的は、ダルク利用者の断薬率や再使用率などの予後に関する基礎情報を集め、地域連携のためにダルクなど民間支援団体の情報を関係機関に周知し共有していくこと・ダルクの利用者の予後を明らかにすることだそうです。 「ダルクの人ってみんな覚せい剤なんでしょ?」「みんなゼンカモンでしょ」「どうせまた使っちゃうでしょ」など世間は負のイメージで固まっていると感じます。調査の中で、覚せい剤以外の依存症のほうが多いことや、薬物事犯として逮捕されている人は半数以下であることやつながっている人の再使用率が圧倒的少ないことが数字で表されています。今後のダルクの活動を広げるために重要な調査であると実感しました。そして断薬を維持するためにはメンバーとの良好な関係・回復モデルの存在・自助グループへの定期的な参加が大切であることを伝えてくださいました。私たち家族も回復の道が数字で表されることにより、すこしでも見通しが立つ材料になりました。

 Q&Aセッションでは、ダルクの施設長や他の回復施設の責任者の方をお招きして家族会からの質問に答えていただきました。 出所や退院の時にいったん自宅に戻ることは回復の妨げになるのか、離婚はどう影響するのか、家族が家族会に参加していることを当事者はどう感じているのか、ダルク後のサポートはどうなっているのかなどそれぞれの考えを話していただきました。印象的だったのはダルクを出てもいつでも帰ってこられる港でありたいということでした。  

7月13日(土)家族研修会

講師:筑波大学大学院 人間総合科学研究科 ヒューマンケア科学専攻 医学医療系 社会精神保健学 准教授 森田 展彰先生

本日の研修会はいつもお世話になっている 筑波大学大学院 准教授 森田 展彰先生をお招きしました。薬物依存症、DVをはじめとして幅広く研究、業績を重ねてきていらっしゃる権威ある大先生です。物静かで謙虚な語り口は“権威”はみじんも感じさせず、むしろ「メッチャ」「ムッチャ」と若者言葉を交え、チャーミングな一面も見せ、難しく深いテーマ「様々な依存症の家族支援  共通するポイントと多様性への対応」(依存症と他と重複した問題を抱えているケースへの対応)を事例を交えて分かりやすく、講義していただきました。

1、共通する支援のポイント 2、依存症という疾患の種類と特徴  3、回復の時期による課題の違い 4、重複障害で起きる依存症等との影響  5、重複障害がある場合の家族の理解と回復支援を考える 6、多様性を尊重した対応とオープンダイアローグについてと講義がありました。

1、 共通する支援のポイント

・道徳的な観点で対応せずに糖尿病等の慢性疾患という観点で対応していく。

・世話焼きから家族は手を引く、本人が自分がやっていることが上手くいかないとしみじみ自分で気づくことが“変わりたい””止めたい“というきっかけになる。

・もたもたしていたり、危なっかしくても本人なりに試行錯誤してやっていくことを見守る。それに対してイライラしたりがっかりしたこと等を家族会で共有すると良い。

2、依存症という疾患の種類と特徴

 ・上記原則をもとに多岐にわたる依存症の種類や関係性、背景にある生活上の問題、重複障害等等、個々にどう線引きしていくかが大切で且つ難しさもある。

・例えばインターネット、ゲーム依存症の場合は未成年者も多いため“世話焼きから手を引く”と生活の面倒まで手を引いてしまうことは出来ないことやこだわりが強い傾向(自閉症スペクトラム等)があると“気付き”も難しい、など。

3、回復の時期による課題の違い 

・依存症からの回復をしていく時期は家族と本人は離れることが必要となるが、一生離れるということではなく新しく家族との関係を構築していけることもある。家族は「止められた。止められたのでこの状態が続くのは当たり前」とは思わないこと、再び過干渉にならないことがそこには必要となる。

・薬物等止め続けていても、ルールが守れない、昼夜逆転等の生活の乱れ等問題が長く続くときは依存症の回復途上の不安定な問題ということだけではなく、薬物使用により後遺症(精神病障害等)が残った、或いは薬物使用以前からもともとあった(発達障害、躁鬱、統合失調症、トラウマ等)ものかを判断し、重複の問題が認められるときは別の支援にもつなぐことが必要である。

4、重複障害で起きる依存症等との影響

・服薬を守れず、他の障害が悪化することがある。

・依存症の回復支援になじめない。(ダルクのミーティングで座ってること、話すことが難しい、一人の方が良い等)

5、重複障害がある場合の家族の理解と回復支援を考える 

・‘依存症’‘精神健康障害’‘発達、人間関係、生活’の3側面から回復支援を考える。

・複雑な面もあるが、当事者。家族・援助者のコミュニケーションをしっかり取り連携を取れれば、やっていけることがある。

・家族は依存症・精神障害・発達障害などの知識を持つことで、線引きすべき点を見つけることが出来てくる。

・数か所、数名と連携を取る中で、異なる意見、指示があっても情報を整理していくことや柔軟にとらえる余裕も必要である。

・依存症のサイクルに巻き込まれない事と重複障害がある依存症者の生きにくさは急には変えられない、時間を要することを家族は受け入れる。

6、多様性を尊重した対応とオープンダイアローグについて

・依存症へは段階的なアプローチを行う。

・依存症と他の重複が明らかな場合、どちらを優先して回復を目指すかは、個々に考える。

・生活・対人関係の場の確保と長期的な取り組みを考える。

・依存症や重複した問題があっても「ダイアローグ」(対話)が気付きや回復に有効な手段となり得ると最近分かってきた。

・オープンダイアローグとは‘開かれた対話’で当事者、家族、医療関係者、ケースワーカー等チームで対話をすることで、特に大事なことは精神医学的診断等の視点は脇に置き(上下関係)、当事者を尊重し、結論を出すことが目的ではなく、様々な人がいくつもの意見をテーブルに出すことを大切にしていく。

「しゃべりが止まらなくなっちゃいました」と準備してくださった資料で飛ばしたページもありましたが、どの内容も新鮮で且つ特に重複問題で悩んでいる家族に勇気を与えていただく補足説明ばかりでした。家族からの質問も止まらず終了時間が押してしまいました。森田先生、お忙しい中、時間オーバーでも質問に答えていただきありがとうございました。また続きは次回お呼びした際に聞かせてください!と楽しみが増えました。

6月22日(土)家族研修会

講師:群馬ダルク 代表 平山晶一氏、施設長 福島ショーン氏

今回の研修会は横浜ひまわり家族会 初の講師です!群馬ダルクの代表 平山晶一氏、施設長 福島ショーン氏をお招きしました。

ショーンさん(下のお名前でお呼びさせていただきます)は日本全国津々浦々?家族会やセミナーなどに行ったが、家族会の歴史が長い横浜ひまわり家族会だけは声を掛かけてくれず、今回やっと念願が叶った、と最初の自己紹介で私たちの笑いを取ったところからのスタートで、期待通り最後まで私たちを巻き込みながら母親やパートナーとの体験談を交えながら軽快なテンポで、本当にあっと言う間でした。

まず、平山さん、ショーンさんの体験談でした。それぞれ依存症に移行していくプロセスと回復のストーリーがありましたが、平山さんの「周りの友人も普通に大麻を吸っていたけれど、年齢が上がるにつれ普通にやめていったが、自分だけはやめることが出来なかった」は、横浜ひまわり家族会に相談にみえる家族の口から質問されることがあります。本人も“どうしてなんだろう”と思っていたのですよね。つい「周りはやめたのにどうしてあなただけやめられないの?」と責めるような言い方になって疑問をぶつけることが、本人を追い込んでいたことに気付かせられました。生きづらさを抱えていた中で、依存する薬物に出会ってしまい、一時生きやすくなったと勘違い?して使用しているうちに、今度はやられなくなってしまう・・という点はショーンさんも同様なことを話してくださいました。また回復していくきっかけは「家族が変わったこと」という話が私たち家族にとって、こころに大きく響きました。

その後、スライドで“本人のためにできること”を一つひとつ解説し、また一つひとつそれぞれ体験談を交えて語っていただきました。

・本人が大きな病気になったときのように接すること(大きな病気だと分かるとその病気のことを勉強したり、病気に良くないことは遠ざけたりする)

・常に本人と自分の依存症に関する病気と回復の勉強をすること

・本人に昔話や説教をしない、他者と比較した話をしない

・安全な環境が必要で、薬物等依存になるきっかけを与えない(本人の前でお酒を飲む等NG)

・本人が家にいるなら、ミーティングに行く時間を与える等、自分の時間は認めてあげる(ルールは必要)

・過去を懐かしむのではなく、これからの人生を作っていくこと

・自分の遊ぶ時間を作る

・本人が負うべき責任を肩代わりしない(イネーブリングしない)

・マイナスの経験をさせることが本人の変わるチャンスになる

・たとえクリーンが続いていても、互いに納得した境界線を作り、それは守る

・経済的なサポートはしない(どうしても必要な時でもお金は渡さない)

・病気の恐ろしさを忘れないこと

などの話はすべて大変に分かりやすく納得できたものばかりでした。平山さんはにこやかに落ち着いた語り口調、ショーンさんからは手ぶり身振りで軽快な語り口調と、コンビネーションも良く、楽しかったです。

それと。ときどき質問も飛んでくるので集中して聞かないと慌ててしまうことにもなり、程よくハラハラする時間でもありました。ちなみにわたしは「依存症は病気だと言われだしているものの、“意思が弱いだけでしょう”などと、どうしても世間に認知されないのはなぜでしょうか」と質問され、ドギマギしてしまいました。「血液検査に出ないから」とある家族の方が発表してくださり、ピンポンと正解でした。レントゲンでも、心電図でも出ないので、病気という認識が持てないというのは、本人も同様なのだろうな、と改めて思いました。

また「昔はかわいかったのよ」など、何気ない親の言葉が傷つくと聞き、世間話のようにしてきたかもしれないと、どっきりしました。

家族が陥りがちなこと、家族としては気付かなかったことを話していただいたので、すべてが家族会の皆さんにとって関心が大変高い内容での研修会でした。家族からの質問も止まらず時間が足りなかったほどでした。終了後私たち世話役に寄せられる家族の皆さんの声は「とっても良かった!!」という声ばかりでした。平山さん、ショーンさん、ありがとうございました。また横浜ひまわり家族会に是非来ていただきたいと思っています!

5月25日(土)家族研修会

講師 日本がルク代表 近藤恒夫氏

アパリ弁護士 高橋洋平氏

今回の研修会は「ダルク」の創始者である近藤恒夫氏をお招きしお話を伺いました。近藤氏は1985年に薬物を断ってから34年に渡りクリーンであられるとのことです。

「ダルク」は組織化することなく必要なところで出来ていった、まるでタンポポの綿毛が飛んで落ちたところに芽が出るように増えていっている・・・そんな表現をされていました。

「ダルク」は増えていってもその活動をサポートする人を増やしていかないといけない。そのためには社会的に信用のある人を巻き込んで支える体制を作って行きたいとのことでした。

昔の薬物依存症者は暴走族など反社会的な人たちが多く、亡くなって行く人も多かったそうです。現在はおとなしいひきこもりタイプが多いとのことです。

「ダルク」は人と群れる練習の場と捉えて、友達が作れる場として機能しています。「ダルク」の人たちは学校にあまり行けなかった人や、辞めてしまった人も多く、学び直しの場をこれから作っていきたいと考えているそうです。「ダルク教育支援財団」を作ってスマホなどで新しい学びの場を提供していき、薬物で崩れた人生を取り戻せるようにしたいと熱く語っておられました。

今回はアパリの弁護士・高橋洋平氏も来てくださいました。弁護士というと硬いイメージがあり、前に立って引っ張って行くという姿勢でいるとうまくいかないことが多かったそうです。少し斜め前をゆっくり歩くイメージでいるように心がけているそうです。治療に繋げていく過程では、本人が何を求めているのかを知ることが大切で、粘り強く関わっていけるように心がけていらっしゃるとのこと。同じ目線で話せるよう努力をされているそうです。

借金問題は多くの人が抱えています。普通は借りたら返すという感覚が身についていて当然なのですが、それができなくなって破たんしていきます。家族も本人もメリットやデメリットをよく知ってから解決に当たれるとよいと思います。自己破産などデメリットも大いにあることを知っておくことも大事です。

「刑の一部執行猶予」が実施されているが再犯率も大きく変わらないとのことです。刑法ではない方法で薬物依存症の問題を考えていかないといけないと話されていました。法務省管轄の自立準備ホームも3~6か月は利用できるがそのあとをどうするのか、全く連携が取れていないといいます。何度も刑務所の入ると社会復帰はどんどん難しくなります。病気という側面をいかに考慮して裁判をしているのか、もっと訴えていかなければいけないと思っているということでした。

研修会の後には、個別相談にも応じていただきました。

4月27日(土) 家族研修会

昨年度からお呼びしたいと熱望していた、一般社団法人相模原ダルクの代表理事 田中秀泰さんが横浜ひまわり家族会の研修会に来ていただきました!

依存症者の回復を考え相模原ダルクを創設している立場ですが、精神保健センターや病院を通して回復していくことを目指している、ダルクに来るのは最終的な段階というお話から始まり、田中さんの熱い思い、考えを反映した相模原ダルクの施設の概要をスライドも含めて語っていただきました。

施設での取り組みではステージ制を取り、目標を持ち、メリハリをつけ入寮者にモチベーションを高められるようにしていること、社会復帰のプログラムを取り入れ卒業式、修了式で次のステップに送り出すようにしている、ということを伺い、画期的だと感心しました。

また

・その人に合うダルク、合わないダルクがあるだろうから一つのダルクと固定概念を持たなくてもよい。

・今まではダルクのやり方に家族が合わせていたかもしれないが、これからはダルクが家族に合わせていくことも考えないとならない。

・家族会ではハイヤーパワーにお任せする、というより具体的に考えていくことが良い。

・辛くないダルクを作っていきたい。今の時代に合わせておしゃれで清潔な場所に変えることで「行ってみても良いかな」と思って頂けるようにダルクも変わらないと、と思う。

・依存症は再発する病気であり、一つの依存が解決できても別の依存に変わっていくことがある、依存症から離れられたとしてもイライラする、ぼーっとする等長期離脱症状(ポーズ)が長い人で数年続くことがある、頭のてっぺんからつま先まで文化をすべて変えていくことが大事である、ということ。

等すべてが感心するお話でした。

個人的に心に響いたのは薬物の乱用期での介入を目指しているという精神保健センターや病院との取り組みでした。「乱用期に介入して依存状態にならないようにする」の言葉を聴き、10年数年前に田中氏がこの取り組みが進められていたら・・と少し地団駄を踏む思いがあります。次男の薬物を始めたと分かったとき、すぐに数か所問い合わせをして、依存症にならないようにしたい、何とか介入できないかと訴えましたが、その当時は「今は出来ない。病院やミーティング等に行くことはむしろより薬物に興味を持つかもしれない」等言われ、一人で乱用をやめさせようと躍起になりました。結局次男は順調に?依存症に移行していっただけでなく、精神障害も併発し、重複障害でより一層事態が難しくなってしまいました。乱用段階での介入を行う取り組みが全国に広がっていくことを望みます。